複雑・ファジー小説

Re: スピリットワールド【合作】 ( No.78 )
日時: 2016/02/20 20:30
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

 さて、ここで大きな問題が起こった。
 なんと、ここの拠点には主力がいないのだ。
 革命軍の兵士の一人を脅して話を聞いたところによると、城に行ったという。

「どうしますか?今から城に戻りますか?」
「あぁ。もちろんだよ。ここも潰したしね。多分城が潰されることはないと思う。あの国には僕なんかより強い人がたくさんいるし。とにかく行こう」
「はいッ!」

 兵士は先に帰して、僕は辺りを見渡した。
 これが、僕が殺した人達か。

「伝斗もいたら、もっといいのに・・・なんてね」

 そんなことを考えながら、僕も国に戻ろうと踵を返した時だった。

「わぁ、白い髪なんて初めて見た!珍しい〜」

 ゾワッと、寒気がした。
 僕は咄嗟に上を見た。
 そこには、枝の上で笑顔を浮かべ、こちらを見下ろしている黒髪の幼女がいた。
 ここで興奮でもすれば立派なロリコンになれるだろう。

「いやぁ、昨日に続いて今日も、僕はラッキーだな〜」

 そんなことを言いながら枝から下りて、僕と対面する。
 ちゃんと彼女の姿を見た瞬間、悪寒がした。
 なんだ、コイツは。それが僕が抱いた感想だった。
 綺麗な黒髪に整った顔立ち。
 でも、コイツ、目がヤバい。
 少女の顔に大人の男性の目玉を貼りつけてしまったような、異常性。
 さらによくよくみれば、体も異常だ。
 男のようにたくましい腕に小人のように細く小さな指。
 女性のような細くて長い美脚に、巨人のような大きな足。
 それに白い羽まで付けている。
 なんだコイツはなんだコイツはなんだコイツはッ!
 異常。異端。狂気。
 そんな言葉が僕の脳内をぐるぐる廻る。
 まるで違うピースを無理矢理はめ込んで、これで完成ですと言われたような違和感。
 コイツを見てこの異常性に気付けない輩は、天性の阿呆としか言いようがないほどのレベルだ。

「ねぇねぇ、話聞いてるの〜?」

 僕の目の前で手を振り始めたところで、ようやく我に返る。
 多分、コイツは殺せない。確実に、コイツは強い。
 とにかく油断しないように、適度に距離を取って逃げなければ。

「あぁ・・・あはは、ごめんごめん。えっと、君は誰かな?」

 とりあえず、フレンドリーに接してみた。
 コイツの年齢が見た目相応だとしたら、多分かなり幼い、ハズだ。

「僕?僕はライヒェ。君は?」

 ライヒェ・・・か。ひとまず覚えておこう。
 しかし、名前か。ここで下手に本名を教えていいものなのだろうか?
 とりあえず、偽名を使ってみよう。とりあえず僕の中で危害があって一番平気なのは・・・。

「伝斗。杜来伝斗だよ」
「残念ながらその名前はすでに知ってるよ。彼、あれでも革命軍の中では有名人だからね」
「あんなに弱くて馬鹿な奴でも有名になんてなれるものなのか」

 おっと、思わず本音が・・・。

「あははッ!毒舌だね〜。君達友達なんでしょ?」
「まぁ、一応はね・・・」
「そっかそっか〜。それで、君の名前は?」
「空、だよ」
「空君、か〜。念のため聞いておいたけど、やっぱり君が伝斗の・・・」

 そこまで言ってクスッと笑う。
 正直、これ以上はあまり関わりたくないんだけどな〜。
 彼女は僕の目を見て、少し陰鬱な笑みを浮かべた。

「ねぇ・・・僕のモノになって?」

 咄嗟に、僕はブリッジの要領で思い切り仰け反った。
 数瞬後、背後にあった木が抉れる。
 それを目視すると同時に視線を前に戻す。
 見ると、彼女はどこに隠しもっていたのか、大きな鎌を振り上げていた。
 僕は体を捩って横に飛ぶ。
 地面に鎌が刺さる。

「うおおッ!」

 今まで出したこと無いような大声と共に、鎌を蹴って近くの草むらに飛ばす。
 そしてライヒェを押し倒し、刀を抜き、喉元に突きつける。

「・・・・・・何が目的だ」
「君の髪が欲しい」
「残念ながら、ハゲになるつもりはないから」
「いいよ。殺して奪うから」
「クソがッ・・・」

 僕は喉を半分掻っ切ってやった。
 血が吹き出すかと、嗚咽を零すものだと、思っていた。
 しかし、幼女はただ僕の目を見たまま、笑顔すら崩さなかった。

「へぇ、君、中々面白いじゃん」

 そこまで言うと、幼女とは思えない力で僕を突き飛ばした。
 僕は尻餅をつく。

「殺すには惜しいね、君は。今日は一旦引くよ。次会う時は、もっと楽しませてね♪」

 そう言った時、まるで合わせたかのように強い風が吹き砂埃が巻き上がる。
 僕は咄嗟に腕で目を覆った。
 砂埃が完全に消えた時、そこには幼女の姿はなかった。

「次会った時、か」

 僕は立ち上がり、服に付いた埃を落とした。
 とにかく、城に戻ろう。
 あの隊の人達はもう城についた頃だろう。
 僕は刀を鞘に戻し、走って城に向かった。