複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.58 )
日時: 2016/01/15 16:59
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

 嫌な事を思い出してしまった。
 あれから、たまに考えてしまうんだ。
 完璧になっても意味なんてないんじゃないかって。
 でも、そうじゃなきゃ、僕の生きる意味を見失ってしまいそうになってしまう。

「もう・・・今日はもう帰ろう・・・」

 子犬を地面に下ろし、元気に駆けていく姿を見ながら何度目かになる溜め息を吐く。
 空を見上げると、月が輝いていた。
 結局、僕は人を殺すことでしか生きる意味はないんじゃないだろうか。

「ソラ君?こんなところで何をしているんだ?」

 背後から声がした。
 見ると、なんでここにいるのか、国王が立っていた。

「国王様・・・」
「なんで・・・君は泣いているんだい?」

 気付けば、僕の目からは涙が流れていた。

「ぁ・・・あれ・・・おかしいな・・・」
「何か悩みでも、あるのかい?」

 国王の優しさに甘えてしまいたかったのか、僕は生まれてから今までの過去を語った。
 ずっと黙って聴いていたが、僕が話し終わると真面目な顔で言った。

「君は、自分に価値がないと思っているのかい?」
「・・・はい・・・」
「馬鹿な事を・・・」

 彼は溜め息を吐く。
 それ以降は何も言わず、僕の横を通り過ぎようとした時、肩に手を置かれた。
 そして耳元で・・・。

「少なくとも僕には、必要だ」

 ハッキリと、そう言った。

「早く僕の隣まで、上がってこい」

 僕を必要だと、言ってくれた。
 僕のことが必要だと、僕に生きる価値があるのだと。

「ッ・・・ありがとうございますッ・・・」

 泣きながら、僕は叫ぶ。
 地面に染みをつくりながらも、叫ぶ。

「僕を必要としてくれてッ・・・!」

 国王の姿が見えなくなった後で、僕は子供のように大声を出して泣き叫んだ。

−−−

 分かったことがある。
 僕が生きる意味は、人を殺すことじゃない。
 国王を、ラキを、大切な人を守る事だって。
 別に人を殺せなくても、守れると思うんだ。
 僕の目の前に広がっているのは人体学の本。
 これで学べば、どこを斬れば人は死ぬのか、どこを斬れば行動不能で済ませられるのかが分かると思うんだ。
 僕は息を吐き、本に目を向ける。
 これで、人を殺さずに、皆を守って見せる。

「やってやるさ・・・」

 握った拳の中には、魔法石のネックレスが入っていた。