複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.80 )
- 日時: 2016/03/01 16:38
- 名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)
森を抜けると、国の前にでた。すると、ラキの姿が見えた。
彼女に出会えた喜びで気持ち悪いテンションになりかけたが、よく見ると伝斗が彼女を抱き寄せているではないか。
優しい優しいラキは口には出さないが、顔の表情は「早く離せよカス」と言いたげな様子だ。
ふむ、あの彼女をあそこまで苛立たせる伝斗には、ある意味才能があるのかもしれないな。
さて、この様子だとどうやら彼女を連れていこうとしているようだ。
はっはっは・・・ふざけんなよ?
僕は一気に、加速する。地面を蹴って距離を詰める。
伝斗はすぐに気付き、銃口を向けようとするが、もう手遅れ。
僕は彼の顔面を、拳で打ち抜いた。
少年が吹っ飛んでいくのを見ながら、僕はラキに駆け寄った。
「ラキッ!怪我はない?」
「ソラ君・・・怪我は、ないけど・・・」
そこまで言った時、彼女の耳に掠り傷のようなものがあるのを確認する。
僕はすぐに初級の回復魔法で治してやる。
やれやれ、痕になったらどうするつもりなんだ。
僕は彼女を家に帰し、走って行くのを確認したところで伝斗に向き直る。
彼女の綺麗な耳を傷付けたんだ。お前は同じ耳を引きちぎってやるよ。
そんなことを考えていた時、僕に銃口が向けられる。
「伝斗・・・?」
「空。俺は、お前を殺す・・・」
彼は、僕の目を見たまま、そう言った。
伝斗が、僕を殺す、だって?
僕は、それを聞いて・・・———
「ぁはははははははははははははははははっはははははははっはははッ!」
———腹を抱えて、笑った。
呵々大笑。
だって、だって可笑しいじゃないか。
あの伝斗が、僕を殺すと言ったのだから。
面白すぎて怒りも殺意も一瞬忘れかけた。
そして、僕の感情が・・・・・・爆発する。
「笑うなよッ!」
「笑うよ。あははッ!だってさぁ、伝斗。君が僕に勝てることが何かあるかい?身長以外で勝てることが、君には、ないだろう?勉強、運動、喧嘩、今まで何一つ勝てたことがないじゃないか。それなのに、僕を殺すだなんて。冗談にもほどがある。もう僕たち中学生なんだよ?夢を見るお年頃は卒業だろう?これからは現実を見ていかなきゃダメだよ。夢を見る暇があるなら英単語の一つでも覚えてみろよ。あぁ、ごめんごめん。君は僕を殺す夢を見るので精一杯だったよね、すっかり忘れ・・・」
「お前に何が分かるって言うんだよッ!」
気付けば、彼は引き金を引いていた。
しかし、元々銃口は僕に向けてたままだったので、引き金を引くタイミングだけを気を付ければよけるのは簡単だった。
銃弾は僕の頬を掠り、背後にあった木に当たる。
まぁ、身のこなしとかを見た感じでは、多少は成長したとは思う。
でもね、伝斗。
「そんな実力じゃ、僕は殺せないよ」
僕は一気に距離を詰め、まず彼が持っていた拳銃を蹴り、どこかに吹っ飛ばず。
そして、彼の首を絞め上げる。
「さっき、俺の何が分かるんだ、とか言ってたね。分かるわけないじゃん。負け犬の気持ちなんか」
君は知らないだろう?手のまめが潰れた時の痛みを。
君は知らないだろう?努力が報われなかった時の悲しみを。
君は知らないだろう?努力が報われた時の喜びを。
あぁ、そっか。怠け者の君は、そもそも努力というものを、知らなかったね。
「やーめた」
僕は彼の首を放した。
彼は喉を押さえて、咳き込み、むせながら僕を睨む。
そんな目で見ないでよ。敗者のくせに。
「君なんか殺しても、革命軍には何の支障もないもんね」
彼の目には、満面の笑みの僕が映り込む。
蔑むような、憐れむような、無垢な笑顔が。
「君なんか、殺す価値もないよ」
僕はそれだけ言って、その場を立ち去る。
その後の彼の表情なんて、見たくもなかった。
とりあえず、先に城に戻って金を頂こうかな。
この戦いは他の兵士も見てたから、殺さなかったことを色々言われるかもしれない。
でも、まぁいいだろう。彼は戦力外。殺すまでもない。
城から帰った後は、ラキを慰めてあげよう。
彼女は父親が死んだショックで、今は少し情緒不安定になっている部分がある。
そんな中であんな負け犬に触られたのだから、今頃泣いているかもしれない。
ドSというわけではないが、泣いている彼女は僕に甘えてくれるから嫌いじゃない。
僕の歩は、自然と速くなっていく。
僕の人生は、順風満帆だ。