複雑・ファジー小説

Re: ジャンヌ・ダルクの晩餐  ( No.62 )
日時: 2019/01/02 16:16
名前: マルキ・ド・サド (ID: FWNZhYRN)
参照: ht

 ブツンと画面の映像が入れ替わる。何かが映っているが黒くどうやら暗い部屋にいるらしい。人影は確認できたが顔を見る事はできなかった。だが香織は驚く事はなく画面に映った形のある影を見上げる。

「ホウ、イイ表情ダ。私ノ判断ハ間違ッテイナカッタヨウダ」

 影が口を開いた。自信に満ちた発言をする。素顔どころか性別すら確認できない。何故なら相手は低いボイスチェンジを使用していたからだ。影は話を続ける。

「私ハブラックジョークノ指導者。『ブラックジョーカー』ト呼ベ。面倒ナラ『BJ』ト呼べ。呼ビ捨テデ構ワン」

「姫川香織です。よろしくお願いします」

「埼玉ノ基地ハ小サイガ十分ナ戦力ニナル。期待ヲ裏切ルナ。ソレハソウト何カ聞キタイ事ハアルカ?私ニ質問デキルノハコレッキリカモシレナイゾ?」

 香織はいくつか質問する事にした。何か面白い話でも聞けるかと思ったからだ。

「このブラックジョークの目的は何ですか?」

 まずは1つ目の質問をした。

「コノ国ノ秩序ヲ乱ス悪人達ヲ闇ニ葬ル事ダ」

 悪人殺し?香織は思わず鼻で笑ってしまった。そんなのが現実にいたのかと思うと呆れずにはいられない。香織の考えとは大きくかけ離れていた。自分がこれからやろうとしている事は殺人。誰にでも分かるように言えば絶対的な『悪』だ。香織は顔を悲しそうな表情に変えた。自分がろくでもない世界に足を踏み入れた事を改めて実感する。次に2つ目の質問をした。

「ここにいる人達は皆草野さんみたいな軍人なの?さっき私より年下に見える女の子がいたんですが・・・・・・」

「確カニ草野ヲ含ム10人クライハ自衛隊ダ。他ハ民間人ノ集マリダ。医者ヤエンジニア、ソレニサイエンティスト。オ前ノヨウニ戦闘スキルヲ持ツ者モイル。ソンナ彼ラハ「ソルジャーチーム」ニ任命サレル」

「ソルジャーチーム?そう言えば博仁さんはシールドチームだって・・・・・・」

「ソルジャーチームノ主ナ任務ハ戦闘。標的ノ暗殺ヤ暴動ニ参加シテ悪ト戦ウ。シールドチームハ護送ヤ援護ヲ担当スル。ソシテ最後ハエンジニアチームダ。彼ラハ武器ヤ乗リ物ノメンテナンス、道具ノ開発等モ担当シテイル。チナミニ医療関係者モコノチームダ」

 最後に香織は1番気になっていた質問をする。

「さっきから言おうと思っていたんだけど、何故組織の指導者であるあなたがわざわざ一般市民の私と面会をしようと思ったんですか?」
 
 その興味津津の言葉にブラックジョーカーはすぐには答えなかった。今の発言が図星だったかのように沈黙してしまった。香織は相手が口を開くのを待った。間を開けてブラックジョーカーは口を開く。

「オ前二カナリノ魅力ヲ感ジタカラダ」

 そう堂々と言い放った。

「は?」

 香織は誰でも言いそうな一文字の言葉と当然の反応をした。予想の的中に思わず苦笑いしてしまった。

「冗談デモオフザケデモナイ。紛レモナイ本心ダ」

 香織は表情を変え巨大なスクリーンを睨みつけた。腕を組み首を傾げる。文句を言った。

「ユーモアで言ったつもりなんでしょうけど今は口説かれたい気分じゃありません。私のどこに魅力を感じたんですか?」

 ブラックジョーカーは今までより真面目な口調で答えた。

「何故カハ知ラナイガ、オ前カラハ清ク正シイオーラヲ感ジル。マルデ『ジャンヌ・ダルク』ノヨウニナ。聖女ニ出クワシタ気分ダッタ。写真デ目ニシタ途端、ソレハ伝ワッタ。ダカラ期待デキルト踏ンダ」

「・・・・・・」

 香織はこれ以上は何も言わなかった。