複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.66 )
- 日時: 2016/01/30 20:15
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
「ねぇねぇ空君、ここ教えてくれない?」
「あぁ、ここ難しいよね。ここはね」
「空君、ここのことなんだけど」
「ちょっと待ってて。それでここを」
「あ、俺も分かんねえやここ。教えてよ」
「いいよ。それじゃあね」
世の中にこれほど忙しい休憩時間があっていいのだろうか。
いや、これはもう休憩ではない。一種の授業、いや苦業だ。
3日前にこのクラスに転校して来たばかりの僕が昨日の抜き打ちテストで学年で唯一満点を取った噂は人を呼び、昨日今日と人が押し寄せてくる。
おかげでトイレにすら行かせてくれない。
小学校なら勉強なんて頑張らなくてもいいだろうに。
まぁ家に帰ってからも復習に予習を重ね、死にもの狂いで勉強をしている僕が言えたことではないけど。
「ありがとう!ホント空君って勉強教えるの上手だよね〜」
「そんなことないよ」
「あるある!優しいし真面目だし頭も良いし、伝斗とは正反対だよな」
「でんと?」
僕が聞きかえすと、周りにいた何人かの生徒が「えッ!知らないの!?」と、とても驚いた様子だった。
だってまだ転校して3日ですし・・・。
「伝斗っていうのは隣のクラスの・・・」
「頼むよ椿ぃ〜ッ!」
男子生徒の言葉を遮ったのは廊下から聴こえた声だった。
僕はそれをたまたま開いていたドアから見る。
「一生のお願いッ!宿題写させて〜!」
「駄目です。この前のテストの成績も悪かったんですから、宿題くらいは自分でやりましょう」
「そこをなんとか〜ッ!」
移動教室なのか、何かの教科書を持った美少女に同じく教科書を持った状態で何か頼み込む男子生徒。
つかなんだあいつ、体細いし色素薄いし、何かの病気か?
「あぁ、あれが伝斗だよ。杜来 伝斗」
「あれが?」
「あぁ。喧嘩ばかり起こすし成績も悪い。超問題児だよ」
「普通の生徒に見えたけど?」
「普段はな。でも、最近ではちょっとぶつかって謝らなかったってだけで殴られた生徒もいるらしい」
「それもう不良じゃん(笑)」
「まぁな。ま、空君は関わらない方がいいよ」
その時始業のチャイムが鳴った。
僕の周りにいた生徒は「じゃあ、また次の休憩時間な」と言って手を振る。
僕も手を振りながら、さっきの伝斗とかいう生徒について考察してみる。
不良で不真面目で成績悪い、か。
まぁ僕から関わらなければ向こうも僕みたいな優等生には話しかけてこないだろう。
極力関わらないようにしよう、と心に決めた。
−−−
「じゃあまた明日〜」
「うん。また明日」
僕は勉強を教える中で仲良くなった男子生徒に手を振りながら、ランドセルを背負う。
はぁ・・・やっと帰れる。
まぁ帰っても勉強する僕にはあまり変わらないけどさ。
「おい、転校生」
いつのまにか目の前には今関わりたくない人物第1位、杜来 伝斗がいた。
さて、どうやって逃げようか。
「な、なに・・・?」
とにかく刺激するな。
適度相手しつつ、隙があれば逃げろッ!
「いや、大したことじゃねぇんだけどな」
彼はそう言うと、僕の机に両手を置き、額を擦り付けて・・・。
「頼むッ!俺に勉強を教えてくれッ!」
「・・・・・・え?」
多分、今僕はとても馬鹿な表情をしていることだろう。
だって考えてもみてよ?
不良だのなんだのと聞かされていた男子が自分に勉強を教えろと頭を下げて言ってくるんだよ?
逃げれるものなら逃げたい・・・。
「あ、いや、この後はちょっと習い事が・・・」
「じゃあ明日でもいいから!」
嘘吐いてもダメなのかよ。
しかも明日は本当に習い事(剣道)があるんだけど!?
「いや、ホント僕も引っ越してきたばかりで忙しいから・・・」
「頼むよ!次のテストで点数下がってたら怒られるんだよ!」
怒られる、か。親にかな。
まぁ、小学3年生で血の繋がった親がいないなんて、僕以外にはいなくて十分だけど。
不良でも、僕より優れてる点とか、あるもんだな。
「はぁ・・・分かったよ。じゃあ後で図書館に集合ね」
「さんきゅー!ていうか、習い事は?」
「ん?あぁ、あれは嘘。ホントは明日」
「ふざけんな」
結局殴られましたとさ。ちゃんちゃん。