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複雑・ファジー小説
- Re: 月の秘密とさいごの誓約 ( No.1 )
- 日時: 2015/08/07 16:06
- 名前: 凪砂・真冬・優 (ID: 0qnzCmXU)
*序章
それはひどく曖昧な感覚だった。
わたしは走っていた。
見知らぬ場所をただ、どこかに向かって走っていた。
何も知らない筈なのに、そこは何故か懐かしく感じた。
だけど心の中は荒れていた。
怒り、悲しみ、さまざまな負の感情が混ざり合って醜く、それらは冷静な思考を邪魔していた。
わたしはある襖の前で立ち止まった。
躊躇いなく開け放ち中へ入ると、遠くの方から複数の足音が聞こえてきた。
嗚呼、“あの人”だ。
たくさんある足音の中から、“あの人”のものはすぐにわかった。
それだけで、単純なわたしの心は、意図せず少しだけ和らいでいた。
ーーでも。
“あの人”は、そんなわたしを殴り罵った。
優しい言葉や償いの言葉なんてひとつも出てこなかった。
なんで?
元はと言えば“あの人”が全部悪いのに。
理不尽だ。理不尽だ。理不尽だ。
気づけばわたしは、怒りで我を忘れて、勢い任せに叫びだしていた。
「ーーーーーー!!」
暗転・・・
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