複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.18 )
- 日時: 2015/09/07 18:45
- 名前: 日瑠音 ◆Dq9HMgSTac (ID: eVWzcu6j)
次の日の朝、私たちは泊めてもらった村の人達のお礼に回った。
この村は国王軍達の家族が住んでいる所の一つであり、任務を終えた者が近くの村に泊まる事も多いそうだ。
「そんじゃ、また走るか!」
にこやかに笑うセンだけど、もう昨日ので足が…。
「ほら、行くぞ!」
そしてセンは、私の返事も聞かずに手を握ってきたと思うと、前を向いて走り出してしまった…。
そして走る事二時間弱。
呼吸の荒い私にくらべ、センはまだまだ走れそうだ。
「セ、セン。もう着いたの?」
だが、町というには少し小さいような。
「いや、あと半分だ!」
え。
「休憩だよ。ここで少し早いが、昼飯にしよう」
「センはどうしてそんなに足が速いの?」
一番安かったサンドイッチを口に運びながら聞いてみる。
階段に座って食べるご飯も、たまには悪くない。
「ガキの頃から親父に特訓されてたからな。たぶんそのせいだ。」
センはハハッと、懐かしむように笑った。
「楽しかった。特に剣術とかな」
ワクワクとした表情になるセンに、私もワクワクしてきた。
「その中に走りこみもあったな」
そしてセンは、サンドイッチを食べきった。
「お父様はどこにいるの?私、会ってみたくなったわ!」
その瞬間、センは険しい表情になった。
「親父は…死んだよ。戦争で、5年前に」
「親父も国王軍で、けっこう偉い役職だったらしい。」
私は戸惑った。
何をすればいいのか、何をすればセンはー…。
「悪い。急に誰かに聞いてほしくなっただけだ」
「別に誰も恨んでなんかねえし、いつまでも弱々しくなっててもどうしようもねえよ」
そう言うとセンは、またニッと笑う。
でも私は、どうしても笑えなかった。
「…よし、残り半分、走るか」
センは、走り出す準備をしていた。
私に顔を見せないように。
「たまには、悩んだって、泣いたっていいんじゃないの?」
私は風にかき消されるような声で言ってみた。
センの心が、少しでも軽くなれるように。
するとセンは、ダッと走り出した。
私はそれを、ただ追いかけていた。