複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.61 )
- 日時: 2016/01/27 09:14
- 名前: 雅 ◆zeLg4BMHgs (ID: F5aTYa7o)
そこでは巨人たちがせっせと建物(?)を建てていた。
たぶん、サラマンダーのアジトと同じ類のものだろう。
すごくにぎやかで、楽しそう。
「おう! そこの坊主! 少し手伝ってくれ!」
「えっ、俺?」
「チビのお前! 早くしろって!」
俺がチビなんじゃなくてあなた方が大きいんじゃ?
とか、言いたいことはたくさんあったけど、とりあえず手伝えることだけ手伝おう。
俺も戦闘で足を引き、ほかでも使えないなんて事になったら、目も当てられない。
「わかりました! 何すればいいっすかね?」
「そうだな、お前弱そうだし、背も低いし……これに水汲んでこいよ!」
……できることだけ、ね。
バケツだけで1kgはありそうだけど、声を掛けてくれたあの巨人が行ってしまった以上、文句は言えない。
はあ……頑張るか。
—————
作業がきりのいいところになったのか、巨人たちは休憩を取り始めた。
最初に声を掛けてくれた巨人が、俺の横に腰を下ろす。
「おう、坊主! さっきはナイスプレーだったぜ!」
コイツ、俺をからかってる。絶対からかってる。
ああ、できることなら時をさかのぼってバケツをつき返してやりたい。
そもそも俺にあれが務まるわけがないだろ。
体に巻いたタオルをもう一度しっかり巻きなおしむくれていると、
後ろから別の巨人が近づいてきた。
「おい、シュリー。あんまりそいつ怒らせんなよ」
「別に怒らせてねえよ。ただ俺はさっきのこと言ってるだけだって」
「バケツひっくり返して自分から水を被ったヤツか。このクソ寒い時期に」
「ックシュン!」
ああ、寒い。
そもそもあれはバケツじゃない、湯船だ。大きすぎるんだよ!
別に俺が無能ってわけじゃないからね!
後から来た巨人……ちょっと真面目そうなほうが尋ねた。
「ところでお前、何しに来たんだ」
「何しにって、俺は特に何も……」
「ふん、そうか。
お前って確か最近サラマンダーのところのヤツだよな」
質問の意図がわからないまま、「うん」とうなずくと、
その巨人はこちらを睨んだままいった。
「シュリー、あんまりコイツとかかわるな」
「何でだよ」
「下手に関わって何告げ口されるかわかんねえぞ、あのリーダー様に」
頭に来た。
言葉を理解する前に俺は立ち上がって怒鳴りつけていた。
「俺は告げ口なんか……」
「ああそうだな、告げ口するヤツもみんなそう言うんだよ」
俺の勢いは、静かに吐き捨てるような言葉にいとも簡単にかわされた。
行き場のない怒りを抱え唇を噛みしめていると、シュリーとか呼ばれていた巨人がなだめるように、
「あいつついこの間目の前で仲間が死んだんだよ。ショックで気が立ってるだけだからさ。
俺からもあいつに言っとくから、お前は休めって」
「いや、俺帰る」
ああ、もう二度とあいつに会いたくねえ。
何なんだよ、あの巨人。
「俺は告げ口とか関係なくお前と仲良くしたいからさ、もう少しここにいろって
ケントもそんなにカッカすんなって……」
「シュリー! いつまでお前はサボってるんだ!」
ケントと呼ばれた巨人が叫んだとき、ちょうど別の声がそれをさえぎった。
「国王軍が攻めてきた! 応戦の用意をしろ! 被害は最小限に抑えろよ!」
「チッ、またあいつらかよ……。
おい、小僧。あのおっかないリーダー様は今どうしてるかわかるか」
「どうしてるも何もあいつは今怪我で動けねぇよ」
「ってことは向こうから仕掛けてきたってことで間違いないな。
自分からやられに行くバカはあいつだけだ」
「ケント、お前俺に注意しておきながら自分でリーダーの悪口言ってどうすんだよ」
シュリーの指摘はもっともだが、今はそれどころではない。
「小僧、俺たちは戦いに行く。ねんねして待ってな」
「俺も戦うに決まってるだろ。薙刀だって持ってる」
「おっ、坊主はチビだけど武器は大きいのな!」
ダメだ、いちいち気にしてたら俺のライフが余分に磨り減る。
できるだけ無視を決め込んで、俺は二人から離れた。
脳裏に焼きついたシルフの姿が、俺の背を押す。
シルフを殺したヤツら——絶対に殺す。