複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.96 )
- 日時: 2016/04/01 19:56
- 名前: 凜太郎 (ID: eldbtQ7Y)
日に焼けたのか、少し色黒な肌。黒い髪に鋭い眼光。
僕は無意識に刀に手をかける。コイツ、絶対ヤバい。明らかに他の村人とは違う。
身構える僕に対し彼はドラゴンを下ろし・・・・・・。
「・・・・・・誰かの子供か」
特に表情を変えずにそう言い、僕の頭を大きな手でくしゃくしゃと撫ではじめる。
一瞬毒でも塗られているのかと思ったが、その手に悪意がないことに気付く。
「えっと・・・・・・?」
「・・・・・・(ナデナデ)」
「おぉ。ロブ。その子ともう1人が新しく村に加わった住人だよ」
え、あ・・・・・・この人がロブさんですか!
ごめんなさい!頭の中でヤバいとか怖いとか考えちゃって!
ていうかずっと僕の頭撫でているけどなんなのこの人、子供好き?
「はは、気にしないでやってくれ。コイツ、こんな見た目で子供大好きなんだ」
わーい当たってた〜。嬉しい〜・・・・・・とか言うべきじゃないよね!
困惑する僕をよそに彼はひとしきり撫でまくって満足したのか撫でるのを止め、斧で豪快にドラゴン肉を捌き始めた。
その時、ラキが開け放たれたドアからぴょこんと首だけ出した。
「ソラ君、今のは・・・・・・?」
「さぁ。僕にも分からないよ」
僕は肩を竦めて見せる。
ちなみに髪型はいつも少し乱れていたのがボッサボサになりました。
−−−時間は少し遡り、城の王室にて−−−
兵士の手によって、先ほど僕に逆らった男は死刑台に連れて行かれた。
きっとすぐにでも僕に反抗したあの口が付いた首は斬り落とされるだろう。
全く・・・・・・なぜ人間というものはこうも僕の言う事を聞けないのだろうか。
村が終わる?どうでもいいさ。この町さえ、僕の生活さえ安泰ならば、それで良い。
それにしても、さっきから外がうるさいな。
僕は紅茶を入れてくれてる召使に何をしているのか尋ねてみることにした。
「さっきから外がうるさいようだが、何かしているのか?」
「ええ。どうやら昨日の戦いの際に鍵束が盗まれたらしく、現在城内を探しております」
鍵の束が盗まれただと?
僕は紅茶を落としそうになったが、なんとか堪える。
ここで冷静さを欠くな、考えろ、考えるんだ・・・・・・。
そこで、一人の少年の姿が脳裏に浮かんだ。そうだ、彼なら何か案を出してくれるだろう。
僕は一人の兵士を呼び出し、命令を出す。
「君、ソラ君を今すぐ城に呼んでくれないかな」
「ハッ、分かりました!」
年下に案を求めるのもおかしな話かもしれないが、ソラという少年は特別なのだ。
この国では希少とも言える白い髪を持った少年。15歳にして異例の中将へと出世。親のコネなどではなく、しっかり実力を持った上での出世だった。
グレンが死んだ時、空いた立場に誰か入れようという話になった時、兵士達、特にソラと一緒に戦った兵士たちは彼を中将にするべきだと主張した。
僕だってさすがに多少は否定したが、兵士たちの主張が強く、仕方なく彼に中将という肩書を与えた。
正直、驚いたよ。大人が子供を推薦するのだ。異例中の異例だろう。
中将になってからも、彼は素晴らしい成果を見せてくれた。
彼なら、もしかしたら僕の本性を見せても受け入れてくれるかもしれない。そんなことを暢気に考えていた時だった。
「ソラ君が・・・・・・いない・・・・・・?」
さすがの僕でも、紅茶を落とした。
兵士の話では、ソラはおろかグレンの娘までいないらしく、家を探してみると軍服だけ見つかったという。
あと、なぜか家の中が少し荒らされていたという話も聞いた。
僕はできる限り取り乱さないように深呼吸し、両手をグーパーしてから前を見る。
「命令だ。今すぐソラ君と、グレンの娘を探し出せ。手段は問わないが、命だけは保障しろ」
「はいッ!」
兵士が部屋を出て行ったのを確認してから、僕は横にあったテーブルを思い切りぶん殴った。
なぜだ・・・なぜ人間は皆僕に逆らうッ!
皆黙って僕の言うことを聞いていればいいのに!皆僕に反抗なんかしなければいいのに!
気付けば、僕は爪を噛んでいた。
親がいない寂しさからか、小さい頃からたまにこうして爪を噛んでいた。
精神科の話では、ストレスからくる行為だとか。
「僕に逆らう奴は、皆消えてしまえばいいのに・・・・・・」
僕は椅子の上で膝を抱える。