複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.42 )
日時: 2015/12/05 20:02
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 なんとか拠点を脱出し、無事に森の中に姿を溶け込ませることができた。
 とりあえず刀の無事を確認するために、僕は鞘から刀を取り出した。
 直後、戦慄する。
 刃が、ない・・・?

「そん・・・な・・・」

 みると、自分の手が震えていることに気付いた。
 咄嗟に手で掴んで押さえる。
 仕方ないことなんだ。
 僕にとって、この刀は、僕が生きる意味の大部分を担っている。
 この刀がなければ、僕はただの『完璧を追い求めるだけのただの少年』になってしまう。
 ん?あれ?僕って完璧になりたいんだっけ?
 それは、まぁいいか。
 とにかく、この刀が使えなければ、僕は役立たずだ。
 記憶もない、何もない僕にとって、これは数少ない僕の長所ともいえる。
 この時代では、賢くても、なんでもできても意味がない。
 強くなければ、何も守れないんだ。
 なのに・・・それなのに・・・・・・。

「許さないッ・・・」

 体は動く。腹の傷は心配だけど、見た所内臓に支障はなさそうだし、傷さえ開かなければ大丈夫だろう。
 心の準備もできている。やる気も十分。殺る気も十分。
 あの刀は国の所有物と言っても過言ではない。
 聞いた話では有名な刀職人が作った代物らしい。
 それをあんな価値も分からないクズ共に渡すなんて、僕は馬鹿だ。
 でも、まだ間に合う。
 動け、体。今こそ、動く時だろう。
 そこで、今自分が武器を持っていないことに気付く。
 あぁ、やぱり馬鹿だな、としゃがみこんだ時だった。

「見回りめんどくせーなー」
「侵入者なんて、そういないだろうにな〜」

 見回りをしていた男二人がこちらに歩いてきたので、咄嗟に木の陰に隠れた。
 見れば、その二人はそれぞれ刀を所持している。
 やった、と思った。
 僕は足元にあった大き目の岩を手に持ち、二人の背後に近づく。
 そして、一人の後頭部にガツンッとぶつけた。
 その男は倒れた。

「侵入者かッ!」

 刀を抜こうとした男の顎を蹴りぬく。
 顎を揺らされ、男は倒れた。
 生かしておいてもこちらにメリットはないので、頭を岩で押しつぶす。
 念のため、最初の男も。
 そして刀を回収した。
 刃を見ると、少し安っぽいし手入れもちゃんとできていない。
 こんなのばかりな軍団の手に自分の刀がいってしまったなんて、泣きだしてしまいたいくらいの醜態だ。
 でも、使い捨ての刀はこれくらいで十分だ。
 切れ味が悪くても、力で押し切れば楽勝だし、長く痛めつけることができるからね。
 僕は刀を腰に提げ、拠点に向かい歩を進めた。