複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.20 )
- 日時: 2015/09/09 12:15
- 名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: .HkLA/wn)
「あのさ、サラマンダー、だっけ?」
「ああ、サラマンダーだが?」
「一つ聞いていいかな」
「一つだけな」
俺は大あくびをしながらたずねた。
「朝攻め込むって言ってたけど、今って朝?」
「さあな。少なくとも日は昇っていない」
サラマンダーの言うとおり、あたりは真っ暗。しかも大雨。
絶対夜でしょ。いや夜だな。だって夜だし。
「あともう一つ」
「仕方がないな、もう一つだけだぞ 手短にしろ」
「何で俺も起こされてるわけ? まだ眠いんだけど」
「敵が攻めてきて驚いて起きたら、たまたまお前も横で寝ていてな」
当たり前だろ!
「一人で寝るのが寂しい」って言ったのは誰だっけ!?
「安心しろ、のちに援軍も来る」
「そうじゃなくt」
「やばいから行くぞ、出撃!」
突然の合図にビクッと肩が飛び上がる。
サラマンダーはそれを構えると雨の中をザッと駆け出した。意外に速い。
彼の手に握られているのは、傘なんかじゃない。
大きな刀。そして、遠くから響く爆音。
混乱する俺の手には長い棒の先に刃のついた、いわゆる薙刀が握られている。
「何が起きてるんだ!」
「一つだけって言っただろ!」
「それくらい教えておいてくれ!」
「何て言っているか聞こえない!」
残念ながら俺の声は豪雨の音にかき消され、サラマンダーの姿も闇の中に消えた。
マジかよ、どうすればいいんだ!
思わず立ち止まり、そのまま少しずつ後退する。
武器がないわけではないけど、俺薙刀なんて使ったことないから! いや、普通使わないだろ!?
いや、まあ、ケンカは慣れてるほうだけどね!?
でもなんか爆弾とか矢とかその他もろもろ飛んでくるところに投げ込まれても困るよ!?
そして雨がうっとおしい!!
「うわっ!」
頬のギリギリを火のついた矢がかする。
危ねー……。しかも地面に落ちたあと雨で日が消えたから明かりにできなくなった。不運。
とりあえず手探りで木を探して雨宿りも兼ねて登る。
こういうときむやみに高いところに逃げる癖は昔からだ。
いつか椿に『馬鹿と煙は高いところが好き』ってバカにされた覚えがあるくらい、高確率で高いところにいる。
でも俺は馬鹿じゃない! 成績だってサボっている割にいい! 椿や空には劣るかもしれないけど!
足音が聞こえてきたところで、俺の意識が現実に引き戻された。
だいぶ慣れたのか、目を凝らすと少しばかり様子が伺える。
なるほど、確かに国王軍は人数が多い。いいのかな、サラマンダー一人で突っ込んでったけど。
でも次から次へと魔物っぽいのも乗り込んでくるから、いいよね。俺は逃げます。
サラマンダーがリーダーって言うのは信じられなかったけど、革命軍に魔物が多いってのは本当なんだな。
なんか非現実的な感じがして、違和感しかない。
それにしても、ここには同世代が意外に多いらしい。
たった今 目の前を、何やらいかつい二人組みと中学生くらいの少年が走っていった。
追われてるみたいだけど、頑張れ〜。
本当、よくやるよな、こんなこと。俺絶対あんなのに追われたくない。
もし追いかけられたら、
「……絶体絶命だよッ!」
そうそう、絶体絶命……え?
今一瞬、空の声が聞こえたような気がした。
うーん、ついに寂しくなりすぎて幻聴まで聞こえ出したか……。
でも木の上にいる俺には気づいてないよね。
空たちとかくれんぼすると絶対に見つかるんだけど、やっぱりこういう癖って親しいやつにしかわからないのかな。
う〜ん、退屈だけど怖いから下りたくないなぁ。どうしよう。
迷っていると、少し離れた場所で二人の男が倒れるのが微妙に見えた。先ほどのいかつい二人だ。
ツツーと冷や汗が頬をなぞる。
もう少し隠れていよう……。
俺はちょっと体を丸めて、息を潜めた。