複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.22 )
日時: 2015/09/15 21:34
名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: .HkLA/wn)

“……可哀想にね”
“なんで?”

幼い少年は尋ねた。
するとその人は言った。

“だってもう———”


———————

「……寝てたか」

目を覚ますと、頭のところに固いものがあった。体が痛い。
確認したら、木の上だった。よく落ちずに寝てたな、俺。
そっか、今戦争中なんだ。忘れてた。
幸か不幸か、周りの誰も俺には気づかない。
時雨とか椿だとあっさりと気づくんだけど。
やっぱり相当親しくないと癖なんてわかんないだろうな。親しいって恐ろしい。

“記憶喪失だって”
“最近多いな”

ふとサラマンダーの言葉を思い出した。
記憶喪失……ありえなくもない。意外とこの中に3人がいたりして。
相変わらずの雨の中、ぐっと目を凝らす。
ドラゴン、巨人、ライオンとか蛇とかが合体した何か。魔物ばっかり。
そもそもいるわけがないか。バカじゃね、俺。
少し離れた場所を歩いている白髪の少年と目があったような気がした。
なんとなく、見られてる? ような?
こちらから顔までは見えないし、たぶん向こうも俺には気づいてないだろう……気のせいであってくれ……。
残念ながら、気のせいじゃなかった。少年は真っ直ぐこちらに向かってきた。
気づかれた! Oh,My God!
絶体絶命だよッ!
とりあえず、落とされる前に下りる。一応形だけ薙刀を構える。戦えないけどね!
一方向こうはやたら剣の扱いに慣れている様子で、しかもさっきまで気づかなかったけど2本も持ってやがる。
薙刀構えずに逃げるんだった。やばい。マジやばい。

「伝斗!」


かっと明るい赤い光。
彼は俺の目の前に降り立った。

「……サラマンダー!」

黒髪の少年が手にした野太刀は、燃え盛る炎に包まれている。
一瞬とんでもなく大きな黒い塊に見えたけど、たぶん気のせい。普通の少年だ。
サラマンダーは俺と白髪の少年の間に入り、その大きな刀を構える。

「お前は下がれ! 早く! お前は戦力にならない!!」
「めちゃはっきり言うな!!!」

といいつつ、事実なので否定しない。
その隙にも、白髪の少年は大きく振りかぶり、一歩踏み出す。

「サラマンダー! 面だ! 面が危ない!」
「は!?」
「頭だ!」

サラマンダーは慌てて刀を立てる。
ガギン!
金属がぶつかる音。そしてその少年はサラマンダーに正対したまま勢いよく後退、そのまま走り去った。

「……くそっ、逃がしたか」

サラマンダーがいつの間にかいなくなったあとも、しばらく俺はその場を動けずにいた。
あの打ちつけるような独特の剣さばき。力強い踏み込み。間合いの取り方。
学校の武道場を覗くと、いつも彼はそこにいた。それと同じ動き。
そしてサラマンダーの剣が放つ明かりで一瞬だけ見えた、あの顔。


「ソラ……?」