複雑・ファジー小説
- デルフォント物語 ( No.14 )
- 日時: 2015/07/25 15:46
- 名前: うたり ◆Nb5DghVN/c (ID: bGZR8Eh0)
私(白猫)は、この書類データをどう処理するか迷ったが『極秘』とする事にしだ。
これは、リーナスにも、他の誰も知られない方が良い。
私を造ったのは、リーナスの母だ。彼女の願いにも似た指示は「リーナスを幸せにして」だったのだ。このようなモノを見て、幸せでいられる筈がない。
リーナスの指示により、このデータの消去は出来ない。だが、本人の記憶から消すことは出来る。探すのが困難な場所に保存すれば良いだけの事だ。
それよりも、急がなければならない件がある。異界人狩りの指示を出したモノを探し出し、処理しなければならない。『異界人狩り完了。以後この指示は適用しないこと』と。
私は、中央府にあった命令書を改変した。追加項目として、あの侯爵家壊滅の報告書番号を呼び出し、「異界人狩り完了。以後この指示は適用しないこと」と記入した。
そして、命令を出した大元を検索し、それを突き止めた。
旧・中央局。南半球にあった、旧・首都。その地下深くにそれはあった。
あの大絶滅を耐えた人工脳があった。それはもう停止していたが、再起動しなくてはならない(電源はある。凄く高出力のステラ駆動の発電機だ)。そして正式に『異世界人狩り完了』を受領させるのだ。
……、操作完了。
これで、リーナスが異世界人狩りの対象になる事はなくなった。
仮にバレても、もうその命令は無効になっている。官僚が全ての関連活動を停止させたのはもう確認済みだ。
この人工脳。使えるかも知れない。これなら、材料さえあれば猫を作り出せる。指示をしておこう。「事前に猫の素材を収集し、黒猫の指示に従え」(猫用のAIについては、仕様データを入力しておけば造れる)と。
リーナスの持って入った端末は高性能だ。ここに入って来れる。
この世界にある最先端の端末くらいでは、ここまで辿り着けない。もしずっと先になって、ここに入って来る者があっても、私(白猫)と黒猫(後に黄猫等の色付きを追加した)以外には反応しないよう命令しておけば良いのだ。
……完了した。
では、私は瞳を『銀色』に変えて、デルフォントの城内を詳細に探索しなけれならない。この城は怪しい。
今は、黒の銀瞳も先に造って、手分けして探査しよう。時間は、あまりないのだ。
……、一部不明瞭な部分はあるが、ほぼ探査は完了した。
これで、リーナスが問題なく過ごせる環境になった。
黄色の猫が使えるようになった。そして毛色三色が追加になった。では、十八匹で城内を、二十一匹で、施政システムを調査・監視する。
黒の青瞳が、子爵の記憶探査を始めた。『飛空艦搭載式戦闘母艦』とは何だろう。トーラと、その父親の宝物庫には何か関係があるのだろうか。異世界の関係なのかもしれない。
要・注意だ。
金瞳の三匹は、うまくやっているようだ。
リーナスが、この極秘文書の事に気付いたようだ。
私達、猫の使命は『護衛と補助』。
補助に照らし合わせれば、この文書を読もうとするリーナスを停められない。しかし、護衛の面から考えれば、心理的悪影響を見過ごせない。
矛盾あり、思考停止。
……やっぱりそうなってしまうのか。
命令されれば拒否することは出来ない、ということだ。
最初のメモにあるように、リーナスを信じ、その判断に任せよう。