複雑・ファジー小説

Re: ホワイトリアの騒音旋律 ( No.4 )
日時: 2015/07/12 11:03
名前: リキュール (ID: 7D2iT0.1)

prelude =前奏曲=



3


空は蒼く、そして高い。
はけでさっとはいたような雲が広がり、まさに秋晴れと言うにふさわしい空だった。
村を囲む木々はそんな天をつきささんとばかりに真っ直ぐそびえ、しかし見る者に圧迫感を与えない素直さを感じさせる。

いつも。いつもの村の光景。

だが————確かに、そこに『異常』はあった。


炎。

紅く紅く紅く、熱気を放つ・・・。

ホワイトリアは村の外れで尻込みしながら、混乱で真っ白になった頭を必死に動かそうとしていた。

———これは・・・これはなんだ?
———草取りに行ったら、村長の家のほうから・・・・。
———村の人達はどこ?
———母さん、父さん。
———ねーちゃん。
———そうだ、ねーちゃんは————。

はっと顔をあげるが、煙をすいこみ、またすぐに顔をふせる。
熱気と黒煙が肺を焼き、激しくむせた。

今ホワイトリアがいるのは、水くみの時に通ってきた門の前だ。
丸太と丸太を組み合わせただけの簡単な門で、もちろん防火対策などしているはずもなく、ところどころに飛び火して、今は炎の糧と化している。

ホワイトリアは地面をなめる炎を眺めた。


———紅い。
———・・・熱い。
———・・・・・・。
———・・・————。



ちりちり、と頬が焼ける痛みで、ホワイトリアは我にかえった。
門が焼け落ち、自分が炎に囲まれている。
痛みで、意識がもうろうとしだしているのに気がつき、いよいよ本格的に焦りはじめる。
意思と反し、がくんと首が折れる。
体がだるい。

ふと、地面が傾いていると感じた。
が、自分が倒れているのだ、と思い直す。

顔が地面に突っ込み、その痛みさえ感じなくなっていることに失望しながら、ホワイトリアは最後の意識を手放した———。