複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.15 )
- 日時: 2015/09/06 00:20
- 名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: .HkLA/wn)
「お兄ちゃん!」
シルフは何かの部屋の扉をバン!とあけた。
バキ!って音がしたけどいいのかな、俺知らないよ。
中には黒髪、でも毛先が赤い少年が……あれ? どこかで会ったような。
「見て見て! トンボ! 僕が捕ったよ!」
「そうか」
「それだけ!」
あれ? さらっと俺のこと無視!? 何のために来たの!?
その少年は髪はさっき言ったけど黒と赤、で、目が黄色、いや金色かな?
でも腕も生えてるし、羽ないし、うーん、兄妹?っぽくないけど?
「ところでそいつ誰だ」
「知らない。記憶喪失だって」
「そうか 最近多いな 名は?」
最近多いな? 俺以外にも記憶喪失がいるのか?
「身分証明になるものはないか? あると便利なんだが」
「身分証明ね……」
ポケットを探る。
うーん、生徒手帳も置いてきちゃったし、
持っているものといえば、小型レコーダー(水没)、スマホ(圏外)、小型ナイフ(錆びてる)。
すごいな、意外といろいろ入ってる。ただ今使えないものがほとんど。
あと砕けたろうそくも、あ、さばの味噌煮の缶詰もある。
これの賞味期限は来月、これしかまともなものがない。
「さばの味噌煮って役に立つかな?」
「は? 身分証明にか?」
「……ごめん、忘れて」
そうだった、さばの味噌煮で身分証明とか……。
う〜ん、身分証明は無理そうだな。
「尋ねるが、名は?」
「俺? 伝斗 杜来伝斗 お前は?」
「俺はサラマンダー 革命軍のリーダーだ」
……軍? リーダー? 皿万田?
「サラマンダーだ、皿万田じゃない
革命軍って言うのは今起きてる戦争の中でも魔物が多いほうのチームだ
俺はその中でも先頭に立って軍を率いる……って、それくらい分かるだろう」
……戦争? 魔物?
「ところでお前は何だ? 人間か?」
「は?」
人間かって……人間でしょ。人間だよ。
「え? 人間じゃないの?」
「ドラゴンだが? お前はその様子だと人間だな」
数秒の沈黙。
「は? え? 待って、どこからつっこめばいいの? どの辺からギャグなの?」
「ずっとまじめに話しているが?」
「え?」
「え?」
またもや数秒の沈黙。
そうか、ここ普通じゃないんだっけ……。
「ごめん、俺今ちょっとよくわからないんだけど
なんていうか、記憶喪失?なんだ」
うん、そういうことにしておこう。
「もう少しわかりやすくはじめから説明してほしいな〜、なんて」
「わかった」
その少年は立ち上がると、
「俺のあとに復唱しろ
革命軍は強い!」
「革命軍は強い?」
「革命軍は偉大!」
「革命軍は偉大」
「革命軍は正しい!」
「革命軍は正しい」
「革命軍は賢い!」
「革命軍は賢い
……ごめん、何で俺こんな洗脳みたいなことになってるのかな」
「洗脳じゃない、記憶を取り戻す練習だ」
いやいやいや、すごく怖かった。気迫が。
「そういうことじゃなくて、ちゃんとした事実を教えてほしいって言うか」
「ちゃんとした事実だ」
「それはわかったから、とにかくもっといろいろ知りたいの!」
あー、イライラする。
知りたいことを具体的に説明しようにも、そもそも話がぶっ飛びすぎてわからない。
「お前が言いたいことはよくわからんが、とりあえず俺は明日の朝早くに奇襲を仕掛けるつもりだから、早く寝たいんだ」
「俺も寝たいけど、帰る家がない」
「僕の家に来る?」
シルフが首をつっこんできたけど、う〜ん。
女子の家に泊まるって抵抗が……いや、相手は小さな女子……でも女子と寝るって……時雨の家じゃないし……。
俺が頭を抱えていると、サラマンダーが助け舟を出した。
「いい、伝斗。俺と寝ろ」
「……マジで?」
「マジだ」
……まあ、いいか。男だし。
野宿よりはよっぽど安全だ。
「じゃあ、ありがたく泊まろうかな」
「同じ部屋な」
「はあ?」
こうして何とか今日の寝る場所は確保できて、俺は一安心した。
——明日、この世界の現実を見るなんて夢にも思わずに。
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「ところで、何で俺を泊めようって思ったんだ?」
「一人で寝るのは寂しいだろ」
「……」
俺はものすごく今後が不安になった。