複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.64 )
- 日時: 2016/01/28 21:06
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
僕が自分の頭に撃ったはずの銃弾は、大きく逸れて遠くの木に当たる。
そして拳銃を持った左手は見覚えのある色白で細い腕に握られていた。
「伝斗・・・?」
「馬鹿野郎」
彼は僕の手から拳銃を奪い取り、草むらに投げ捨てる。
だんだん、僕の頭は冷静になっていく。
「お前何やってるんだよ。自殺でもする気か?」
「・・・ごめん」
とりあえず謝るしか思いつかなかった。
まぁ、たしかにどうかしてたとしか思えなかったし。
「おい、小僧ッ・・・」
その時、どこからか巨人が走ってきた。
その姿を見た瞬間、僕の脳内の・・・奥深くから声が聴こえた。
壊セ、と。
「な、おい、ソイツは・・・」
「ケント、待ってくれ。コイツは俺の・・・」
伝斗がその言葉を最後まで言い切ることはなかった。
僕が横に突き飛ばしたからだ。
ダメージは最小限で済むようにしたし、怪我はないだろう。
僕はすぐに刀を拾い、巨人と向き直る。
そういえば、グレンさんが最後に相手してたのも巨人だっけなぁ・・・。
でも、僕が殺したんだっけ・・・。
「小僧ッ!クソチビ野郎がッ!」
「うるせぇよ・・・」
自分でも驚くような、冷酷な声が出た。
気付けば、僕は彼に斬りかかっていた。
彼は横跳びでかわす。
デカいのに、機敏なやつだな。
「ケント!」
「小僧ッ!お前はこっちに来るなッ!やっぱりコイツは普通じゃねえぞッ!」
うるさいんだよ。
お前は黙って、死んでろよ。
僕は彼の懐に潜り込み、足払いをかける。
体が大きいからか、大きな音を立てて倒れる。
僕は刀を握り直し一気に急接近した。
さっきまでとどかなかった喉を、ぶった斬る。
大量の鮮血が吹き出した。
そのせいで、僕の体は返り血塗れになってしまった。
うわ、最悪口に入った。
鉄の味が広がる。
「そ・・・ら・・・?」
声がした方を見ると、伝斗が目を見開いてこちらを見ていた。
あぁ・・・やってしまった・・・。
「お・・・まえ・・・なんで・・・」
いつもなら、心配して近づいてきたりとかするものだけど、今日は来ない。
やっぱり、怖いのかな。
殺されるかもしれないから。
僕は何か言い訳をしようとしたけど、何も言葉が出てこない。
だって、自覚できてしまうから。
自分が異常なだけだって。
「伝斗・・・」
なら、せめて・・・。
「・・・僕から・・・逃げて・・・」
僕の手で、友人を殺したくない。
「は?お前、何言って・・・」
「ごめん・・・でも、逃げて・・・お願いだから・・・」
僕は、言い切った。
これ以上一緒にいたら、また僕は誰かを傷付けてしまう。
「理由がないのに逃げるなんて・・・」
そこまで言った時、伝斗の頭上を銃弾が横切った。
見ると、国王軍が迫って来ていた。
彼は少し迷う素振りを見せたが、すぐに走って行った。
その後ろ姿を見送ってから、僕は俯く。
「あーあ・・・」
声が漏れる。
言葉がまとまらないまま、口に出す。
「なんで僕は・・・こんな人生を送っているんだろう・・・」
いつの間にか雨雲はすぐそこにきていたらしく、雨がポツポツと振り始める。
でも、そのしずくとは別の、透明の液体が頬を伝う。
「もう・・・嫌だよ・・・」
僕は刀を持ち直し、自分の胸に突き刺した。
次こそは死ねると、不思議な安堵感があった。
最後に思い出したのは、愛おしい少女の姿だった。