複雑・ファジー小説
- Re: 神竜は白銀と浪に踊る。【永久的にキャラ募集(笑)】 ( No.21 )
- 日時: 2015/07/22 18:36
- 名前: 睡魔 (ID: EEo9oavq)
順調“だった"。
順調だった筈なのに、どうしてこうなった。
巣穴は、俺の土色の鱗で囲んで積み重ねていくうちに、とぐろを巻いた蛇のような形に、あるいはソフトクリームのような形に化していた。
悪く言えば、肛門から出る排泄物のような形になっていた。
いや、もっと端的に言おう。
“俺の巣は、うんこのオブジェクトになっていた。"
「う、うむ……これなら巣には誰も近付かないだろう。結界は要らなかったかもな……ははは」
ミレーヌの無理がありすぎるフォローに、余計心が痛んだ。
俺はこんなにもセンスが無かっただろうか。
俺の作った巣の外装は、どう見方を変えてもうんこにしか見えなかった。
前世での学校の技術の授業で作った作品は、秀作とまではいかなくても、少なくとも駄作ではなかった。
ドラゴンになったせいで、人間としての美的センスを忘れてしまったとでも言うのか。
自分の感性の無さに涙するのは今日が初めてかもしれない。
「そ、そうだな! これで絶対、誰かがここに近付くことも無いな!」
そうさ。
ミレーヌの言う事にも一理ある。
誰もここに近付くことがないよう、俺はわざとうんこオブジェを作ったのだ。
そういうことだ。そういうことにしよう。
よし、折れかけた心も立ち直ったぞ!
「フ、フハハハハハ!! ナンダアレハ!!」
突然、後ろで盛大な声が聞こえた。
振り返ると、後ろでゴーレムがうんこを指差し、腹を抱えて笑っているではないか。
俺の心は完全に折れた。
*
ゴーレムは自分の名はガーゴだと名乗り、巣の外装の作り直しを手伝ってくれた。
どうやらゴーレムたちは俺のことを相当警戒していたらしく、ガーゴはゴーレムの長の命令で、俺とミレーヌが巣を作っている様子をずっと見張っていたらしい。
ドラゴンが何か怪しい動きをしていたらすぐに報告するように、と。
まぁ、突然俺がゴーレムたちに話しかけた訳だし、警戒するのも無理はない。
ずっと見張っていたガーゴは、どうやら俺が悪い奴では無いと思ったらしく、巣の外装の作り直しを手伝ってやろうと思ったそうだ。
「お前、スゲーな」
ガーゴは、ゴーレムの長と比べると大きさは一回り小さかったが、俺の巨大な鱗を軽々と持ちあげ、あちこち組み替えて見せた。
「モノヅクリハ、トクイデナ」
ガーゴはさらに鱗を削って表面を滑らかにしたり、彫刻を施したりして、一時間もしないうちに巣を囲む立派な砦が完成した。
つい先程までうんこだったとは思えない仕上がりだ。
「ありがとうな」
「ミテイラレナクテ、テナオシヲ、シタマデダ」
こうして、俺の家は完成した。
サンドワームが元々素晴らしい巣を作っていなければ、ミレーヌやガーゴが手伝ってくれなければ、こんな出来のいい家は俺一人では作れなかっただろう。
俺は翼が無いとはいえ、確かに、最強のドラゴンである。
人間だろうとゴーレムだろうと、やろうと思えば余裕で吹き飛ばせるだろう。
だが、人間だから出来ることがある。ゴーレムだから出来ることがある。
俺は、ミレーヌのように何度も挑戦する根性や、心の強さは持ち合わせていない。
俺は、ガーゴのように物を作って人を満足させることは出来ない。
はたして、本当に最強なのは誰なのだろうか?
ふと、そう思った。