複雑・ファジー小説
- 第2話 再会は突然として起こる ( No.5 )
- 日時: 2015/09/21 21:28
- 名前: ルナ (ID: MQ1NqBYl)
「ほーら起きろ斎藤〜」
日が落ちてきた夕方の喫茶店。うつらうつらしていた斎藤に美音が氷を一つ、額の上に落とした。
「うぉっ!!?」
「あ、起きた」
あまりの冷たさに思わず声をあげた斎藤は、犯人はお前かと美音を見る。
「あーびっくりした・・・・・・美音、その氷片付けとけよ?」
「は〜い、ごめんなさぁい・・・・・・」
「斎藤、ちょっとこっち手伝ってくれる?」
キッチンにいた長田が斎藤を呼び、美音はすっかり溶けて水となった氷を片付ける為に雑巾を取りに行こうとしたが、めんどくさいので楽することにした。
「雑巾持ってくるよっか早いよね・・・・・・」
美音は手に力を込める。すると水が突然空中に浮かび出し、球体状になった水は美音の手に収まった。
「よーし、片付け完了!」
美音が呟いた。その直後、扉が開き刑事の二人が顔を覗かせた。
「お〜見事に人がいないね・・・・・・」
「今日は人どれぐらい入った?」
「うーん・・・・・・私の思い出す限りでは・・・・・・」
「「いないんだな」」
森山と江ノ島が入ってきたことに気づいたのか、キッチンから長田と斎藤が出てきた。
「あ、昨日ぶりだね。森山くん、江ノ島」
「しっかしまた閑古鳥が鳴いてるんじゃないか?」
森山の言葉に確かにと頷いた長田は斎藤の方をちらりと見て、少し考える仕草を見せながら話しかけた。
「接客は斎藤に合ってなかったりするのかな?」
「確かに接客と言うと苦手な部分もあるな」
「あと、もう少し味がよかったら・・・・・・」
「お前にそう言われると自信が無くなるよ」
長田は自他共に認めるグルメ好きである。美音曰く、「グルメに関して色々すごいバカ」らしい。定休日には斎藤と美音を連れて有名店に行くことも多々あり、運が悪い(江ノ島談)ときには森山と江ノ島も巻き込まれることもある。
何年か昔、突然長田が2日間いなくなったことがあり、斎藤と美音、江ノ島と森山があちこちを探し回ったこともあった。ところが3日目に長田は何食わぬ顔で帰って来ており、斎藤が理由を聞こうとしたがすぐにやめた。聞かずともすぐわかってしまったのだ。つい先日やっていたTV番組。それを真似して2日間、海外に行っていた。これが判明したときは4人共ただあきれる他なかったそうで。
「あの時はめちゃくちゃ心配したんだよな」
「でもさー、長田くんが『おみやげー』ってニコニコしながら帰ってきたもんだから斎藤くん、怒る気力なくしたんだよね」
「いや、本当にあれは悪かったと思ってるよ」
「今度からはちゃんと言えよ? 行くなとは言わないから」
楽しく話し、笑い合って日が沈む。暗闇は誰にだって訪れる。
江ノ島は窓を見てため息をついた。
——お前は今、どこで何をしてる?
◆
暗くなった途端、皆は騒ぎだした。
見てて反応が面白い。俺には暗闇なんて関係ないけど。
遠くからサインが出た。やってもいいんだ。
ポケットから拳銃と弾を数個——いや、1つで十分かな。
「ばいばい」
それだけ言って、俺は引き金を引いた。
「あいつに逆らったのが悪いんだよ」