複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.10 )
- 日時: 2015/08/27 22:04
- 名前: 凜太郎 (ID: kct9F1dw)
「戦争って・・・どうして戦争なんか起きてるんだよ!?」
「落ち着いて。えっと、説明すると長くなるかもしれないので・・・用事、着いてきてくれるとありがたいのですが?」
「そうするよ。状況の把握って大事だし」
「それはよかったです」
どうやらラキが住んでるのは城下町という場所らしく、父親が城にいるので荷物を届けるとのこと。
石でできた町を歩きながらラキは説明してくれた。
「まず、この国では昔から戦争が起きている、ということは分かってますよね?」
「う、うん・・・まぁ多少はね」
「そうですか。それは、昔の国王が種族差別が激しかったらしくて・・・。それでもう20年は続いてますかね」
「うわ、長いね・・・でもそれって普通に国王が悪いんじゃないか?」
「今は違うんですよ?最近代わった国王はとっても良い人で、それに革命軍の人は気がつかないだけなんですよ・・・」
そこまで言って俯いた。
「もし戦争が早く終わってたら、サー君もどこか行っちゃうことなかったのに・・・」
サー君、とやらが誰なのかは分からないけど、離ればなれになってしまったのだろう。
僕は彼女の頭をポンポン、と撫でてあげた(僕より身長が少し高いので大変だったけど)
「まぁ、過去をすぐに割り切れないことなんて、誰にでもあるよ。僕はそもそも覚えてないけど、過去にひどいことされてたらいつまでもそれに関する人は憎み続けると思う」
「そうですよね・・・」
そこまで話していた時、大きな城に着いた。
平然とその中に入っていくラキ。
それを慌てて追う僕。
「コラッ!休むな!あと78回残ってるだろうが!」
「す、すいません!」
直後聞こえた怒号に僕の体は硬直した。
何これ、超怖いんですけど・・・。
「おとうさぁん!」
ラキの叫びに僕はラキと怒号を放った男を交互に3往復くらい見た後でわが耳を疑った。
「おお、ラキ。ひさしぶりだなぁ。元気してたか?」
「うん!これ、一週間分の着替えと、お弁当だよ」
「美味しそうだ。訓練が終わったあとで食べるよ。ところで、ソイツは誰だ?」
優しい父親じゃないかと思っていたが、前言撤回。
彼は愛娘のラキ以外には冷たい男な気がする!
「あ、この子はソラ君。家の前で倒れていて・・・」
「白い髪なんて、この国では見たことがないな」
そう言って僕の髪をクシャッと握った。
恐怖で足が竦む。
「まさか貴様・・・革命軍の人間なんじゃないのか?」
「え、えぇっと・・・」
「聞いても、記憶がないって言ってたよ」
ラキの一言を聞いて、一瞬僕の髪を握る力が緩んだ。
僕は慌ててそれを抜け出す(髪が抜かれるかと思った・・・)
そのあとでガクガクと頷いた。
「しかし、筋肉の配列はどう見ても何かの訓練を受けていた者の証。記憶がないっていうのも嘘の可能性があるし・・・」
「嘘じゃないです!」
叫んだ瞬間、首元に剣が突きつけられた。
情けない事に、僕はその場で腰を抜かした。
「あ、あぁ・・・」
「信じるつもりはない。信用できる何かを見せてみろ」
「ぼ、僕は・・・」
僕は慎重に言葉を選んで声に出した。
「僕は、記憶もないし、できることはほとんどありません。でも、みなさんの役に立ちたいんです!」
「・・・・・・ッ!」
男はしばらく黙った後で、2本の刀を取り出した。
「この武器は、きっとお前に合うだろう。これでこれから戦え」
「それって、どういう・・・?」
僕が首を傾げていると、男は無表情のまま言った。
「今回ばかりは特別だ。俺が責任をもつ。だから、この軍に入ってこれから戦ってほしい」
その言葉を聞いて、僕は頷く。
「はい!」
−−−
「もう、殺されるんじゃないかと本気で心配したよ・・・なんか軍に入ることになっちゃったし・・・」
「僕もそうだよ。まぁ、これから頑張るよ。それにしても、人多いね、この町」
僕はそう言いながら周りを見渡した。
どこを見ても人、人、人。
絵に描いたような人の多さだ。
少し気を抜いただけですぐにぶつかりそうだ。
「まぁ、この時間帯はちょうど晩ご飯の買い出しに来る人も多いし、国王軍で外で活動している人が状況の報告とかするために戻ってきたりもするので・・・」
「ふーん・・・」
ドンッ!
その時、すれ違おうとした人と軽くぶつかってしまった。
僕はよろめいて転びそうになったが、なんとか踏みとどまった。
顔をあげると、僕より5、いや6cmくらいは背が高そうな少年が立っていた。
僕より同い年っぽいけど・・・うん。
これくらいでへこむくらいだし、10cm以上差がある人に出会ったら泣きたくなりそうだ。
「あ、ごめんなさい・・・。ちゃんと前見てなくて・・・」
「ん?あぁ、いいよいいよ。こっちこそごめんね」
「いえ、そんな・・・」
その時、どこからか視線を感じた。
ゆっくり彼から視線を外すと、1人の少女が僕の顔を凝視していた。
黒くて長い髪の少女だ。
お嬢様って感じのオーラがするし、すっごい美人。
僕と視線が合うと、さらに目を見開いた。
「えっ、そら・・・さん・・・?」
「な、なんで僕の名前を・・・?」
僕の問いに彼女はさらに驚いたように大きく目を見開く。
え?なんなの一体?
彼女が何か言おうと口を開いた時だった。
「もう、何してるの、ソラ君?」
そう言って僕の腕を強引に引っ張った。
「あ。ホントすいませんでした。それじゃあ・・・」
そこまで言ってラキに人ごみに詰め込まれてしまった。
少し開けた場所に出て僕はぶはぁっと息を吐く。
「ごめん。人とぶつかってて謝ってたんだよ」
「そうなんだ。ちなみにさっきの人はセンさんって言って、国王軍に所属してる人なんだよ」
「へぇ。じゃあ一緒にいたあの女の子もそうなのかな?」
「女の子?」
ラキは首をかしげた。
もちろん、僕が言っているのはさっきの少女だ。
「そう。その、センさん?って人と一緒にいたんだよ」
「国王軍でセンさんと一緒にいる女の子ってあまりいないんですけどね。個別で戦地を歩き回ってるイメージ多いし」
なんだか敬語とタメ語が混ざってきた気がする。
まぁそれは別にいいけど。
「じゃあ彼女なのかな〜」
「そうだと思いますけどね」
ちょっとした謎を残して、僕達は帰路を歩いた。