複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.57 )
- 日時: 2016/01/15 15:11
- 名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: F5aTYa7o)
目を覚ますと、サラマンダーの血まみれの顔がそこにあった。
「うおあっ!? 俺死体と一緒に寝る趣味ないんだけど!?」
「勝手に殺すな」
ベッドから飛び上がって瞬間、わき腹に激痛が走った。
腹を抱えてうずくまる。
「いってぇ。マジあのおっさん殺す」
「無理だろ。有名な強いヤツにやられたらしいな。よく生きてた。感心する」
あれ、確かになんで俺何だかんだ無事なんだろう。
しかも拠点にちゃんと戻ってきてるし。
あの時、やられて、死を確信して、そのあと……。
「あ、カラスだ。カラスみたいな黒いヤツが来た。確かそいつがなんかいろいろしてくれたんじゃない?」
「黒い? そんなヤツいっぱいいる。もっといろいろないのか、髪が白いとか」
「ありません! って言うかお前それ、ソラのことだろ」
サラマンダーがわざとらしく、ちょこんと首をかしげた。
なんか前を思った気がするけど、こいつ普通に一緒にいると妙に動きがかわいらしくなるよな。
「そういえば、お前一緒に仲良く崖から落ちたよな。そのあとどうだった?」
「あいつはかすり傷程度で逃げた。
別の男が撃ってきたけどまともに当たったのは半分くらいでほぼ外してたぞ。
当たった弾もほぼ貫通して体内に残ってないし、内臓が傷ついた様子もない。
まあ軽いほうだ」
お前の血まみれが軽いほうならソラのかすり傷ってどんな大怪我だよ。
つっこんでやりたくなったが、これ以上ソラの話はしたくない。
思い出したとか何とかいっていたけど、どうせ全部嘘だろ。
昔から何でもよくできて、問題行動ばかり起こす俺とは正反対。
別に引け目を感じていたわけじゃないけど、俺にないものをもっていて羨むことはあった。
例えば……家族とか? あと金銭面でも俺より裕福に見えた。空が菓子パンを買うなんて到底想像できない。
まあ出来がいいのは昔からだし、今もそういう思考だとしても否定しない。
俺から同情を誘って殺すつもりか何かか。そんなのに騙されてたらここでやっていけない。
「あ、死体で思い出した。俺まだ死体処理、途中なんだよ」
「そうか。俺も行く」
「冗談だろ」
「本気だ。俺は強い」
強いと健康は別物だ。こいつはわかっていない。
例えノームとかに手当てしてもらったあとだからって、無理に動くと傷が開いて血が出る。
常識だろ!
「大丈夫だ、これは今現在進行形で血が止まってない。動こうが動くまいが同じことだ」
「なおさらダメだろ お前が死体になるぞ」
「俺は強い。崖からも落とされ慣れてるんだぞ、これでも」
「それ自慢にならないから。はい、絶対安静! 約束破ったらでこピンだぞ」
俺が宙にでこピンする仕草をすると、サラマンダーは大人しくベッドに戻った。
やはり可愛らしさが3割り増しぐらいになっているぞ、お前。
—————
死体処理場には相変わらず死体が山積みにされていた。
数増えてんじゃねぇの。当たり前か。
「俺も死んでたらここ行きだったのかー。危ねー」
相変わらずこの新鮮(?)な血の臭いは慣れない。
息を止めて、覚悟を決めて布をめくる。
むわっと広がる鉄のような臭い。
これまでなら当然、すぐに顔をそらしていた。
今は違う。逸らそうにも、逸らしたいのに、目線はそこに釘付けになった。
布の下にあったのは、小さくて、白い翼を片側だけに持った少女だった。
「……し、るふ……?」
返事はない。
でも確かにそれは俺が目覚める前、確かに元気に走り回っていた、彼女。
胸部は何か大きなもので貫かれて朱に染まり、左肩からごっそりと翼をもがれた、変わり果てた姿でそこで眠っていたのだった。