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複雑・ファジー小説
- Re: 月の女神と夜想曲 ( No.5 )
- 日時: 2015/08/14 17:48
- 名前: 茉莉 (ID: rE1CEdls)
「向日葵様!?聞いておりましたか?」
広い屋敷の中で夜空を眺めてぼうっとしていた私には、メイドの言葉など少しも耳に入っていませんでした。
「あ...ごめんなさい。余りに夜空が美しかったから...」
そして、毎日の様に言い聞かされる言葉が私にかけられます。
「もう...舞原家の娘としての自覚をお持ちですか!?向日葵様がしっかりして下さらないとお父上が悲しみますよ?」
この広い屋敷の中に閉じ込められる生活は、私にとってはとても憂鬱なことなのですが、それも仕様のないことだろうと諦めます。
私のお父上はこの国の経済に影響を与えるほどの大財閥の社長なのですから。
「分かってるわ。けれど今日はとても夜空が綺麗よ?少しくらい良いじゃないの。私だってくつろぎたいわ」
「仕方ないですね...今日はゆっくりなさってください。では明日...」
「ええ。お休みなさい」
ふうっ...とため息をついた私は、部屋の大窓を開けに向かいました。
カーテンが開かれ、涼しい空気が流れ込みます。
「綺麗...私も外に行ってみたいわ...。満天の星の中を歩き廻れたら最高ですわね」
そう呟いた瞬間、目の前が突然明るくなりました。
...流れ星!?初めて見たけれどこんなに光が強いの...?
「きゃあぁ!?」
体が宙に浮き上がります。
星々の光に包まれて天に昇って行きました。
ーーー満月姫
薄れていく意識の中で私の耳に最後に残ったのは、そう呼び掛ける声でした。
...何処かで聞いたこと、有ったかしら?
何故か頬を伝っていく涙を感じながら、私は意識を失いました。
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