複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.25 )
日時: 2015/10/09 18:38
名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: KNtP0BV.)


さて、サラマンダーにコテンパン言われて何とか寝ていたあの建物戻ってきたものの、

「やばくね……?」

俺は今、窓(といってもただの穴に近い)から外の様子を覗いている。
さすがにここまで来る兵士は少なく、点々とその辺にいるみたいな感じだった。
先ほどまでは。
え? なんか誰かこっち来てるよね?
一人めちゃくちゃ強いヤツいない?
しかも敵も味方も関係なく切ってない? 何アイツ? 敵なの、味方なの?
……そして俺やばくない?

「やべえ……ちょっと外に非難しようかな」

だってここにいてもし攻め込まれたら、袋のねずみだし。
よし、逃げよう。できるだけ敵に会いたくない。
薙刀を持って、恐る恐る出入り口へと進む。
その瞬間、誰かがちょうど入ってきた。
マジかよ! 敵か、味方か、頼む、味方であってくれ!
扉をあけた向こうの人を見て、あっ、と声を上げた。
鋭い目つき。真剣な表情。

「……そ、ら」

機械のように感情のない言葉が漏れた。
確かに髪は白い。しかし、それを除けば、いや、それを含めても間違いはない。
全身から力が抜けた。やっとのことでいつもの笑みを作る。

「……ソラじゃん、なんだ驚かせるなよ
 髪染めたの? すげーイケてる、カッコいい……よ?」

一瞬、目の前で刃が舞った。
とっさにかがむ。頬に走る鋭い痛み。
いやあ、痛い。マジで痛い。でもそれどころじゃない。
コイツ、今俺の喉もと狙いやがった。
つまり、だ。

本気で殺しに来てる!

「ちょッ、待て、待てまてまて、マジたんまタンマ死ぬ死ぬ!!!」

待つわけないか! でも待ってくれ! 頼む、誰か時間稼ぎを!
願いが届いたのか、偶然か、ソラの後ろから誰かが扉を突き破った。
バギっ! あの音はたぶん、ドアがダメになった音だ。 
飛ぶようにつっこんでくる、白い影。

「お兄ちゃん! じゃないじゃん! 伝斗じゃん! 僕は急いできて損した!」
「シルフかよ! ……とりあえず、マジ助かった! サンキュー! で、どいてくれ!」

そのまま勢いでドミノ倒しになるシルフ、ソラ、俺。
もう少し俺が冷静にものを考えられたらいいのだが、いまいち展開が速くてよくわからない。
突然シルフは、空を見て「あーッ」と叫んだ。

「キ、き、きょ、きお……」

きお、く? まさか、記憶喪失? 誰が?
……ソラが?

「……き、テキ、敵だ!」
「『お』関係ねぇ!」

どんなに冷静じゃなくてもつっこみは入れておく。
でも記憶喪失じゃないんだね。
ビックリしたよ 記憶喪失なのかと思ったよ。

「いいや、とりあえず僕たちは撤収! ここを出ないと危ないかもって言いに来たの!」

そういうとシルフはあわただしくバサバサと出て行った。
風みたいなヤツだな……。
俺は何とか立ち上がって、ソラに手を伸ばす。

「おい、行くぞ」

ソラはポカンとした顔でしばらくこちらを見て、

「……ありがとう」

と、手をつないだ。
友との感動の再会。このままもとの世界に帰らせてくれれば楽なのだが。
ソラと外に出ると、辺り一帯は炎に包まれていた。

「!?」

どうやらこの世界は、そんな単純じゃないらしい。