複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.21 )
日時: 2015/09/09 22:37
名前: 凜太郎 (ID: HTIJ/iaZ)

 僕はただ感情が赴くままに敵を斬り続けた。
 何度攻撃を受けたかなんてとっくに忘れてしまった。
 痛みは激痛を通り越して今はそこまで痛くない。
 ただただ両腕を思い切り振って、目の前にいる魔物みたいな奴を斬っていく。
 その時、どこからか現れた大きな刀に止められる。

「・・・・・・ッ!?」
「ん。見ない顔だな」

 その刀を持つのは、黒髪に毛先だけ赤い少年だった。
 なんて力だ。
 僕は体を捻ってその刀を避け、彼の懐に潜り込む。
 しかし、紙一重でかわされた。

「クソッ・・・」
「人間にしてはそこそこ強いな」

 そう言って僕の首元を狙って刀を振ってきた。
 僕は咄嗟にしゃがんでそれをかわし、後転の要領で距離をとった。
 服が泥だらけになる。

「人間にしてはって・・・お前も人間なんじゃないのか?」
「俺はドラゴンだ」

 コイツは何を言ってるんだろうか?
 いや、今は闘いに集中しよう。
 僕は刀を構えて、フゥッ・・・と息を吐く。
 そしてまず右手で突きを放つ。
 刀で弾かれる。
 弾く力が強く、重心が右に傾いた。
 僕はそれを利用して左手を思い切り振る。
 ザシュッと音をたてて彼の右頬から血が噴き出した。
 雨で血が流されていく。
 僕はそのまま膝を曲げて、足払いをかけた。
 彼が転んだのを確認して、その上に馬乗りになった。

「よっしゃ」
「・・・・・・油断してたよ。俺も全力出さないとな」

 そう言った瞬間、彼の体が変化した。
 口からは牙を生やし、胴体は黒く染まる。
 翼が生えて、赤くなる。
 その姿は、正にドラゴン。

「・・・・・・なんだよこれ」

 僕は雨でグチョグチョになった地面に尻餅をつく。
 目の前のドラゴンは、僕のことを見下ろしたあとで大きな声で鳴いた。
 本当なら後ずさりをしたいところだが、恐怖で全く動けない。
 目から涙が流れては、雨粒と混ざっていく。

「い・・・いやぁ・・・・・・」
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!」

 その雄叫びは、豪雨の中だというのに響き渡った。
 僕は慌てて立ち上がり、急いで彼から距離をとった。
 しばらく走ったところで振り返る。

「なんなんだよあれ・・・」

 情けない声で、呟いた。