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複雑・ファジー小説
- Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.1 )
- 日時: 2015/08/05 14:27
- 名前: 美華 (ID: /TdWvv73)
「ねぇ…私の事、本当に愛してる?」
「当たり前だろ、そんなの」
「本当に?」
「うん」
隼人はそう言って、私に口づけをした。
本当の本当に、私の事を愛しているのだろうか。
私は、いつも不安になる。不安になるから、こんなことを毎回してしまっている。
隼人とは、付き合ってもう四年だ。
私が高校二年生の時、同じクラスだった隼人に告られた。
私は隼人のことは何も思っていなかったし、かと言って別に好きな人もいなかったから、私はあっさりOKした。
それからだ。誰かにそばにいて貰わないと、生きていけなくなったのは。
誰かがそばにいて、私の事を庇ってくれる。甘えたりする相手がいる。
時には喧嘩もしたけど、そんなことどうでも良かった。
私は酔っているんだと思う。
誰かが私の事を愛してくれることに。
私は自惚れていたんだと思う。
でも、今はこうして酔っていたいと思った。
たとえ私が、隼人のことを愛していなくとも。
今はこうして抱かれていたい。そう思った。
- Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.2 )
- 日時: 2015/08/10 21:32
- 名前: 美華 (ID: VmDcmza3)
「ひよりー、起きて」
隼人の声が聞こえて、私は目を覚ました。
シーツの匂いが鼻にこびり付くように残っている。
腰回りは何となくだるいし、重い。
私は重い裸体を起こした。
隼人はもう着替えてしまっていて、裸なのは私だけだ。
「ずるい。隼人だけ先に着替えて」
私がムッとして言うと、隼人はにやにやしながら私に近づいて来た。
「何よ」
「これで許してくれる?」
私の唇に隼人の柔らかい唇が触れた。
隼人はこうやっていつも誤魔化したりする。
私はこんな隼人が気に入らないけど、唇からつたわってくる隼人の体温はどこか心地よかった。
ああ、私は生きてるんだな、と思う。
「またするの?」
隼人の舌が私の口の中に強引に入ってきて、私は思わずこう言った。
「もうしないよ?」
そんな事を言いながらも、隼人の手は私の胸を触っている。
「もう朝だからやめようよ」
「だからしないって。触れるうちに触って、キスできる時にしてるだけ」
そう言って隼人は私から手を離し、昨日来ていた服を私に投げつけた。
私はなんだか気が滅入りながら、昨日来ていたワンピースを手に取った。
これは、隼人が初めてくれた私への誕生日プレゼントだ。
花柄に、胸元に刺繍のしてある、私は絶対選ばない様なふりふりの可愛らしい服だった。
私の好みじゃないけど、隼人がくれたから着ている。
昨日もデートのはずだったのに、だから着てきたのに、結局こんな様だ。
昨日だって、本当は…。
私はカバンの中を見て溜息をついた。
カバンの中には、可愛く包装された隼人の誕生日プレゼントが入っている。
隼人は酔っていたせいか、プレゼントより私を選んだみたいだけど。
結局渡せなかったな、今年も。
私はカバンのチャックを閉めた。
- Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.3 )
- 日時: 2015/08/16 21:47
- 名前: 美華 (ID: 57S6xAsa)
「ひより…。実は昨日、大事な話をしたくてデートしたんだ」
ホテルを出て、何処かで朝食をとろうと、レストランに入って席に着いた時、隼人は真剣な顔つきで話し出した。
大事な話?そんな、大事な話があるっていうのに、お酒飲んで私としたっていうの?
でも、隼人の目つきは鋭くて、私を見つめるその眼差しは、本物だ。
大事な話……もう、20歳だから、結婚かな。
いやいや、まだ早いよ。だって私も隼人もまだ大学二年生だし。
そんな妄想をしながら隼人をじっと見ていると、隼人は照れ臭そうに顔を手で覆った。
「もう…。そんな目で見られたら、何も言えないじゃんかよ、バカ」
「ごめんって…。さぁ、どうぞ」
隼人はなかなか言い出せないようだった。
何度も顔を手で擦っては、はぁぁぁと長いため息をつく。
「俺達、…わ、わ…。あぁ、やっぱダメだ。ごめん」
「いいよ、いいよ。ゆっくり言って」
なかなか言い出せない隼人が可愛くて、髪をわしゃわしゃと撫でてみたいという気持ちになった。
隼人の、こういう可愛いところが、私は好きだ。
たまらなく愛おしいと思う。
「…………俺達、もう、別れよう」
- Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.4 )
- 日時: 2015/08/18 14:01
- 名前: 美華 (ID: g3crbgkk)
「…え?」
本当は、ちゃんと聞こえていた。
聞こえていたけど、認めたくなかった。
ーーーー俺達、もう、別れよう。
どうして?ねぇ、どうしてなの?
「もう一回言わなきゃだめ?」
隼人はまた長いため息を吐いた。
そしてまた、あの言葉をもう一度言おうとしたので、私は慌てて隼人の口を塞いだ。
「言わないで。ちゃんと、聞こえたから……」
私の声は、隼人に届いただろうか。
私は今にも泣き出しそうで、それを必死に堪えていたから、声は掠れているし、とてもか細い。
「こうするしかないんだよ」
隼人は私の手をどけて、私を見ずにこう言った。
「私……私が、何かしたの?何が悪かったの?ねぇ、隼人」
「ひよりのせいじゃないって」
「じゃあ、何で別れるなんて言うの?ねぇ、何でよ……」
私はとうとう、泣き出してしまった。
私は、隼人のことが好きな訳じゃない。
なのに、どうしてこんなに涙が出てくるんだろう。
どうして、溢れる涙は終わりを知らないんだろう。
その理由を、私は知っている。
私は、まだ酔っていたかった。
誰かに愛されていたかった。
それは、きっと隼人じゃなくても同じはずだ。
だけど、隼人が居なくなってしまったら、私は誰に愛されて生きていくんだろう。
ナンパしてくる奴はどうせ私の身体目当てだし、こんなにも私のことを愛してくれるのは隼人ぐらいだと思う。
私は、隼人を手放したくなかった。
「隼人……私を捨てないで…」
隼人は泣いている私を見て、何も言わなかった。
そして、財布を取り出して五千円札を机の上に置いたかと思うと、立ち上がった。
「これ、朝飯代」
隼人はこれだけ言って、立ち去った。
私に、隼人を止めることは出来ない。
私が止めていい理由なんて一つもない。
だから私はーーーーただ、見送ることしか出来なかった。
だって私は……彼のことを、愛していないのだから。
意味もなく、ただ、泣くだけ。
泣いて、鳴いて、啼いて、無いて。
私は、孤独になるのが怖かっただけ。
隼人を止めたのは、私が1人になってしまわないためだ。
ほら、エゴイズムって、こういうことを言うんだよね。
私は……いつだって、隼人のことを考えたことがあっただろうか。
いつも自分のことばっかりだ。
あぁ、私って醜いな。人間って醜いな。
でも、私をこんなにしたのは……隼人だよね………?
- Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.5 )
- 日時: 2015/08/21 14:27
- 名前: 美華 (ID: iLRtPlK2)
私は隼人と出会ってこうなった。
私は、一人でも生きていけたのに。
隼人と一緒になって、ずっと、そばに居て日々を過ごして。
誰かが、隣にいないと、生きていけなくなったんだ。
【第1章ー1《完》】
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