複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.30 )
日時: 2015/11/01 10:41
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

『ごめんなさい。許して』
『謝って許されると思ってるのか!お前が全部悪いんじゃないか!』

 殴られる。痣ができていく。

『あーあ、お前がもっと完璧な人間だったらよかったのに』

−−−

 目を覚ますと、今は見慣れた天井があった。
 よりによって、なんであのことに関してはハッキリと全てを思い出してしまったんだろうか。
 まぁ、昨夜の戦いに比べればそこまで大したことでもないけど。

「いや、十分大したことだろ・・・」

 自分にツッコミを入れながら、ベッドを下りる。
 うわ、体痛いし。これ絶対筋肉痛でしょ。
 とりあえずいつものように朝食を食べ、軽く着替えてから町に出た。
 ラキには家の中で会わなかったが、どこかに買い物にでも出かけてるのだろうか。
 そんなことを考えながら、僕は空を見上げる。
 太陽はちょっと西に傾いていた。
 それじゃあ今は12時過ぎくらいか?
 寝過ぎたな・・・。

「・・・・・・?」

 その時、何か翼の音のようなものが聴こえた。
 気のせいかもしれないが、嫌な予感がしたのでひとまず城壁に登ってみた。
 すると、シルフが飛んできていた。

「きょ、きお・・・敵だ!最悪!」

 僕はひとまず上空に飛び出し、体を捻って強引に少女の顔にドロップキックを放った。
 ここまで身体能力があるとは思わなかったが、なんとか少女を地面に落とすことはできた。
 僕はそのまま上手く着地し、シルフの元に駆け寄る。
 普通なら絶命していてもおかしくない技らしいが、やはり素人だからか普通に痛がってる様子しか見られなかったので、ひとまず首に回し蹴りをくらわせた。

「いたたた・・・待って・・・」

 シルフの言葉が終わらないうちに、僕は刀を抜き首元に突きつけた。

「革命軍が、ここに何の用だ?」

 できるだけ低い声で、僕は言う。
 彼女は、見た所僕より年下だろうか。
 見た目もかなり小さいし、性格も子供っぽい。
 黄緑色の瞳を震わせながら、少女は震える声で言った。

「偵察に来た・・・だけだよ・・・・・・だから、殺さないで・・・・・・」
「それが殺さない理由になると思っているのか?戦争中なんだろう?」
「お願い・・・だから・・・・・・命だけは・・・・・・」

 前に見た天真爛漫な様子は一切なかった。
 やはり、死に直面した人間はこうやって命ごいだけをするようになるのか。
 まぁ、僕には関係ないけど。

「もうどうでもいいや」

 僕はゆっくりと刀を振り上げ、一気に振りおろし・・・。

「危ないッ!」

 バギィッと音を、僕の頬はたてた。
 視界に閃光が走り、気がつけば体は吹っ飛んでいた。
 空、地面、空、地面、と目まぐるしく視界は回転し、気がつけば仰向けの状態になっていた。
 なんとか首を動かして見ると、3mくらいの筋肉質な巨人が立っていた。
 もしかしてあれに殴られたのか・・・?

「ノーム!畑仕事は?」
「さっきひと段落したので、休憩がてらあなたの様子を見に行ってみたらなんだか殺されかけてたから」
「ホントだよ!来てくれて助かったよ〜。あの子死んじゃったのかな?」
「それは分かりませんが、ひとまずアジトに行きましょう。怪我の手当をしなければ」
「はーい」

 そう言って2人は歩いてどこかに行ってしまった。
 待てよ・・・まだ僕はお前らを殺していないんだぞ・・・。
 僕の伸ばした手が、届くことはなかった。