複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.56 )
日時: 2016/01/14 20:49
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

 フラフラと、森の中を彷徨う。
 もう、ダメだ・・・。
 完全に、精神がいかれてしまいそうだ・・・。
 まぁでも、僕は存在自体が許されないんだ。
 いっそのこと、ここで死んでしまえば楽になれるんじゃないだろうか・・・。

「ワンっ」

 その時、足元から鳴き声がした。
 見ると、小さな茶色の犬だった。
 なんていうか、この世界に来て初めてまともな動物を見た気がする。
 僕は子犬を抱き上げ、近くの木の下に座る。

「よしよし、迷子かな?」

 そこまで言った時に、あの時の記憶が蘇る。

−−−

 毎日近道に使っている公園。
 僕の小学生の剣道大会の帰りに、横切ろうとしたらたまたま子犬が落ちていたのだ。

「ちょっと伝斗に似てない?」
「何で俺なんだよ」
「なんか、色が黒くないところが。黒かったら空かな」
「それ髪の色素の問題だろ。どちらかというと時雨に似てると思う。小さいし」
「何で小さいと時雨なの!?」

 そんな会話をしている。
 相変わらず伝斗は時雨をいじることが好きだよなぁ。
 そういえば、余談だが、僕も背が低いのに伝斗は僕のことはいじらないよなぁ。
 なんでだろう?身長以外で勝てることがないからかな?
 そんなことを考えていた時、伝斗がどこか思いつめたような表情になった。

「伝斗、どうした?」
「いや?何も」

 どうしたんだろう?
 もしかして、この子犬に感情移入したとか?
 いやいやいや、ありえないでしょ。
 伝斗に限ってそれはないな、うん。
 まぁ僕が言えることではないけどね。

「こんなに可愛いのに、何で捨てられちゃったかなぁ」

 唐突に、時雨がそう言った。
 伝斗もだけど、時雨も馬鹿だよなぁ。
 そんなの決まってるじゃないか。

「いらないんだよ、ただ単に」

 1+1とかよりも簡単なことだ。
 人間はいらなければ、なんでも捨てる。
 それがたとえ、犬でも、人でも・・・———赤ん坊でも。
 そうだ、伝斗が飼えばいいんじゃないか?
 さっき(多分)感情移入してたっぽいし。
 うん、我ながら中々の名案だ。
 僕はそう思いながら伝斗に顔を向けた。
 すると、目の前に竹刀が迫って来ていた。

 バキッ!

 自分の竹刀で殴られるなんて変な感じだな。
 現実逃避をすること2秒。

 えっと・・・伝斗が、僕のことを殴ったのか?
 時雨と椿が僕に駆け寄ってくる。
 頭から流れ出す血。

「なんで・・・僕は生きているんだろう・・・」

 誰にも聴こえない声で呟く。
 結局、僕が生きている意味はなんなんだろう?
 生まれたことを誰にも喜んでもらえず、やっと友達ができたと思っても裏切られ・・・。
 それでも、やっと、本当の親友ができたと思ってたのにッ・・・。

 僕が生まれた意味って、なんなんですか?

−−−