複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.23 )
- 日時: 2015/11/12 11:35
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
彩都さん……滑らせるて……強い…。念力みたいなのも滑らせることができたら……チートっですね。時雨さんでもお手上げですよ。
仮面っていうアイデアは無かったです。そうすれば使えないですしね。
そこまでストーリーが進むか怪しいですが、参考にします。
続きです。
あーっ! やっと地理が終わったー!
私こと平野平子は夜の道を歩いています。別に怪しい事をしたって訳ではないって訳ですよ?
単純に宿題を緋奈子ちゃんの家でやってただけですよ。
まぁ宿題は終わりましたよ。今はまだ七月中ですよ……ギリギリ。
夜道を歩いていてもだいたいの建築物に灯りがついているから暗いって訳では無いんですよね。
街を突っ切って行くと私の家に近いのでそのまま街を突っ切って帰ります。
でもやっぱり街ってうるさいものですよね。耳を済ませば色々な音が聞こえます。
『ラ〜ラララン、ラララララ〜ラララン、ラン!』『パラッパッパッパー』『こちら七千百円になります』『○○○○○〜♪』
……耳を済まさずとも聞こえました。
やかましい中を歩いていく頃には既に時計は7と6の数字を指していました。
だいぶ静かになりましたね。
私は街を抜けて住宅街を通っています。歩くの疲れました。
カラン。と突然音がなりました。
見ると貯水施設の所に缶コーヒーの缶を落とした人がいました。
大丈夫ですか?
「ああ、ありがとう。……名前は?」
缶を拾って渡すとその人から名前を聞かれました。
質問してきた人は超能力があるようで金色の髪をしていました。珍しいですね。時雨さんよりちょっと長いボサっとした髪です。顔は暗くて分かりにくい……。
答えない理由も無いので名乗ります。不審者さんじゃないといいなぁ。
平野平子と言います。
「平野……平子?」
するとその人はいきなりブツブツと呟き始めました。
え? どうしたんですか?
するとその人はふぅっ、と溜め息をつき、
「済まない。オマエに罪は無いんだ」
何を言ってるんですか? と発声しかけて、それは強制的に終了した。
ちょっとぉ! ああああ! その人は私の手を握って思いきりジャンプしましたって訳ですよ!
その時は重力が一瞬無くなった様に思えました。
空中でその人は私の手を放します。え? 嘘ですよね?
その人は私をおいていってどんどん加速しながら落ちて行きます。
私が落ちる先は……貯水施設?!
先に落ちた彼は水に派手に着水するのでは無く、急に水面ギリギリで静止しました。
次の瞬間、彼から大量の電気が発生しました。
バヂリバヂヂババリ!
キャアア!
こちらに向かってきた幾つかの電気に当たり感電してしまいます。
気絶はしないものの手足が痺れてしまったって訳ですよ。
そして私は再び驚愕しました。
貯水施設の水が、全て凍り付きました。えええええ!
彼は端でちょっと氷に触れているだけです。
そして彼から、再び大量の電気が貯水施設に当たらないよう放たれました。
そして私にも再び数本当たりました。
もう半身が動かないくらい痺れている私は、何の抵抗も無く落ちていきます。
そして、
バギィリィーン! ドッボーン! と氷が割れた音と着水した音を聞きながら私の意識は薄れて行きます。
もはや体も痛いどころの話しではありません。半身は動かす事さえできません。
ここまでたった五分もかかっていない、まるで暴風が一瞬で吹き飛ばす様に倒されました。
ははっ……これは……季節外れの暴風に……遭遇した……もの……ですよって……訳ですよ……。
そんな事を思いながら私の意識は飛んでいった。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.24 )
- 日時: 2015/11/13 21:57
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
……何処?
「病院の病室さ」
私の誰に回答を求めた訳でもない質問に答えたのは見知らぬ一人の男性のだった。
病室……ですか。
気になるのは……左半身の感覚が……無い。
「……君は左半身が麻痺している。まぁ3日や4日で治る程度だけどね」
そうですか……。
「それより君は一体どうしたんだい? 聞いた話によると君は凍り付いた貯水施設の氷と共に浮かんでいたらしいじゃないか。夏に水が凍り付くとはね……。まぁ物理法則をある程度迄は無視できる超能力があってこそかな」
すいません。はっきり言って私自身何が起きたか分からないって訳ですよ。私はそう思いました。だってですよ。急に腕を掴まれて、上空に放り出されて、何故か電撃を撃たれて、氷の張った水面に落とされたんですよ? 理解不能ですよ。
だいたいあの能力の訳が分かりません。確かに人は2つの能力を持つ人もいます。大半はその内の一つが開花するともう一つは消えて無くなるんですけど……時々2つの能力が同時に開花する人がいるんですよね。ですけど……彼が行ったのは……高跳躍、空中静止、発電、そして冷却……高跳躍と空中静止が念動系の能力と考えれば……いや発電と冷却が結びつかない……。
「兎に角、君は後3日は歩行装置を付けるんだよ。今日で退院してもらうからね」
ちなみに医学が能力の発現と共に発展したこの時代では入院という行為はほとんどありません。一日で、だいたい治して、後は薬。酷いときは入院。これが今の常識です。
歩行装置というのは……要するに足に機械を付けて歩行をアシストする機械のことです。
私は今日の20時ごろに退院予定らしいです。
……ま、生きているだけマシって訳ですよ。
『おいガキ、平野平子の死亡が確認されていないぞ。ちゃんと殺れ』
なんでオレがこんなヤツの言う事を聞かなきゃならない。
金髪で至って平均的な髪の長さではあるものの、髪は少しボサッとしている。が、それが自然に見えているのがこの青年の特徴である。
この金髪の青年はある研究員と、里見甲人と通信で会話をしてこんな事を思った。
この青年の名は風折影雪。日本でも数少ない[〜〜を司る能力]の持ち主である。もっとも影雪の能力はそれだけではないが。
「……そこそこ高い所から落としたしアイツにだって直接電撃を当てた。凍った水に落としたし死ぬと思ったんだがな」
そう、この青年は平子を襲った。が、しかし、この青年は手加減をしている。この青年は本来人を襲って喜ぶ狂気など持ち合わせていないはずなのだから。
『ならなぜ直接冷凍しなかった。それに周りの物の力を奪えば簡単に脳ごと吹き飛ばせただろ』
里見はできない様な事を言っている様にも思える。が、実際この青年にはできてしまう。それほどの能力を持っているのだ。
「……後味が悪いんだよ」
『煩い!』
里見は激怒しつつも言葉を続ける。
『あのガキを殺せ!さもなくば……』
『お前の妹を存分に辱しめて精神的にも肉体的にも……殺してやる』
「ふざけているの、か!」
今度激怒したのは影雪だった。いまにも携帯電話を握り潰さんとばかり手に力が入っている。
『だったらさっさと殺せ!』ブツッ。
ツー、ツー、ツー、ツー、ツー、と携帯電話がなり続ける。
「あのクズヤロウがぁぁぁぁ!」
影雪が地面を踏んだ瞬間、大量の電気が辺りに飛び散った。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.25 )
- 日時: 2015/11/14 17:35
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
私こと平野平子はただ今ビル群の中を歩いています。左足には歩行装置という名の機械がついていて、動く度に『ウィーン』とかが鳴っています。実に煩い。
私がてくてくとビル群を歩いていた時でした。
「平ちゃ〜ん!」
横断歩道の向こう側で親友の紡美ちゃんが手を振っていました。
遅れて緋奈子ちゃんも登場。
青信号(信号機は今でも二色と三色だ)になると二人が駆けてくる。
どうしたのー?
「どうしたもこうしたも無いよ! 大丈夫?!」
「いや左足の歩行装置を見れば一目瞭然だと思うのは私だけなんでしょうか?」
あー大丈夫……なはず。
「何で疑問系なの?!」
「大丈夫じゃあ無いですよね」
いや、ちょっとあってね……。
「「ちょっとじゃそんなにならないよ(なりませんよ)!」」
……説明してもいいんですけどねぇ。あ、面倒だしKM行って話そうよ。財布ある?
「いやあるけど……」
「まぁ立ち話もなんですし」
と、二人の了承を得たためKMに向かいます。KMは後々説明するんで。
「と言う訳で私達は今三人称視点にしつつもKMにいます。KMと言うのは某ハンバーガーショップと某フライドチキンの店が合併したと思って下さい。あ、最終的には赤白のピエロがひげのおじいさんに負けて今のマスコット(?)はカ●●ルです」
と平子は先程の宣言通りKMについて語った。最初の文はどうでもいい事だ。
「急にどうしたんですか?」
「何でも無いよ」
因みに今の独り言に対して緋奈子はそこそこ普通に対応していたが紡美はドン引きしていた。
「え〜っと私はマ●●シ●イクにしようかな。banana味の」
「私はアイスコーヒーにします」
「私は……アイスコーヒーかな」
「え」
平子はそれほど子供と言う印象が無いが大人びた印象があるわけではないのでシェイクでよし。緋奈子は大人びた印象があるためにアイスコーヒーでOK。だが、ぶっちゃけ中学校2年に見える(多く見積もっている)紡美は二人の中ではパンケーキをモキュモキュと食べている印象なのだ。だから平子は『えっ』と声を出してしまった。(緋奈子は黙っている……笑っている)
「え? 私が頼むと意外?」
「「うん(ええ)」」
「酷い……」
そして三人で顔を合わせてふふっと笑う。今のこの三人は冗談の範疇で話しているに過ぎない。が、少し前はそれほど仲も良くなかった。いや、むしろ悪かったのだ。最も紡美と平子は仲がそれより前から良かったが。
だからこそだ。平子はこの親友達を大切に思っている。友情を大切にしている。だからだ。
「ごめん。ちょっとトイレ」
「あ、うん」
そういい平子は席を離れトイレ……ではなくある席に行く。
そこの席に座っているのは金髪の少年ーーーーー影雪だ。
「すいません」
「……ああ、オレの事か……ってオマエは……」
「すみませんが、ここで暴れるのはよして貰いたいです。ここには親友がいるので。……私に用があるならあそこに行きましょう」
平子が影雪に話しかけたのは、自殺行為の為ではない。親友を守る為でもあるのだ。平子の親友の緋奈子は[物体を移動させる能力]という能力を持っている。
この能力はそこそこ強力だ。相手を移動させて壁にぶつける事もできるし物をぶつけたりもできる。飛んできた物を明後日の方向に飛ばしたり自らを動かす事もできる。緋奈子はいつも投げナイフを持ち歩いている。理由は簡単。投げナイフを能力で相手の所まで移動させる事ができるからだ。
つまり相手が止まっていれば絶対に当たる。落ちたり壁に刺さってもそれを相手に向かって移動させたりもできる。
けれども、緋奈子でもこの店が倒壊して無事であるとは限らない。ましてや黒髪の紡美にはなすすべなどない。
だから、ここではなく、別の場所にしようと平子は持ちかけている。
影雪は食べ終わったハンバーガーの包み紙をくしゃくしゃに圧縮しながら答えた。
「ま、オレもここは気に入ってるし、その提案に乗る」
平子は黙って礼をする。
影雪はくしゃくしゃに圧縮した包み紙をゴミ箱に投げた。
そのゴミは、丁度ゴミ箱に入った。
「じゃあ行くか」
「はい」
「あれ? 緋奈子ちゃん」
「どうしました?」
「お金」
「え?」
「平ちゃんの所にお金が置いてあるよ」
「? どうしたんでしょうか」
「ここですか……」
「あんまり人がいねーしな」
平子が影雪に連れて来られたのは何処かの空き地。近くには舗装された川が流れていてコンクリートが辺りの地面を染めている。
平子は影雪の方を向き、
「はじめまして……では無いですね。もう知ってるでしょうが私は平野平子です」
「どーもごていねーに。オレは風折影雪。司る能力者だ」
司る能力者はこの日本に十人程度いる。この称号は能力が強力であると共にある権利がある。
「大抵の事件なら事件扱いされない……全く、権利の乱用じゃないですか」
次の瞬間。平子に強烈な暴風が襲いかかった。ただの暴風ではない。一つの棒に絞られたような暴風だ。
力は収束されると強くなる。平子は暴風を横に思いきり跳んで逃げる。
「オマエとの会話なんざどーでもいい。オレはお前を……したくはねーが始末するだけだ」
そう言っている影雪の目に、冗談の雰囲気は、無い。最も影雪は最初から襲って来たが。
「そうですか……ならお説教ですよ」
負けじと平子も睨み返す。
金色の獅子と、白い兎。
季節外れの暴風と、絶対的な平等。
この二人が、激突する。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.26 )
- 日時: 2015/11/16 22:44
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
「ほらよ」
影雪が拳を空気に向かって振るう。そして、拳が急停止する。
拳が急停止した瞬間、影雪の腕から一本の電撃の束が放たれた。
どういう原理か分かっていないものの、平子だって伊達に不良ないしチンピラに絡まれている訳ではない。電撃を右に移動して避ける。
そして影雪に近づこうとーーーーしたところだった。
左足に付けている歩行装置が動かなくなった。
「ッ!」
恐らくは先程の電撃によって発生した磁場によって狂わされたのだろうと理解しつつも平子は倒れた。
「……やりたくねーんだよな。でもしかたねーんだ……分かってくれとは言わねーよ……ただ、これは理解してくれ」
そっと地面にしゃがみこんで平子と顔を合わせる。
「オマエを殺す事なんて、オレからすれば蚊を潰すことと同義だ」
否定できない。
平子はそう思った。
相手は、司る能力を持った者なのだ。所詮は操る能力ですらない平子が勝てる見込みなど少ない。と平子は考えた。最もその中で勝てる見込みが最も多いのは平子なのだが。
しかし、それでも平子は諦めない。たとえ足が動かずとも、片手片足しか使えずとも、平子には生を諦める等と言う感情は水素原子一つ分すら無かった。
その平子の目を見て影雪は思う。
(……オレも前はこんな目をしてたんだな……いつからだっけか、こんなにオレが腐っちまったのは)
元々、影雪だってこんな事はしたくない。だが、彼にも譲れない物がある。
一瞬悲しい顔をした影雪に平子は問いかける。
「貴方は可哀想な人って訳ですよ……」
平子はその言葉を、影雪にぶつける。
影雪は見抜かれてしまったことに動揺し、動揺したところを同情されているという感情が出てきて、彼は惨めさを感じ感情を爆発させる。
要するに、情けをかけられてキレた。
「黙れ!」
両手で平子の首を閉める。
ぐうっ。と平子は苦悶の声をあげる。
「オマエにオレの何がわかる! 何が理解できる! オレが可哀想? そう思うならオレを救って見せてくれよ!」
首を絞められながらも平子は声を絞り出す。
「……私には理解もできないし、救えるかもわからない。何より貴方の問題自体が分からない。ただ、一つ言えるのが」
平子は無理矢理右手だけを動かして合掌の形を作った。今までの様に綺麗には鳴らない物の、しっかりと能力が発動した様だった。
「何ーっ! 力が……!」
「悪いけど………このままじゃあ勝敗なんてつかないって訳ですよ」
平子は拘束を解いてこう言う。
「ここは、引き分けとして、後日しましょうよ」
「誰がそんなもの……と言いてーが、能力が使えねーんだから仕方がねーな」
影雪は後ろを向いて何処かに行く。
「え……ちょっとー! 置いていくなー!」
平子の悲鳴がむなしくコンクリートの上に響いた。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.27 )
- 日時: 2015/11/18 18:07
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
「スバラスバラ! ハレルゥゥゥヤァァァァー!……はぁ」
つい先程まで見ていたアニメのセリフを叫びながら平子は手足をだらんとして死体の様にソファーに倒れ込んでいる。
あれから数日、もう左半身の障害は消え失せた。
「ギャストラァアこそが世界一ィィィィ!」
そして平子はまたアニメの台詞を叫ぶ。今度は何個か混ざっているのでカオスになっている。
「屑は屑に! ゴミはゴミに! 元の座標にカムバックしろ〜」
もはや何が言いたいのか分からない。
平子が何故こんな事をしているかと言っても答えは単純である。
宿題が終わって暇なのだ。
生憎平子は自主学習を七月(あと二日で八月だが)からやるような生徒ではない。何より部活もない帰宅部が夏休みにやることなど宿題以外にはあんまりないのである。
プルルルルルルル。
「もしもし」
電話がなったので受話器を取る。受話器から発声された声は以外な人物のものだったが。
『やぁ。生きているかなぁ? 平野平子』
この時の平子の心境はこうである。
(え? この人誰だっけ? 風折影雪でも無いけど……え。ちょっと、ヤバいよ。この人悪役兼知り合いズラして何かペラペラ言ってるけど思い出せない。やだ。この人可哀想)
……可哀想な電話相手である。
『ーーその気になればこの里見直々に殺しに行ってやろうか?』
(……えーっと、里見? ああ、あの余裕ぶっこいて能力教えてその上で負けた、さとみこうとさんじゅうはっさいか)
平子の中での里見の評価は底をついていた。
『ーーそれで本題だが今日B-6地域の工場跡地に来てみたまえ』
「お断りです」
(何で私がそんな人口がほぼ0の工場地帯に向かわないといけないんですか)
ここら辺は縦を1~9、横をA~Kまでの記号によって地域を分けている。(A-5、B-5とかK-7みたいな感じ)因みにここはD-4である。
『ふむ。ではこうしよう』
「はぁ?」
『君の住んでいるD-4地域で風折影雪を暴れさせよう」
(何でこいつがそんなことできるんですか)
『ああ、風折は俺の手駒だ。事実数日前に君は戦い、その前にも襲われている』
(ここまでくるとこいつは嘘をついて無いって訳ですよ)
『で? どうする?』
「……脅迫しといてそれは無いって訳ですよ。ただ』
声を少し落として平子はこう呟く。
「私の友人に手出ししたらただじゃおかないって訳ですよ」
『ふむ。善処する』
そこで会話は切れた。
受話器を置きながら平子はため息をつく。
(結局、平穏な日々は続かないって訳ですよ……)
『おい、平野平子を呼び出しておいた。座標はB-6だ』
「………」
『おい、聞いているのか!』
「……分かってる。B-6だろ」
『ならいい。いいか、これが最後のチャンスだからな……お前にとっての、な』
ツー、ツー。と会話が切れた。
そして風折影雪は携帯電話を耳から外し、ズボンのポケットに突っ込む。
(いつからだっけ……オレにこんな能力がついちまったのは)
そして影雪は地面を軽く踏む。踏んだ地面ーーアスファルトは少し熱くなった。
(最初にこの能力を使ったのは……妹の為だったか……)
次の瞬間、アスファルとからは熱気ではなく冷気が出てきた。
そして影雪の周りを眩い光が包み込む。
(そして今も妹の為か……はっ。オレはシスコンかよ……)
そうやって影雪は自分で自分を笑おうとする。
が、そんな気分になれないのは当たり前の事だった。
「……行くか」
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.28 )
- 日時: 2015/11/21 22:00
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
「……まさかあいつが裏で手を引いていたんですね」
平子は目の前の人物に呟く。
「オマエにとってのアイツが誰かは知った事じゃねー」
それに答えたのは影雪だった。
「……どちらにしろ私は争いたくないんですよね……」
「奇遇だなー。オレもそうなんだよ。人殺しなんてしたくねーよ」
影雪は辺りに散らばっている鉄パイプを見ながら呟く。
「でもな……オレには譲れない物があるんだよ」
「だからって私は死にたくない」
「て事は交渉決裂だな」
「そうですが……質問させて下さいよ。何で里見なんかの言いなりになっているんですか?」
「……オマエさー。大切なヤツが人質に捕られて脅されたらどうする? オレは従った。それだけだ」
「そうですか……納得しました」
「そうか…、よ!」
影雪が鉄パイプを蹴り飛ばす。
鉄パイプは高速で平子に迫る。
(普通蹴っ飛ばしただけであんなに飛ばないしスピードもつかないですし。何より鉄パイプが曲がらない訳がないって訳です)
平子は真っ直ぐ水平回転しながら迫る鉄パイプをしゃがみこんで回避する。
「チッ」
今度は回転せずに四本の鉄パイプが飛んできた。
しゃがみこんだ状態から前方向に飛び込む。鉄パイプは平子の周辺にドス! と音を立てて突き立った。
「……遠距離攻撃は苦手って訳ですよ」
平子は鉄パイプを掴み立ち上がろうとーーーー
「冷たいっ!」
して止めた。鉄パイプが異様な程に冷たかったのだ。
(これもあの人の能力ですか?)
平子は立ち上がりながらも影雪の様子を見る。そして絶句した。
影雪は、巨大な立方体のコンテナを片手で持ち上げていた。
その時少し気温が下がった様に感じた。
(これが冷や汗って奴ですかね…ハハハ)
そして平子は後ろを向いて。
(逃げる! あれを喰らったら挽き肉になっちゃうって訳ですよ!)
回れ右してダッシュしていく平子を見ながら影雪は能力を行使する。
気温から熱を奪ってコンテナに掛かる重力を相殺するのを止めて、今度はコンテナから大量の熱を奪い、それを横方向の運動エネルギーに変換する。
急激に横方向の運動エネルギーを掛けられたコンテナはそのまま吹っ飛んでいく。
平子が後ろを向いた時、既にコンテナは迫っていた。
「ああ!」
平子は一か八か思いっきりコンテナに向かってスライディングをした。
ビュオオ! と頭上をコンテナが高速で通り、髪が風圧で激しくなびく。
「危ないじゃないですか」
「殺す為にやってんだ」
影雪が次にとった行動は、足を上げて地面を踏みつける事だった。
地面に付いた時、本来鳴る筈の音はならず、代わりに眩い光が平子の目を射抜いた。
「ぐっ! 眩しい!」
平子は目を閉じるのが一瞬遅く、そのまま視界が真っ白に染まる。
(全く見えませんよ!)
顔を振ったりして見るものの全く視界が回復する傾向は見られない。
次の瞬間、
ガッ!
平子の左肩が何か硬い物に殴りつけられた。
そして、
ボギャリ。
「ぎゃあっ!」
平子は痛みの余り右肩を押さえて転倒した。
やっと、今更、視界が回復する。
影雪がゆっくりと近づき、平子のすぐ近くに来て、平子を見下ろす形になる。
「……貴方はどんな能力を持っているんですか……」
平子は純粋にこれが気になっていた。
少なくとも熱を奪う、力を上乗せする、力を消す、電撃を放つ。これ等が影雪が行った事だ。
影雪は答える。
「オレの能力は[伝導を操り][エネルギー変換を司る能力]だ。
平子は疑問を浮かべる。
「簡単に言うとだ。オレはまず、触れた力の種類を変える事ができ、それを自由、もしくは強制的に伝える事ができる」
つまりこういう事だ。
例えば、この能力で強い力を出そうとする。
その時、殴る瞬間に気温から熱量を奪い取り、そのエネルギーを運動エネルギーに変換してそれを拳に伝導させる。これによって奪った熱量分、拳の運動エネルギーは追加される。
先程の光は、地面に運動エネルギーが伝わる寸前で運動エネルギーを光エネルギーに変換する事でフラッシュを起こしたのだ。
冷却は、熱量を瞬時に過剰に奪い取り一瞬で凍らせたのだ。余ったエネルギーは電気エネルギーに変換して空気中に伝導して発散していた。
[伝導を操り]で力を行き来させ、[エネルギー変換を司る]で、エネルギーを自在に熱量、光エネルギー、運動エネルギー等に変換する。逆にそれらを奪う事もできる。
この様な事ができるのが影雪の能力。広く応用が効き、多種多様な攻撃ができるのだ。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.29 )
- 日時: 2015/11/22 23:20
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
「もー能力も教えたし……終わらせるか。すまねーな」
そう言って影雪はゆっくりと手を平子に近付ける。
その手は、体温を一気に0度にする事も可能な悪魔の手。
平子はそれを右腕で払い除ける。この時砕けた平子の右肩が悲鳴を上げたのは言うまでもない。
平子はそのまま地面を転がり激痛をこらえつつも距離をとった。
「あーあ。払い除けちまったせーで」
影雪は平子を、正確には右腕を指差し。
「凍傷しちまったな。右腕」
平子の右腕は、真っ白い何かに包まれていた。それは凍り付いた毛や水蒸気が凍ったものが引き起こした現象だが。
右腕が完全な木偶の坊、いや木偶の棒になった平子は、何故か笑みを浮かべていた。
(何故笑ってられんだ? もう狂っちまったか?)
平子は左手を右手にぶつけてギリギリ合掌のポーズをとる。先程、凍傷は負ったものの肌への接触は成功していた。
そして平子は影雪との距離をつめはじめる。
「殺されてーのか?」
能力が無くなったとは知りもしない影雪はさっきまで、過去形で悪魔の手だったものを平子に近付けた。
そしてそれが平子に当たる。
影雪は熱を奪うことを命令する。
が、しかし、平子によって無効にされた今、その命令は意味をなさなかった。
そしてかえってきたのは、平子の拳だった。
バギィ!
直撃した左ストレートの威力は助走をつけているだけあってそこそこな力があった。
ドサッ。
地面に影雪が倒れ込む。そしてそこにポケットから取り出したスタンバトンを普段とは逆の左手で持った平子がスタンバトンを影雪の首筋に当てた。
「私の、勝ちですよね」
平子は息切れしながらそう答える。
「そーなっちまったな」
影雪はどうでもいいとばかりに適当に返した。
「風折影雪さん。貴方の事を教えて下さい」
「……妹が人質にとられた。交換にはお前の遺体を差し出せって言われた。だから……」
「私を襲った」
「そうだ。そしてそれができねーと妹は殺される」
「……ひとつ質問ですけどいいですか?」
「なんだよ」
「私、思い付きましたよ。里見以外が助かる方法」
平子はこの時悪魔の笑いをしていたそうだ。
ブー、ブー、
「もしもし」
『オレだ。風折だ』
里見は単純に言うと暇していた。そろそろ風折の妹を陵辱でもしてやろうかと考えていた時、その電話がなった。電話相手は風折だった事を知り、脅迫についての話をした。
『平野平子はーーーー死んだ。画像も送った』
里見が画面を見ると一枚の画像が張られていた。開いてみると、右腕が白くなり、うつ伏せで倒れ、幾つかの部分が血で染まっている平子の画面だった。
里見はこれを見て、歓喜した。
元々里見が平子を恨んでいたのは自分に勝ち、自分を見下してきた。そんなつまらない理由で人殺しをさせるのが里見だった。
「分かった。遺体を持ってC-7までこい」
『分かった』
ツー、ツー、
電話を切ると里見は部屋を移動した。
その中には一人の女性がいた。
顔立ちは子供と大人の間あたりの顔立ちで整っている、髪型は長い腰の下迄あるポニーテール。体型は平たい感じではあるものの年相応といった感じである。
「行くぞ!」
「え…?」
この少女は数週間ほど監禁されていた。だからもう外には出られないと思い始めていたのだ。
「さっさと立て!」
とは言うものの事実彼女はそこそこの拘束を受けている。
少なくとも手錠と手錠に繋がっている首輪は一般人がつけているものでは無かった。
「お前も解放してやる」
これは勿論の事大きな嘘である。事実、里見はこのあと影雪を消して雪花を自分の所に再び監禁する予定なのだ。
が、雪花は、風折雪花はそれを知らない。言われるがままについていき、車に乗せられる。
里見は現在指名手配中ではあるが、交番や特殊警察支部や本部の近くにいかなければいいだけである。
C-7を選んだのも、ここが一番の過疎地域だからである。
里見は車を走らせC-7に向かった。
次で終わるかなぁ……この章。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.30 )
- 日時: 2015/11/24 22:17
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
キィィィ!
車のブレーキ音が響いた。
「遅いじゃねーか」
「少し離れていた」
車から出てきた人物は里見。それに対面しているのは影雪だ。影雪の肩にはぐったりと力尽きた様になっている平子。
「ほらよ。そいつが平野平子でいいんだな?」
ドサッ。影雪は平子の体を地面に転がす。平子はうつ伏せの姿勢のまま動かない。
「間違いは無い」
そう言いながら里見は平子の頭を踏みつける。しかし平子が無反応だった事でそのまま蹴って適当に転がした。
「じゃあとっとと雪花を返せ」
「慌てるな。まだ午後3時だぞ」
里見が乗ってきた電気自動車のドアが里見が触れた事により自動で開く。
現れたのは影雪の妹。風折雪花だ。
「風折影雪。いままでご苦労様。おかげでクソ生意気なガキを消せた」
里見は白衣の胸ポケットに手を突っ込み。
「ありがとう。だからもう死ね」
ガチャリ。と、拳銃を取り出した。
「……市販の護身銃は相手の意識を刈り取る程度の威力しか無いはずだ」
「そんなものではない。おっと能力は行使するなよ? 愛しいはずの妹の命が惜しければの話だがな」
里見はニヤリと笑いながら雪花のこめかみに銃口を当てる。
「……ああ……うう…」
雪花は恐怖のあまり声が出ていない。
「止めろ! 雪花に手を出してんじゃねー!」
即座に影雪は周囲の気温を少し下げて、その熱を運動に変換し、空気中に発散する事により暴風を起こした。
「ほう。それでは君が……死ぬかい?」
今度は影雪に銃口を向ける。
「兄さん!」
「雪花……。おい、雪花と話をさせろ。一分でいい」
「まぁいいだろう。精々お別れ話でもするんだな」
里見はそう答えると再び銃口を雪花のこめかみに当てた。
「兄さんは死んじゃだめだよ! 私よりも必要とされてるんでしょ! 十人程度しかいない超能力者の一人なんでしょ! なら私の為に命を捨てないで!」
雪花の叫びは、影雪にしっかりと届いた。どれだけ自分の事を思っていたかも影雪は理解できた。
だからこそ。
「……オレを過大評価しすぎだ。オレの代わりなんていくらでもいる。そもそも妹一人守れないような奴が偉い訳ねーだろ」
「でも! 兄さんは「時間だ! どっちが死ぬ!」
雪花の言葉を里見が遮る。
「オレだ」
それに答えたのは影雪。そして銃口を向けられたのも影雪だった。
「では死んでもらおう」
ドォン! 銃弾が銃口から吐き出された。
その銃弾は深くーーーー地面を抉った。
銃が壊れた訳ではない。影雪の能力でも無い。雪花の抵抗でもない。
誰かが、里見の肩を押した。ただそれだけだった。
里見は押した人物を特定しようと振り替える。
里見の視界に入ったのは。
左手を握り、拳を構えていた平子だった。
「き、貴様はーー!」
言い終わる前に、平子の拳が放たれた。その拳は、里見が音速で逃げるよりも早くクリーンヒットする。
顔を押さえてよろよろとした里見は銃口を平子に向けた。
里見はためらいもせずに銃の引き金を引くーーーーことはできなかった。
引き金を引く直前、小石にしては一回り大きいサイズの石が里見の後頭部に直撃した。
そのままうつ伏せになる様に倒れた里見に銃の狙いを定める術は無い。
「さっきはよくも……好き勝手やってくれやがったなぁ……さあぁァァァとおぉォォォみいぃィィィ!」
影雪は周りの力、気温、温度、日光、重力、辺り構わずかき集めた力の集合体を運動力に変換しそれを空気の砲弾として上から垂直に里見にぶつける。
「グァァァ!」
背中に押し潰される様な衝撃を感じた里見はそこから逃げようと能力を行使しようとした。
が、できなかった。
それもそのはず、さっきの拳で里見は既に平子に触られていたのだ。今平子は合掌のポーズをとっている。
「さぁァァて。里見ぃィに問題です」
影雪は両手をあげて言う。
左手を下げ、
「絶対的なまでに冷却する右手と」
左手をあげて右手を下げて、
「絶対的なまでに加熱する左手」
スタスタと里見に近づき、
「どちらをオレは使うでしょうかぁァ?」
里見は地面を這って逃げようとする。
影雪はそんな里見にさらに近づき。
「答えはぁァ……絶対的に蹴り飛ばす右足だぁァ!」
辺り一帯の地面を冷却した影雪はそれを運動力に変換し、右足に伝導する。
次の瞬間、ドゴグギリ! と衝撃の音と骨が折れる音が重なった効果音が響いた。
そのまま里見は吹っ飛び、ちょうど乗ってきた電気自動車に激突した。
が、運がよかったのか、気絶しておらずそのまま電気自動車に乗り込み、そのまま走り出した。
影雪は後を追う……がすぐに止める。無駄だと判断した。
「悪いな。取り逃がした」
「いいですよ。充分痛めつけましたし」
そして平子は一言。
「救急車を呼んでくれません?」
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.31 )
- 日時: 2015/11/25 22:25
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
第二章、季節外れの暴風と絶対的平等。エピローグ。
「……暇」
病院の病室のベット上でそう呟いた人物は腕から肩を何かしらの器具で固定していた。
「……暇です」
呟いた人物はそう、平野平子である。
彼女は入院四日の重傷(この世界の感覚では)だった。
「……さっきまでは退屈しなかったのになぁ……」
そういい平子は数時間前の記憶たちを引きずり出した。
私の所に最初に来たのは両親を除けばあの二人でした。
「平ちゃん! お見舞いに来たよ!」
「……平さん……もう少し落ち着いた行動を取りましょうよ」
元気いっぱいの紡美ちゃん。さりげなく私をディスる緋奈子ちゃん。
二人とはトランプで暇を潰した。
次に来たのはあの超人さんでした。
「よう平子。あ、これ見舞いの品な」
物理的に殺されても物理的に死なない様な人。最強の無能力こと時雨さん。
「時雨さん久しぶりです」
「いや……だいたい二週間ぶりか」
そのあとは時雨さんと話をした。
「そう言えば時雨さんってスタントマンの前は何をしてたんですか?」
「特殊警察」
この話は胸の内にしまって置くことにした。
次に来たのは……ちょっと謎のリア充オーラを出している風折ブラザー…いやシスターズ? …まどうでもいいや。
「ありがとうな。平野平子。お前のおかげで雪花を助ける事ができた」
「ありがとうございました。えーっと……」
「タメ口で良いよ。私の事は平子って呼んでよ」
「……オッケー。平子ね」
雪花ちゃんとは友達になれる気がする。
そんな訳で平子は暇だった。
ふと平子は思う。
今年、何処にも遊びに行ってねぇ……!
平子はそんな事を考えながらも入院期間を過ごした様だった。
あとがき+説明
平子「さて、今回も無事終わりましたね。もう一人は影雪さんにお越しいただきました」
影雪「どーも。風折影雪だ」
平子「まず……この章は一章で私に恨みを持った里見が影雪さんを使って復讐する。影雪さんは雪花さんを人質にとられて逆らえなかったんですよね」
影雪「ああ、アイツとは相性が悪くてな」
平子「て言うか影雪さん。貴方の能力がちょっとわかりづらいですよ。理解できた読者さんが何人いたか分かんないですよ」
影雪「しかたねーだろ。そういう能力なんだからよー」
平子「里見をボコったらスカっとしました」
影雪「それはいいが、オマエこの……コイツの説明ひでぇ……時雨って奴と何話てたんだ?」
平子「過去編ですよ」
影雪「ああ、あの続きがかきづらくなったら投稿する予定のアレか」
平子「さて、次は……番外編か過去編か続きですね」
影雪「オレ的には過去編は嫌だ。出番が0だし」
平子「……つーかこの章やけに薄っぺらく無いですか?」
影雪「別に新キャラを出したかっただけだからだろ」
平子「あ、そう言えば能力募集中ですよ」
影雪「能力募集中! とか題名に入れればいいんじゃねーの?」
平子「さぁ? あ、能力の募集は前回と変わって無いです」
影雪「一人何個までとか制限は今のところ無いからな」
平子「さてと、次の更新は……明日かも知れないし一週間後かも知れません」
影雪「だから次回予告はしないでおく(予定が建ってないとか言えない)」
平子「それでは次回もお楽しみに」