複雑・ファジー小説
- Re: スピリットワールド【合作】 ( No.110 )
- 日時: 2016/05/29 11:55
- 名前: 凜太郎 (ID: LN5K1jog)
家に帰った僕は、すぐに書斎に籠った。
書斎と言っても、家から持ち出した魔道書と僕の小説が数冊ある程度だが。
本が日焼けしないために窓の無い部屋は、まだ日は出ているというのに暗かった。
電気を点けてみると、部屋の壁にはスカスカの本棚が並んでいるだけ。
僕はその部屋の真ん中で胡坐をかき、本を床にソッと置く。
試しにペラペラと捲ってみると、この本は英語で書かれていた。
しかもたまにマニアックな文法とかあるし、読むのに時間が掛かりそうだな。
小一時間程度掛かって、なんとか半分ほど読み終わった。
読書は好きだが、小説のように物語性があるわけでもなく、ただ魔法に関する備考的なものが書いてあるだけだった。
それこそ面白い記事はいくつかあったよ?例えば、『魔法が使える者同士で体の関係を持つと、双方での魔法は無効になる』とかね。
要約すると、僕とラキが体の関係を持つと互いの魔法が効かなくなるというわけだ。
つまり、回復魔法を掛けるという名目で体に触れられなくなる。
ふーむ、これは困った。非常に困った。まぁ、元々そういう機会があったわけではないけれど。
詳しく読んでみると、元々魔力というものは体に溜まっており、魔法を使えるようになると魔力の流れが変わるらしい。
それにより、その変わった流れの魔力同士が交わると、その魔力との干渉が不可能になるらしい。
まぁ、原理はよく分からないが、とりあえず魔法が使える女とヤると魔法が通じないということだろう。
さて、話は戻し、この本をくれた時に福田さんが言っていた魔力量と髪色の関係についてだ。
これについては割と早く見つけることができた。
それが以下の文である。
人間や種族などは、生まれながらにして魔力量や魔術の才能などは決まっている。
それらは、その者の髪色で識別することができる。
それは左から、黒、赤、オレンジ、黄色、紫、緑、青、白である。
とはいえ、一番下の黒がものすごく小さいというわけではない。
あくまで黒が一番、一般的な色である。
それに、努力次第ではいくらでも伸ばせるものである。
しかしそれは、どの髪色の、どんなに魔力量が多いものにでも、通じるものである。
だから、自分の髪色が魔力の少ないものだったとしても、そこで諦めず、努力していってほしいと思う。
しかし、白髪の者には、逆に、努力しないで欲しいと思う。
奴等の魔力量は、調べてみた所、黒髪の者の100倍くらいの量だった。
あれだけの魔力があれば、禁断魔術などに手を染めなくとも、世界を滅ぼすことすら可能だろう。
だから、白髪の者には肝に銘じてほしい。
力は時に、自身の身を滅ぼすという事を。
力に酔いしれることなく、制御することが大事だということを。
Magic attention bookより
・・・・・・。
まぁつまり、そういうことだ(どういうことだ?)。
どうやら、僕の体にはとてつもない魔力が備わっているらしい。
そりゃ、才能は欲しいと思っていた。
今のところ無駄に優秀な頭くらいしか才能と呼べるものがなかったし。
でも、100倍は流石に大袈裟すぎやしないだろうか。
初級水魔法『アクアボール』で例えるなら、黒髪の、つまり一般的な魔力量の人間は1発だとしたら、白髪、まぁ、僕などは100発撃てるってことでしょ?
さすがに話が誇張されている部分はあるのだろう。
とはいえ、白髪の理由は気になっていたので、これで気になることは今のところほとんど解決したようなものか。
その時、部屋がノックされた。
「ソラ君、いる?」
ラキの声だ。
どうぞ、と言おうと思ったところでこの本は人に見られて良い物なのか少し考えた。
この本自体、どこにでも出回っているものではないみたいだし、もしかしたら持っていてはいけないものなのかもしれない。それで隠そうとしている辺りがダメなんだろうけど。
僕は急いで本を僕専用の本棚にしまい、ドアを開けた。
そこには、当たり前だが、ラキが立っていた。
「どうしたの?なんか・・・・・・物音が聴こえたみたいだけど・・・・・・」
「な、なんでもないよ。それで、何か用?」
「晩ご飯。ていうか、なんでもないって、絶対何か誤魔化してるよね?」
ジト目&頬を膨らませるというダブル攻撃に、僕の中のゲージは一瞬でぶっ壊れ・・・・・・るところでギリギリ耐えた。
もう、最近彼女に対しての可愛いという認識が弱くなっていた頃にこれは卑怯じゃないですか?
絶対天使の生まれ変わりだってマジで。
今度天使のコスプレさせてみようかな。白いワンピースはすぐに用意できるから、それに天使の輪と羽を工作で作って着せたら・・・・・・あ、想像以上に似合いそう。
翼は革命軍の、シルフ、だっけか?あの子の翼が見た目的にちょうど良いんだよなぁ。
そういえばライヒェとかいうやつも羽生えてたよな。ああいう純白の翼が欲しい。
でもさすがに人から千切ってまで欲しいわけでもないしなぁ・・・・・・。
あ、そうだ。ちょうど使ってない羽毛枕があったっけ。
僕には羽毛枕はどうも合っておらず、とりあえず押し入れにしまっている。
やはり枕は蕎麦殻のザラザラした枕が好きだったので、安眠は難しいと思っていたのだが、数時間前にロブさんと組み手をする際に切った木についていた種の殻が割と蕎麦殻に似ていたのを発見した。今度あれをもっと取って、麻袋にでも詰めて枕を作ろうと思う。
さて、話は戻しラキの天使コスの話だ。まぁ、羽毛枕の羽で純白の羽は確保できるな。
天使の輪の方は黄色っぽい色の木を使って削って、それで骨組み作って。
イケる気がする。ラキの天使コスプレ。
「そんなことないよ。本当に大したことじゃないって。ちょっと小説読んでただけだから。それより、今日の晩御飯は?」
「むぅ・・・・・・ん。今日はドラゴン肉のビーフシチューだよ」
「美味しそうだなぁ、それは」
僕はそう言いつつ書斎の扉を閉じた。
続きは、晩飯と風呂の後でも大丈夫だろう。
だって僕には、時間は山ほどあるのだから。