複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.76 )
- 日時: 2016/02/18 16:40
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
鏡を見れば、知らない少年が立っていた。
別にこれはホラーではない。
鏡にうつっている時点で確定はしているが、もちろんこれは僕だ。
軍服というと、迷彩柄を想像するが、これは少し違って、グレーを基調とした全体的にシンプルな色合いだった。
黒が強めのグレーに赤いラインが入った上着に、白いシャツ、ネクタイ。
下は白が強い灰色のズボンに黒いブーツと、全体的にシンプルな感じだ。
しかし、この国の軍服というのは人に威厳を持たせる能力に長けているらしく、いつもより5割増しほどは威厳があるように見えた。
良い。非常に良いぞ、この服は。
「さて、行くか・・・」
刀を腰に提げ、頭には上着と同じデザインの帽子を被り、僕は家を出る。
僕個人の独断で戦争に行くのは不可能だ。
拠点も見つかっていないし、国王が判断しなければいけない。
「参ったなぁ・・・」
僕は空を仰ぐ。
あぁ、空が青い・・・。青い、空・・・。
−−−
とても晴れた空の下。
僕はただ、そこに立っていた。
『空君。新しい家族だよ』
そう言われて紹介されたのは、見知らぬおじさんとおばさん。
2人供優しい笑顔を浮かべながら僕の頭を撫でたりしてる。
『一緒に帰ろうね』
そう言って僕の手を引く。その手はとても、優しくて・・・僕は・・・。
−−−
・・・。
・・・・・・あぁ。
そうだった・・・・・・。
あの時からだ・・・・・・僕が、壊れ始めたのは・・・・・・。
優しさなんかとは、無縁だったから・・・・・・。
初めて触れた優しさが、嬉しくて、楽しくて・・・悲しくて、寂しくて・・・・・・。
それを、抱えきれなくて・・・僕は、隠したんだ。
笑顔を顔に貼りつけて、皆を誤魔化して。
「はは・・・馬鹿みたいだ・・・・・・」
帽子をギュッと握りしめる。
結局、僕は孤独だったんだ。どんなに友達を増やしても、どんなに親友ができても。
僕が心を開かない限り、僕は独りじゃないか。
皆、僕に笑ってくれた。あれは本心からの笑顔だった。
でも、僕が見せていた笑顔は偽りのもの。
「ひとりぼっち・・・かぁ〜」
今更じゃないか。幼少期に散々思い知らされただろう?
信じたら、人は裏切るんだ。
孤独でも良い。独りでも、一人じゃなければ。
それで、いいだろう?
「中将ッ!」
先ほど僕の家に来た兵士が、かしこまった様子で僕に挨拶をする。
僕は適当にごくろうさま、とか言いつつ向き直る。
「どうしたの?何か用?」
「はいッ。さきほど帰ってきた諜報部隊が、新しく拠点を見つけたらしく、小隊を是非中将殿に率いてほしいとのこと」
「ふぅ・・・了解。それじゃあ隊の人連れてきて。行くなら速い方がいいだろうし」
「分かりましたッ!」
走って行く兵士の後ろ姿を見送りながら、僕は静かにほくそ笑む。
あぁ、伝斗・・・僕が、壊してあげるよ・・・。
だって、僕を壊したのは・・・・・・君なんだから