複雑・ファジー小説
- Re: 救えない愛の壊し方。 ( No.19 )
- 日時: 2015/11/06 19:56
- 名前: 美華 (ID: g3crbgkk)
隼人は私を抱き締めて、大きな溜め息を吐いた。
この溜め息さえも愛おしく感じる程、私は隼人に飢えていたのだと実感する。
長い時間待っていた。こうやって、隼人に抱きしめてもらうのを。
たった一週間という、本当は短い時間の筈なのに、どうしてあれ程にも長く感じられたんだろう。
隼人の呼吸が聞こえる。私の呼吸が聞こえる。
当たり前のことなのに、それが嬉しくて堪らなかった。
もう、ずっとこうしていたい。ずっと隼人の側で生きていたい。隼人の息を聞いていたい。彼の呼吸が途絶えるまで、私は彼と共にありたい。
「ねぇ、隼人……私の事、まだ好き…?」
私の声は震えていた。答えを聞くのが怖い。でも、知りたかった。彼が私をまだ愛してくれているのか。
この矛盾する考えは、きっと、ずっと変わらない。
私の中で永遠に渦巻くであろう、厄介なもの。
隼人は黙ったままだった。
ただ、沈黙の中、隼人の心臓の音がやけに大きく感じた。
「愛、して……る…?」
「私は、隼人の事まだ好きだよ…。隼人がいない一週間、どうしようもなく寂しかった。苦しかった…。隼人が同じ気持ちだったらって、ずっと想ってた…」
私はとうとう泣き出してしまった。込み上げた感情がどんどん言葉となって私の口から出ていく。
本当は、こんなことを言いに来たんじゃない。なぜ別れたのか聞きたかった。もう一度でいいから、隼人に会いたかった。ただ、それだけの事なのに……。
どうしてだろう。涙とともに、思ってもみない言葉が溢れてくる。
私は、隼人の事が好き……?
わからない。でも、隼人がいなきゃ生きていけない。
私には隼人が必要だ。でも、隼人は…?
そう考えてしまうと、もう涙は止まらない。
嗚咽が止まらなくて、途中から言葉さえ出なくなってしまった。
「……ずるい」
隼人から聞こえてきたのは、そんな言葉だった。
そして、首筋に電気の走ったような痛みを覚えた。
「……っ」
「そんな顔してきて。俺に何を求めてるの?」
驚きのあまり固まる私に、隼人は顔を近づけてきてキスをした。
隼人の舌が強引に入ってきて、私は思わず隼人を突き飛ばしてしまった。
「こうして欲しかったんじゃないの?」
違う。こうして欲しかったんじゃない。
そう言いたかったけど、言えなかった。
嗚咽がまだ続いていた。
「隼人は……私の事…っ」
「”どう思ってるの?”って言いたいんだろ?」
私は頷いた。すると、隼人は怒ったように、「バカじゃねぇの」と私を見ずに吐き散らした。
「好き。俺は、ひよりのことが好き」
そう言って隼人はまた、私を抱きしめてキスをした。
あぁ、これが夢だったらどうしよう。
どうか夢なら、覚めませんように。