複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.44 )
日時: 2015/12/14 15:16
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 目の前が真っ赤になる。
 斬れ、斬り殺せ。
 視界に入るもの全てを。
 殺せッ!

『なんでお前は完璧じゃないんだ?』

 うるさいうるさいうるさいッ!
 もう全てがどうでもいいッ!
 お前なんか消えろッ!
 僕の記憶にお前なんかいらないッ!
 斬り崩せッ!

『お前なんか、さっさと死ねばいいのに』

 なんでだよッ!
 お前なんかッ!
 友達じゃないッ!
 数少ない記憶のなかで唯一思い出せたお前なんか知らないッ!
 僕を利用するだけ利用しといて何もせずに捨てていったお前なんかッ!

「ぁッ・・・」

 視界が揺らぐ。
 背中にすでに3本の剣が刺さった状態だ。
 激しい痛みと血の気が引く気配を体中に感じる。

『やっぱり、お前は、完璧になんかなれなかったんだよ』

 今のこの状態を見られたらそう言って彼は笑うに違いない。
 黙れよ。お前に僕の何が分かるって言うんだよ。
 お前なんかにッ!

「ぁぁああああッ!」

 叫んで意識を強引に引き戻し、目の前にいる兵士を切り刻む。
 すでに疲労困憊。
 とっくの昔に傷は開き、アドレナリンの効果も切れ、痛みだけが脳内を支配する。
 知らないよ、そんなこと。知らない、知らない、死なない、死なない。

「がぁぁあああッ!」

 気付けば目の前に生きた兵士は誰もいなかった。
 自分が持っていた刀に目を移す。
 それらも、やはり手入れがちゃんとできていないせいで根元から綺麗に折れていた。
 僕は足元に落ちていた刀を拾う。
 僕が先ほどまで使っていた物に比べれば、多少はマシな様子だった。
 鞘に納め、走る。
 どこだ?刀はどこだ?
 僕は目を閉じて思考を巡らせる。
 僕がやつらだったら、どこに隠すだろうか?
 地下か?はたまた水中か?
 その時脳裏に浮かんだのは、デントの顔だった。

「くはっ・・・」

 自分を笑ってしまった。
 ああ、なんで気付かなかったんだろう。
 彼らは、僕より明らかに単純思考だ。
 そうでもなきゃ、刀を盗るなんていう策も思い浮かぶわけがない。
 武器を取られれば、僕、もしくは軍が、取り返しに来ると考えるはずだろう?
 自分で言うのもなんだが、僕個人が来ただけですでに地獄絵図じゃないか。
 それを、自分と同等、もしくはそれ以上の知能をもつヤツが考え付かないはずがない。
 僕は地面を強く蹴り、建物に入る。
 音を聴き、部屋から飛び出して来た兵士を斬り殺しながら僕はほくそ笑む。
 刀がある場所はただ一ヶ所。ここのリーダー、もしくはデントの部屋だ。
 自分で持っておけば安心とか考えてそうだし。
 多少頭が良ければ、せめて部屋の地下くらいは思いつきそうだけど。
 そう考えれば、行動は一つだ。
 一番兵士が周りに密集している部屋。
 少し立派なドアの部屋。
 革命軍リーダー、サラマンダーの部屋ッ!
 僕は思い切り、ドアに体当たりした。

「なッ!?」

 そこでは、デントとサラマンダーがいた。
 サラマンダーの方は、刀を構えている。
 そしてデントの手には、強く、しっかりと、僕の刀が握られていた。
 鞘からは抜かれていない。
 僕は正確に、しっかりと、刀を構えた。

『さっさと、死んじまえよ。空』

 ・・・・・・うるさいよ。