複雑・ファジー小説
- Re: 空の心は傷付かない ( No.1 )
- 日時: 2015/10/14 00:02
- 名前: 之ノ乃 ◆kwRrYa1ZoM (ID: uRukbLsD)
プロローグ 『アイのかたち』
胸に刺さっていたナイフをゆっくりと引き抜いていくと、傷口から血液が溢れだして鉄の臭いが周囲に充満していく。僕は手についた彼女の血液を舌で丁寧に舐めとる。ねっとりとした血の味が口内に広がっていく。これが彼女の血の味だと考えると全身が快感に震える。もっと欲しいと全ての細胞が彼女を求める。
動かなくなった彼女の顔に手を伸ばす。ツルツルとしていて気持ちの良い肌触りだ。そして大きく見開かれた綺麗な目。僕は彼女に顔を近付け、左の眼球を舌で舐めた。ツルツルとした感触。何回かその感触を楽しんだ後、ナイフで眼球を抉り出す。難しかったけどなんとか取り出すことが出来た。それを口の中に放り込む。口の中で飴玉のように転がした後、歯で噛み砕く。何度も何度も噛んでグチャグチャになった眼球をそのまま飲み込む。
それから彼女の綺麗な黒髪を撫でる。生前からみんなに綺麗だと褒められていた黒髪だ。ポニーテルがよく似合っていた。今でも鉄の臭いに混じってふんわりとシャンプーの匂いがする。いい匂いだ。手触りと匂いを楽しんだ後、その黒髪を何本か抜いて口の中に入れる。唾液を絡めて何度も何度も歯ですり潰して飲み込む。流石に喉に詰まってしまったので、彼女の傷口から溢れる血を啜って喉の奥に流す。
美味しい。最高に美味しい。どんな料理でも届かない至高の味だ。彼女を僕の身体に取り込めることを全身が歓喜している。全身の渇きが癒えていく。空っぽだった器が彼女で満たされていく。
僕の目の前には大好きだった人がいる。ずっと好きだったけどそれを言葉にできず、ずっと近くにいたのに手を伸ばして触れる事も出来なかった幼馴染の少女が。この想いをずっと伝える事が出来なくて。こんな僕じゃ彼女への想いをなんて口にしたらいいか分からなくて。素直に言葉に出来なくて。だけど、今ならこの気持をハッキリと口に出すことができる。
愛してる。愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる 愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる。君の笑顔も怒った顔も拗ねた顔も声も、髪も瞼も眼球も鼻も耳も唇も歯も舌も胸も腕も足も皮膚も骨も細胞の一つに至るまで君を愛してる。
「愛してるよ」