複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.24 )
日時: 2015/09/19 20:16
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 ベチャベチャと音をたてながら、僕は豪雨の中ただ走る。
 水が傷口に染みてズキズキと痛む。
 あぁ、僕はなんて不運な少年なんだろうか。
 いや、不運というには悪いことが起きすぎている。
 記憶喪失になって、女の子の用事に付き合ったらなぜか軍に入ることになって、戦地に行く事になって、屈強な男に追いかけられて、少年だと思って戦ってみたら実はドラゴンで・・・。
 いや、ここまででも十分不幸な出来事かもしれないが、問題はここからだ。
 それで戦地を離れているところで一人の少年を見かけた。
 助けようと近づいたら敵だったらしく武器を構えてきたので止むを得ず攻撃。
 そうしたら、ドラゴン人間が現れた。
 そして隙をみて攻撃した時、戦闘素人だと思っていた少年は僕の剣劇を見切ってドラゴン人間に指示。
 あっさり防御され、ただ今全力疾走中。
 一言で言おうか。僕が何か悪いことしたか!?
 たしかに今日だけで結構人を殺しているけどね、さすがに記憶無くしたりするのはひどいしそもそもそれは人を殺す前だから!

「敵襲ッ!」

 その時、前方から声がしたので見ると、剣を構えた男とかがこちらに走ってくるのが見えた。
 一瞬何があったのか分からなかったけど、遠くに古い町が見えた。
 もしかして、この方向って潰す予定の拠点に行く方向なんじゃ・・・?
 あぁ・・・馬鹿だなぁ・・・。
 もうすぐ死ぬのかな。
 あはは。ヤバい、泣きそう。
 だってさ、人生って言っても覚えてないから1,2日くらいしか生きた実感ないもん。
 だから、嫌だよ、こんな所で死ぬなんて・・・。
 でも、僕には帰る場所なんてない。
 帰るべき家も、そこで待っている家族も、それで喜んでくれる友達も、何も分からないんだよ!

「・・・ラキ・・・・・・」

 そこで思い出したのは、僕を看病してくれた優しい少女の顔だった。
 その瞬間、肩の荷がスッと落ちた気がした。
 そうだ。僕は彼女の元に帰りたいんだ。
 彼女と一緒に、生きたい。
 だから、死にたくない!
 そう、思った時だった———

 ———プッツン———

 ———何かが、頭の中で切れる音がした。

「ああああああああああああああああああああああああああああああッ!」

 そこからはただの作業だった。
 目の前の魔物や男を斬るだけの、ただの作業。
 両腕を強く振れば、勝手に人は斬れて、死んでいく。
 気付けば拠点に辿り着いていた。

「ここか・・・」

 僕はゆっくりと、足を踏み入れた。