複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.74 )
- 日時: 2016/02/16 16:48
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
昨日までは、城に来るのにも緊張したものだが、今日は不思議と何も感じなかった。
なんでかは分からないけど、多分、昨日と今では僕の精神状況が違いすぎるからだろう。
「やぁ、よく来たね」
「あなたに呼ばれて来たんですけど・・・」
そうだったね、と言って笑う国王。僕は笑わない。
昨日までの僕なら、愛想笑いくらいはしたかもしれないけれど、なんていうか、越えてはいけない一線を越えてしまった僕には、この国王ですらただの登場人物にしか見えなくなってしまった。
この世界は僕中心の物語か?いや、この考えはくだらないな。
「それで、用事はなんですか?」
「連れないなぁ。今日は中将の君に話があったんだ」
なら早く言え。
口にしかけたがグッと堪える。流石にこんなこと言ったら殺される。
「実はね、最近、回収した死体が妙なんだ。体の一部が取り除かれてたり、皆、胸を抉られて死んでたり」
「もしかして、グレンさんの死体も?」
「革命軍に回収されたみたいだけど、可能性はあるね」
それを聞いた瞬間、自分の鼓動が耳にへばりつく。
なん、だ・・・この、感覚、は・・・。
「一体何なんだろうね。この現象」
僕は、返事をしない。
なん、だろう・・・血が、燃えるよう、に、熱い・・・。
「革命軍の中に・・・死体コレクターでも、いるんじゃないですかね・・・?」
「あはは。面白い考えだ。まぁ、昔少し有名になった「死神」とかいう少年の噂もある。迷信だと思うし、気にする必要はないだろうが、一応知っておいてくれ」
「分かり、ました・・・。じゃあ、もう行きますね・・・」
「あぁ。またな」
僕はフラフラと、城からでる。
グレンさんが、そんな少年に殺されるわけない。
頭を撃たれたからだ。万全の状態ならまだしも、あの状態で奇跡的に生きていたとしても、かなりの重症。勝てるわけがない。
じゃあ、グレンさんを、殺したのは、結局はグレンさんを撃った人間だという事になる。
人間、そう、人間だ。
燃えたぎる血の中で、僕の脳はそう決めつける。
グレンさんを撃ったのは伝斗だ。杜来 伝斗だッ!
殺さないと、アイツを、殺さないと。じゃないと、僕は生きている意味がない。
彼女は笑ってくれない。僕がアイツを殺さなくちゃ。
殺して、壊して、崩して、砕いて、上げて、落として、潰さないと。
僕に革命軍の友達なんかいらない。
友達なんて、どうせすぐ作れるじゃないか。
伝斗だけじゃない。革命軍は、皆、敵だッ!
家の扉を開ける。ラキはいなかった。
おそらく買い物だろう。そんなことに構ってはいられなかった。
僕は自分の部屋に戻り、クローゼットを開ける。そこには、軍服が掛かっていた。
これは、少し前に貰ったものだが、今まで着なかった。
理由は簡単、これを着たら、伝斗の敵になってしまうような気がしたから。
でも、今はもうどうでもいい。あいつは、敵だ。
僕は静かにそれを手に取る。
そして、軍服の上着を、羽織った。