複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.46 )
日時: 2015/12/21 12:43
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

 何度目かになる、刀がぶつかり合う音がする。
 サラマンダーは、とにかく強かった。
 まるで彼の掌で踊らされるかのごとく、無理に力で攻めようとすればかわされ、速さで挑めば力で押し切られる。
 そのせいか僕の動きも大振りになり、体力を削がれる。
 これが革命軍リーダーの力かッ・・・。

「はぁッ!」

 強引に振った刀は、根元からポッキリと折れた。
 こんな時にッ・・・。

「殺す!」

 サラマンダーは勝負を決めようと刀を振り上げた。
 僕は咄嗟にその手を蹴る。
 すると、それは運よく弾かれ、タンスに突き刺さる。
 扉の一つが燃え、その後火は消えた。
 僕は咄嗟にその刀を抜き、サラマンダーに向けた。

「何のつもりだ?」
「何のつもりもなにも・・・君達がやったことと同じことをしてるまでだ。君達も、人の刀を勝手に奪ったじゃないか」
「あぁ。あれか。良い刀だな」
「そんな言葉が聞きたいんじゃないッ!」

 僕は斬りかかる。
 しかし、慣れない刀のせいか、あっさり彼の鋭い蹴りで弾かれ、扉に刺さる。

「お前、ずっと色々なやつからもてはやされてたみたいだけど、実際はただの弱者だな」
「僕に斬られたくせに・・・何言ってるんだよ・・・」
「お前は伝斗なんかに刺されたみたいだけどな」
「ッ・・・」

 怒りが沸点に到達し、僕は彼に飛びかかった。
 しかし、彼の方が力は上で、すぐに彼に馬乗りにされる。
 彼は拳を振り上げ、僕の顔面にぶつけた。
 僕はその腕を握りしめて、爪を食い込ませる。

「ソラさ・・・・・・っ」

 その時、世界で一番大切な人の声が聴こえた。
 サラマンダーも動きを止めたので、僕も止める。
 見ると、ラキとデントがいた。
 ラキの姿に、喜びと驚きの感情が湧いた。
 なぜ彼女がいるんだ?
 なぜ彼女はデントといるんだ?
 そう思った時だった。

「さー、くん・・・・・・」

 血の気が引く。
 そうだ、彼女とこの男は知り合いだったんだっけ。
 と思いきや、いきなりサラマンダーは窓から飛び降りた。
 え?えぇ!?
 2人は窓に駆け寄ったが僕は行かない。
 何が起きてるか分からないし、体が痛い。

「……可愛いね。このあと、時間、ある?」

 と思いきや、急にデントがラキにそう言うので、僕は睨む。
 とはいえ、この状況はどうすればいい?
 僕は悩んだ末に、窓から飛び降りた。
 ここは一階なので、ダメージはない。
 その時、背後でデントとラキもついてくる。
 僕はラキの手を取り、全速力で走った。

−−−

 しばらく走ると、ちょうど森の中にポッカリ空間ができたような場所に出る。
 その中心に、サラマンダーが立っていた。

「サー君!」
「来るなッ!」

 駆け寄ろうとしたラキを大声でサラマンダーは止まらせる。
 僕は慌てて彼女の手を引く。

「なんで?なんで急に何も言わずにいなくなったりしたの?」
「お前に何が分かるッ!俺にない物をたくさん持ってるお前がッ!」

 サラマンダーはそう言って乱暴に息を吐いた。
 ラキは困惑の表情を浮かべる。

「なんのこと・・・?私は何も・・・」
「この際だから言ってやるよッ!自分を愛してくれる両親に温かい家。しまいには恋までしてさぁッ!俺はそんな物何も持ってねえんだよ・・・なんでお前ばかりッ・・・」

 そこまで言って俯く。
 理不尽だと思った。
 そんなの、勝手な嫉妬じゃないか、と。
 でも僕は何も言えなかった。
 昔からそうだ、自分の気持ちを伝えるのはどうも苦手で・・・。

『お前なんかと友達にならなければよかったよ』

 あの時何か言い返してたら、何か変わったのかもしれない。
 そういえば、他にもあったような・・・。
 たしか、デントとも・・・。

「恋って・・・まさか、好きな人いるの・・・?」

 背後から聴こえた声に振り返ると、デントがあからさまにショックを受けた表情をしていた。
 長い間考え事をしていたような気がしたけど、実際は大した時間は経っていなかったようだ。

「えっと・・・好きっていうか・・・その・・・」

 質問を投げかけられたラキは顔を赤らめながら俯く。
 その姿がこれまた可愛らしくて僕の心臓は高鳴る。
 というか、視線がこちらをチラチラ見てるような気がするけど、気のせい?
 もし、もしそういう意味だったらすごく嬉しいけどさ?

「もうどうでもいい・・・。伝斗、帰るぞ」
「え!?あ、えっと・・・分かった!」

 急に帰っていくサラマンダーと伝斗。
 それを見送る僕たち。
 気付けば目的の刀は足元に転がっていた。
 僕は静かに天を仰いだ。