複雑・ファジー小説

佐倉 茜・狂想曲 ( No.1 )
日時: 2015/07/26 15:39
名前: うたり ◆Nb5DghVN/c (ID: bGZR8Eh0)

 佐倉茜は女王である。
 彼女は、天才で、暴君で、自分の気に入らないことをする者には一切容赦しない。誰にも彼女の意思を拘束することは出来なかったし、行動を停められない。
 生国が嫌いになって、幾つかの島を購入し独立国とした。ちゃんと国連にも登録してあるから、名目だけのモノではなく間違いなく独立国だ。
 国名は「茜王国」。
 彼女が女王で、国民は皆臣下だ。この国の人口は千五百人。税金は、なし。
 政務と経理は執事隊が取り仕切り、高齢の執事長が指揮を執っている。メイド隊も、本来はその指揮下にあるのだが、実状は女王の親衛隊となっている。
 そして、この国は、全て女王の意思によって運営されている。
 税金がなくて、どうして運営できるかって? 彼女の収入によってである。
 毎日、黄金(ナインナイン)二百キログラム分に相当するモノが複数のスイス銀行に入金されている。これは時価ではない。契約時にそのように決めたことであって、誰もが了承した事柄である。遅滞は一切認められていない。
 彼女の収入の殆どは、発明品の特許料だ。銀行に入っている財産の九割九分までがそうで、残りが両親の遺産である。
 しかし彼女の資産は、それだけではない。電子マネー、この資産が凄まじい。
 それについて、少し語ってみよう。
 約二年前の話である。