複雑・ファジー小説
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.32 )
- 日時: 2015/11/28 15:24
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
第三章、存在の意味と正義の無能力
青年が、グラウンドに立っている。
青年の目の先には、暴走している自動自転車。青年こと十橋時雨はその自転車をじっと見つめる。
自転車との距離が、目前に迫る。が、時雨は避けようとしない。
ガシャァン! 時雨と自転車が激突し、時雨は後ろに5m程吹き飛ばされる。
キャー! と悲鳴をあげる生徒もいれば心配する生徒もいた。
だが、時雨は何事も無かった様に立ち上がってこう言う。
「暴走した電動自転車は軽く大人を吹き飛ばす位の威力があるからな。ちゃんと安全装置を付けるんだぞ」
今日、時雨は本職であるスタントマンをしていた。暴走した自転車への対処と言う名目で。
今日は自転車だから楽だったな。
俺こと十橋時雨はそんな事を呟いた。
俺はスタントマンをしているが、自転車は楽な部類だ。自動車。バイク。時々能力事故なんてのもあるその中ではやっぱり自転車は簡単な方だ。
夜道を歩く俺は今は歩いている。何故歩いているかと言うと雨が降っているからだ。カッパを着れば? と思うかも知れないが、俺はただ、近所のスーパーに買い物に行っていただけなので、わざわざカッパを着るより歩いた方が楽だと判断した。証拠に俺の傘を持っている右手の反対の左手には買い物袋がぶら下がっている。
しばらく歩くとアパートが見えてくる。【上原荘】と書かれた看板を見ながら中に入り、十階建ての内の五階を目指す。
エレベーターは……崩れている。まあ格安アパートだし仕方ない。
階段で五階まで登る。
ちなみに503号室が俺の部屋だ。
さ〜て。夕食何にすっかな〜。等と独り言を呟いていると五階についた。
自分の部屋に近寄った時、事件は起きた。
緑色の髪の……幼女が俺の部屋の前で倒れている。顔はうつ伏せになっているためわからない。
……こんな幻覚が見えるとは……今日頭打った時にやったかもな。
目を擦ってもう一度見てみる。
……緑色の髪の幼女が倒れている。
どうやらこれはリアルの様だ。
おーい。生きてるかー。
……返事が無い。ただ気絶している様だ。
兎に角、俺のポリシー的にも放っておけないので俺の部屋に入れる事にした。言っておくが俺に幼女趣味は無い。
あの後、夕食を済ませた俺はテレビを見ていた。
『続きまして、工場地帯で謎の事件があった模様。鉄骨が散らばり、コンテナが潰れているようです』
へぇー。
ああ、あの幼女は今俺のベットで寝ている。目を覚まさないからな。良かったと思ったのは濡れて無かった事か。濡れていたら脱がさないといけなかったからな……。俺が変態見てぇじゃねぇか。
「……ん」
布団が擦れる音がする。見ると緑幼女が上体を起こしていた。
服装は……ワンピースに白衣っておかしく無いか? 髪は肩辺りまで伸びており、カチューシャでまとめられている。目付きは……特に普通だ。ただ、将来は期待できる容姿だな。
緑幼女はこちらに気付いたらしく顔を向けてこう言ってきた。
「貴方は変態ですか?」
オウ。何て事を言いやがる。
違うわ。
「? じゃあ何で碧子を拾ったの?」
困っている人がいたら助ける。それが俺のポリシーだ。
「ふーん。……甘すぎだよ……そんなんじゃ殺されちゃうよ……こんな風に」
ガチャリ。と碧子って名乗った幼女は俺に銃を向けてきた。
俺が一言発声する間もなく引き金が引かれた。
空気銃だったのか銃弾は発射されなかった。
だが、俺は額に強い圧力を感じた。
そして俺の額はーーーー何事も無かった様に元に戻った。
イタズラか……?
「えっ」
(嘘でしょ。この改造空気銃は人の体位なら撃ち抜ける筈なのに!)
何か碧子の顔がひきつってるけど何かあったのか?
おい、碧子どうした。
「な、何でもないよ……あと碧子って呼ばないで化け物」
ひっでぇ……。
じゃあ何て呼べばいいんだよ?
「……義義理碧子。義が二回に理由の理が一回で義義理。苗字で読んで」
そうか義義理。俺は十橋時雨。好きに呼べ。
「分かったよ化け物さん」
こいつ……!
……ま、いいや。
で? 飯どうする?
「? 要らないよ。化け物さんの事信用できないし」
……こいつ何かあったのか?
見たところ13歳とは思うんだが……精神年齢が明らかに違う。
つーか髪が緑って事は能力者か。
「ああ、能力については聴かないで。心配しないでも碧子単体じゃあ意味無いから」
……頭は良いのか。
まぁ気になる要素が消えたし……勉強するか。
俺は一応高校の勉強を独学でしている。高卒試験の合格が目標だ。
「? 何それ?」
高校の教科書。
「へー。……何これ。簡単じゃん」
……こいつ本当に頭いいな。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.33 )
- 日時: 2017/10/01 09:58
- 名前: 波坂 (ID: KLUYA2TQ)
じゃあベッド使っといてくれ。
俺はそう言ってリビングのソファーに寝転がる。
「ふーん……よく他人と一緒の部屋で寝られるね」
義義理の奴、どこまで人間不信なんだよ。
「考えてみなよ。じゃあ碧子が仮に化け物さんを殺しにきた人だったら? 逆に化け物さんが碧子に襲いかかってきたら? そんなこと無いって証明できる? 出来ないよね。人間なんてみんな心は真っ黒だよ。いつ誰が裏切るかわからないんだよ」
じゃあ言わせて貰おう。
俺はソファーに横になったまま言葉を続ける。
反論その1、まずお前は俺を殺せない。チャンスはいくらでもあったからな。
反論その2、俺が先に寝ればお前は俺を殺せないから解決。
反論その3、そもそもの話証明なんて必要ない。
理解できたか?
「ふん……そんなこと言って心では黒い事を思ってるんでしょ」
……もう寝るわ。
「そういって寝ないんじゃないの?」
俺の意識は睡眠に吸い込まれていった。
今日は特に予定も無いが……昨日厄介なもん拾ってきたからな……。
俺はソファーから起き上がる。義義理はまだ寝ているようだ。
……黙ってりゃいい顔なのにな……。
おおっと。危ない危ない。俺は幼女趣味は無いんだ。
朝は……トーストでいいや。
トースターにパンを二枚セットする。
ジジジ。
さてと……今日はどうすっかな……。
「ああ……そうだった。碧子、化け物さんの所にいたんだった」
おはよう義義理。
「化け物さん。何日間演技続けるかは分かんないけどさ……早めに止めた方がいいよ」
……だぁ〜面倒な奴だな。
チン!
あ、トーストが焼けたみたいだな。
皿にトーストを乗せてジャムとマーガリンを出してと……。
朝くらい食えよ。
「信用できる確証は?」
ああもう!
俺は義義理のパンと自分のパンを交換する。これでいいだろ!
「ま、化け物さんそこまで頭よくなさそうだしいいや。頂きまーす」
もういいや。こいつはこういう奴なんだ。
脳内結論を出した俺は八つ当たりの様にトーストにマーガリンを塗った。
お前替えの服とかあんの?
「無いよ。別に無くても良くない?」
いや衛生的にだよ。
「どうしろって言うの? 別に買ってきても着ないよ。信用できない」
どうすれば信用するんだよ。
「確証を持ってくればね」
俺はある画期的な方法を思い付いた。
俺は財布から諭吉を五枚取り出し、義義理に渡す。
これで服とか買ってこい。あと日用品とかも。
「……ふーん。ま、今は偽善者ぶってなよ。化け物さん」
それをピッと取って外へ出る義義理。そう言えばあいつエレベーター使えないの知ってたっけ?
あの後、しばらくすると義義理が帰ってきた。
買ってきた服は……。
白衣×2、ワンピース×2、ジャージ一式。
うん、意味不明。
何で白衣にワンピースなんだよ……。
と思いつつも俺が勉強していると義義理がこんな事を言ってきた。
「……勉強教えてあげようか? 碧子、化け物さんの数倍は頭良いよ?」
そうか。それは助かる。
「……ちょっとは疑いなよ」
? 疑う意味が無いだろう。
「…ま、いいや。じゃあここだけど」
と、言う訳で家庭教師が出来た。
こんな俺たちの関係は続いた。
風呂入ったか?
「信用できない」
銭湯行け。
洗濯してねーだろ。
「信用できない」
クリーニング行ってこい。
飯食えよ!
「信用が」
交換!
……モグモグ。
そんな関係が数日続いた。
ある日の朝の事だった。
義義理が、朝食を何も言わずに食った。俺は驚愕したが。
「化け物さんの思考に毒薬って思考は無いらしいからね。確証できたよ」
……やっぱりこんな奴か。
その日の昼過ぎだった。
インターホンがなったのでドアを開ける。
そこには見たことの無い、スーツを着た男達がいた。
「我々はとある目的があってここにきた。ここに緑色の髪のガキがいるだろ」
義義理がどうした?
「義義理碧子を我々に引き渡せ。あの能力は貴様の様な無能力が持っていても宝の持ち腐れだ」
おいおい、あいつは物じゃないんだぜ? あいつの能力がどうした?
「知らないのか……教えてやろう。義義理碧子の能力は[力を発展させる能力]だ。義義理碧子は他人の能力を強化できる」
そいつはすげえ能力だな。で? 何で義義理を捕まえる?
「それは保護の為だ。義義理碧子の能力は利用される危険性があるため保護していたのだが脱走されたのでな」
「そいつらの言ってる事は信用できないよ」
俺とスーツの男達が話をしていると、義義理が入ってくる。
どういう意味だ?
「だから、碧子の能力を誰よりも利用してるのはそいつらなんだよ。化け物さん」
まあこいつもこう言ってるし、帰ってくれ。
俺がそういった瞬間、拳銃が俺の方につき出された。
俺は思いっきりドアを閉めて腕をドアにぶつける。
「グァァ!」
ガシャッと地面に拳銃落とした男の腕は完全に折れ曲がっていた。
もう一人の男には、落ちた拳銃を蹴り飛ばしてぶつける。
……勢いでやっちまったけどどうすっかな……。
この二人は路地裏と違って放置する訳にもいかないし……。
仕方なく、俺は知人に電話をかけた。
「もしもし、ちょっと来てほしい」
俺が待っていると、人が階段をかけ上がってくる姿が目に映った。
ようザン。
あだ名ザンこと残切山斬が俺に向かってきた。
「はは〜。時雨先輩派手にやりましたね〜」
ま、正当防衛だ。それでこいつらの処理を頼みたいんだが……。
「良いですよ。あ、でもいつか何か奢って下さいよ」
そしてザンは一言こう言った。
「早く戻って来て下さいよ。桟橋先輩だって待ってますから」
……俺はあの人と会わせるツラが無い。
少し前に会ったが。
そしてザンは二人をパトカーに乗せて運んで行く。
ザンこと残切山斬は、特殊警察であり、時雨の後輩だった。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.34 )
- 日時: 2015/11/28 15:31
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
……はぁ。
「? 化け物さんらしくないね。そんなに活力が無いってさ」
俺にだって色々あったんだ。
「ふーん……それより外について来てよ」
? 俺を信用してないのに? こいつ意味が分からない時があるな。
……まぁ信用し始めたって事でいいか。
外ってどこにだよ。
「外は外。野外の事だよ」
? 何でだ?
「もうどうでもいいからついてきて」
何なんだ? いきなり外に出たいだの?
俺は相変わらずワンピースに白衣という格好の義義理について行った。
「へぇ〜ここが外か〜」
義義理は興味深く街を見る。別に珍しくも無いんだが……。
「外ってこんな感じなんだ〜。逃げる時も服の時も走ってたからゆっくり見れなかったしな〜」
? 走ってた? 何の為に?
「化け物さんさっき見たよね? あのスーツのあいつら。あいつらから碧子は逃げてるんだよ」
逃げる? 能力の保護とかから?
「ここからは喋れ無いよ。信用できないし」
はぁ〜。話してくれたら力になれるかもしれないのにな……。
ま、気が向いたら話してくれよ。
「……そろそろ偽善者止めなよ」
……はぁ。
別に俺は偽善者でもなければ善人でも無い。ただ人が見捨てられないだけなんだ。
何処の誰でも救えるヒーロー何かじゃない。ただ目の前の奴を助けて、自己満足をする。それが俺だ。
別に偽善者でも『善』を気取ってる内はその『善』に甘えとけ。
「……それもそうだね」
義義理はそれから黙っていた。
その日の夕方の頃だった。
義義理が「そろそろ帰ろうよ」と言うので帰る事にしたのだが……。
義義理が、服を急につかんできた。
どうした?
返事は返って来なかった。
不意にそちらを見ると、義義理はいなくなっていた。
義義理!
考えろ。急に服をつかんだ後にアイツは消えた。だからそこまで遠くには行っていない。でも視界には入って来ないから……路地裏か?
一番近くにあった路地裏に入る。
ビンゴ。
そこには……まぁガラの悪そうなチンピラが十人程いた。
その黒い髪の中に一人、緑の髪があった。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.35 )
- 日時: 2015/11/28 21:34
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
碧子、油断していたよ。
まさか……たしかこういうのって『ちんぴら』って言うんだっけ?
兎に角、黒髪の人に腕を捕まれて路地裏に引きずりこまれて……化け物さん服引っ張ったの気がつくかなぁ?
じゃあ大声でも出してーー。
って!。
口が何かに塞がれた。
ベッタリと張り付くこの感じ……ガムテープだね。
でもマズイな……。これじゃあこの人達に何かされちゃうよ。
腕も羽交い締めにされてるけど、目隠しはされて無かった。視界には13人のおんなじような人達がいた。暇な人達……。
全く。皆頭悪そう。心の中きっとぐちゃぐちゃ真っ黒だろうな。
「リーダー! こいつっすよ! あのスーツのやつらが捕まえたら五百万と交換するって言ってたやつっすよ!」
……あいつらこんなのに頼んだの? 馬鹿なの?
……あ、スーツの大人が碧子を追いかけるよりもちんぴらの馬鹿が碧子に絡んだ方が日常的なんだ。
あ〜あ。これで碧子の脱走計画も終わりか〜。
……ま、こいつらも依頼されてるんだしいらない事はしないでしょ。
「で、こいつどうしますか」
「寄越せ」
何かリーダー風の人が碧子を寄せてくるの。
何がしたいの?
でも碧子は質問できない。ろくに喋る事ができないから。
するとリーダーさんは碧子の顔に手を伸ばして、
ベリッ!
ガムテープを急に剥いだの。痛いよ。
まぁ好都合だし大声を出してーー
ベロッ。
そんな音と共に、碧子の頬に冷たい感触がしたんだよ。
…………え?
そのリーダーさんは……碧子の頬を……舐めてたよ。
見間違いかな…あれ?
でも現実は変わらなかった。その人は碧子の頬を……舐めていたよ。
キャアアアア!
碧子にもこんな声出せたのかって、驚いた。そして、嫌悪感にも驚いた。
「キャアアアア!」
その黒髪の集団から義義理の悲鳴が聞こえた。
何してんだてめぇら!
とりあえず近くにいた奴を壁に向かって蹴り飛ばす。
「うぉっ! 誰だ!」
関係無い!
「ぐあっ!」
反応してきた奴を殴り飛ばす。
「おい! 行くぞ!」
「「「「「おお!」」」」」
五人のチンピラが突っ込んでくる。
一人は平手打ち竹トンボの刑(時雨の攻撃速度でビンタをすると相手が竹トンボ見たいに回る)にして、そのまま二人目の顔面に肘うちを打ち込み、そいつの足を持って投げ飛ばす。
投げ飛ばしたチンピラは他のチンピラと衝突。あと一人は背負い投げで地面に叩き付ける。
「動くなよ!」
そっちを向くと、義義理の首にナイフの刃が添えられていた。義義理は何を言いたいのか、んー。んー。とガムテープで塞がれた口で発声しようとしている。
「こいつを傷付けられたく無かったら大人しく殴られな」
クソ野郎が……。
……いいぜ。好きにしろ。ただし……義義理に何かしたらーー全身の骨を粉砕してやるからな。
化け物さんが助けに来てくれた。だけどまだ嫌悪感は晴れないよ。むしろそのままガムテープで塞がれたせいで余計気分が悪くなっちゃったよ。
「動くなよ!」
碧子の首にナイフが添えられる。
こいつら馬鹿なの? 碧子が死んだらこいつら殺されちゃうよ?
「こいつを傷付けられたく無かったら大人しく殴られな」
化け物さん。……もう本性を表しなよ。別に幻滅なんてしないよ。だからとっとと逃げなよ。
だけど、化け物さんの吐いた言葉は碧子の予想と違っていた。
「……いいぜ。好きにしろ。ただし……義義理に何かしたらーー全身の骨を粉砕してやるからな」
碧子、初めて化け物さんの本気の声を聞いた気がした。
……ってちょっと待ってよ。何で逃げないの? 何でやられるって分かってるのに逃げないの? 意味が分からないよ。
「おいおい。今時正義のヒーローかよ」
「どっかのクソチンピラ噛ませ犬よりマシだ」
化け物さんの周りに人が集まる。
「さっきはよくもやったな!」
「オラ!」
「死ねよ!」
ドッ、ドガッ、バシッ、ガッ、ゴッ、ドッ、バシッ、ドッ、ドガッ、ドガッ。
沢山の音が、碧子の耳に伝わってきたよ。
でも……何で化け物さんは逃げないの?
何で抵抗しないの?
何で叫ばないの?
まさか……碧子を助ける為……?
『お前は道具だ』
碧子の耳に、聞き慣れたフレーズが蘇る。
『さっさとやれ!』
『命令に逆らうな! 道具の癖に!』
『お仕置きが必要だな』
『誰も【人間】のお前は必要とはしていない。必要なのはあくまでお前の【能力】であってお前ではない』
……やっぱりそんな訳無い。
碧子は所詮道具。必要とされているのは[力を発展させる能力]であって【義義理碧子】じゃない。
超能力すら無い化け物さんに、碧子を庇う理由なんてない。きっとすぐに、今にでも逃げ出すに決まってる。裏切るに決まってる。本性を見せるに決まってる。
「こいつ堅いな!」
「おいこれとか効くんじゃね!」
ガン!
今までとは少し違う音が碧子の耳に届いたよ。
そのチンピラは……金槌で化け物さんを殴ってた。
「じゃあ俺これ!」
ある人は廃材。
「これもいいだろ!」
ある人はスタンドライト。
チンピラさん達は化け物さんを鈍器で殴り続けていた。
少し、化け物さんの顔が見えた。
流血してた。
何で……。
何で! 何がそこまで彼を繋ぎ止めるの!? 意味が分からないよ!? 彼の心が分からないよ!?
「これでも喰らえ!」
ドガンッ!
化け物さんは……金属バットの打撃を頭に受けて、壁に倒れこんだ。
そのままズルズルと下に落ち、血で太い線が壁にできた。
チンピラの一人が碧子の方を見てこう言ってきたよ。
「じゃあ今度は俺がしよっかなー」
え?
嘘でしょ。
その人は碧子の顔に手を伸ばしてーー。
「待てよ」
碧子は自分で碧子の耳を疑ったよ。
さっき、崩れ落ちたはずの彼が、すぐ近くにいたんだから。
化け物さんの手が、リーダーさんの手を掴む。ボギャリ! と音が鳴って手からナイフが落ちた。
「義義理に何かしたら……全身の骨を粉砕って……言ったよなぁ!」
次の瞬間、二人のチンピラが同時に物凄い轟音を立てて壁に飛んでいった。
その先程まで二人が立っていた場所には、化け物さんが立っていた。
髪が紅い、化け物さんが。
ひっさしぶりにキレたぞおい。
何かゴチャゴチャ言ってるけど聞くのが面倒だ。
とりあえず……こいつら全員病院送りにしても大丈夫だよな。
という訳で更に二人吹っ飛ばす。
何か力が出るな。気のせいか?
殴ってきたから拳を握り潰してそのまま投げ捨てる。蹴ってきたから足を蹴って90度曲げる。
金属バットを振ってきた。どうでもいい。受け止めてバットを握り潰した。ついでにバットを取り上げて投げ付ける。
走ってきたから殴って方向を反転させてチンピラ同士をぶつけて纏めて回し蹴り。
逃げようとしたから後ろから蹴って吹っ飛ばした。
腰を抜かしていたから顔面を蹴った。
そうこうしている内に残り一人になったようだ。
おい。全身の骨を粉砕って……冗談と思うなよ。
何かを言う前に一気に距離を詰めてまず腕を手から肩にかけて16発殴り反対の腕もこれをする。
次に肋骨に12発打ち込み、後ろに回り込んで肩甲骨に7発ずつ打ち込んだ。
まだ止めない。足をやって終わりだ。
両足合わせて29発殴る。これで充分か?
そいつ、と言うかチンピラは全員気絶しているようだ。
義義理は自分でガムテープを剥いだらしくこう言ってくる。
「何で! 何でなの! そんなになるまで……! 何でそんなに碧子を庇ったの!
もう良いから! 幻滅なんてしないから! もう本性を出してよ!」
……いやこれが素なんだよ。
「嘘でしょ! 碧子みたいな……必要とされてない人間を庇うような人なんて……いるわけない!」
義義理。……お前、泣いてるの気付いてるか? 俺の為に泣いてくれたのなら嬉しいが……。
義義理。ふざけるなよ。
「碧子の何処がふざけてるのよ!」
いい加減にしろ! 義義理碧子をそれ以上貶すな! 自己嫌悪も大概にしやがれ!
「化け物さんには……分からないよ! 道具として扱われた碧子の気持ちが! 人間としての存在理由を否定された碧子の何がわかるの! 来るのは能力目的の奴等だけ! もう誰も人間として碧子を見ない!」
俺がいるだろ!
「……えっ?」
碧子は驚いた表情をしている。
俺はお前を道具として見たりしない!
「う、嘘だよ。信用できないよ……確証が無いよ……」
だったら確証をぶつけてやる!
確証その1! 道具に服なんて買わせない! 確証その2! 道具の衛生を気にする訳無いだろ! 確証その3! 道具を……こんなになってまで助けない! 確証その4! 道具を……抱き締めたりしない!
俺はそういって碧子を抱き締める。
「確証は揃った! だから……俺を信じろ義義…いや碧子!」
碧子の表情は分からない。が、首に水が当たった。泣いてるのなら、俺の言葉も少しは届いたか……な。
……やばい…血が出過ぎ…た。
俺は遠くなる意識の中でずっと考えていた。
俺を信じろ、碧子。
平子「私の出番はいずこに?」
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.36 )
- 日時: 2015/11/29 05:48
- 名前: モンブラン博士 (ID: 6HmQD9.i)
波坂さんへ
はじめまして、モンブラン博士です。
少しアドバイスします。
更新率が早く話も面白いのですが、行間がないため読みにくいです。
セリフと字の文の間を離すとファンが増えると思います。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.37 )
- 日時: 2017/10/01 10:42
- 名前: 波坂 (ID: KLUYA2TQ)
モンブラン博士さんはじめまして、そしてアドバイスありがとうございます。
これからも更新頑張りますので応援よろしくお願いします。
続きです。
目を開けると、別に見知らない訳ではない白い天井があった。
確か碧子を助け出して……碧子!
「落ち着きたまえ。十橋時雨くん」
……アンタは医者か。
「私は扇堂始君の治療をした医者さ」
扇堂と名乗ったその医者は丸いイスに腰を下ろして話を始める。
「単刀直入に聞く。君の体はどうなっているんだい?」
一瞬、扇堂医師の言っている事が分からなかった。否、現在進行形で分からなかった。
俺の……体?
「おかしいんだよ。君の体にはバットや金槌などの鈍器で殴られた形跡が十数個では済まされないほどついているのに……酷くても多少ヒビが入る程度で済んでいる。何よりも、何故、紅い髪が黒い髪に変わったんだい?」
間違っているのは、俺なのだろうか。
今の言葉の、最後を理解できなかつた俺は間違っているのだろうか。
俺の髪が…紅い?
「……ま、一時的な事だったね。次にそういう事があったら言ってくれ」
扇堂医師! あいつは……碧子はどうしたんですか! ……痛っ!
俺が上体を起こすと体に痛みの信号が走り回った。
だからどうした。
俺はフラつきながらも、ベットから立ち上がる。
扇堂医師……碧子はどこですか…。
「……無理するな。所々にひびが入っているんだから。……義義理碧子。彼女なら右隣の病室で休憩してるよ。ずっとずっと、君の手を握って何か呟いてたよ」
ありがとうございます…!
外に出て右隣の病室を開ける。
ガラッ。
病室の中は俺の病室と変わらない様な感じだったが、一つ違った事があった。
碧子が横になっていた。が、目は開いているが。
俺に気が付いたのかこちらを向く。
「化け物さんっ!」
急に泣き出したのでベットの近くの円いイスに座る。
「化け物さん……ごめんなさい」
俺は驚いたまた何か毒を吐いてくるのかと(化け物は毒に入らない様だ)思っていたが謝罪してきた。
「碧子、ずっと思ってた。化け物さんもいつか裏切るんだって。いつか本性をみせるんだって」
黙って碧子の言葉を聞く。
「でも化け物さんは……裏切る事もなかったし、本性が素のありえない人間だった」
碧子、元の俺はこんなんじゃなかったさ。
あの人が、俺を正してくれたから今の俺でいられるんだ。
「化け物さんが抱き締めてくれた時も、まだ疑う心はあったよ。だけどね……化け物さんが倒れて、碧子、あの時思った……いや思えたよ。『死んじゃ駄目!」ってね」
俺の言葉も届いたのか?
「うん……化け物さ…時雨の言葉は、届いたよ。だから時雨」
碧子は俺にこう言ってきた。
「碧子を、助けて」
やっと出てきたSOS。
勿論断る理由なんて無かった。
任せろ。
その一言だけだった。
その、短くて、少ない文だったが、そんな言葉が余程嬉しかったのか、碧子は俺の胸に顔を埋めて嗚咽を漏らし始めた。
……こいつだって、まだまだ子供なんだ。
だったら、甘やかしても、いいよな。
そっと、碧子の緑色の髪に手を置いて、撫でる。
信じてくれて、ありがとな。
平子「主人公の座が…」
影雪「出番に不平等を感じる」
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.38 )
- 日時: 2015/11/29 18:44
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
あれから一日が経過し、俺と碧子は【上原荘】に帰宅した。
碧子の話? ああ……話が長かったが、かいつまんで説明する。
碧子の能力は[力を発展させる能力]。碧子が触れ、能力を発動すると、対象者の能力が一時的に発展する。
発展の仕方は多数あるが、[〜をする]が[〜を操る]になったり、[火を操る能力]が[火炎を操る能力]になる、等が代表的だ。
ここまではいい。問題は、この能力の産み出す利益だ。
考えてみろ。仮に一番強い念動系の能力がいたとする。そいつにある日、重いものを運ぶ仕事がきた。
だけど、その重いものは、そいつでも運べなかった。念動系の能力は、複数の人間が同時に同じ場所で発動すると互いに打ち消しあってろくな効果が出ないから、協力プレイは無理で1Pプレイしかできない。
さあどうする?
ここで碧子の能力の出番だ。
結果、発展した能力で重いものを運び、そいつは莫大な報酬をもらった。
最初はみんなそいつの働きを評価するだろう。だが、碧子の存在は無視できない。いや碧子がいたからできたと考え始める。
そして碧子の奪い合いが始まる。
碧子はある日、とある組織に引き取られたそうだ。あのスーツの奴らもその仲間らしい。
そこで碧子が受けたのは保護だと思うか?
否、道具としての徹底的な教育と使用だ。
必要な時に能力を使わされ。命令をきかないなら体罰。それでも駄目なら薬品。
あの碧子の服装。変だと思っていたが、体罰の傷を隠す為のものらしい。
そんな日々が続き、一年が経過した辺りで、碧子は脱走をした。
追いかけ回す奴らから必死に逃げてーーーー辿り着いたのが俺の部屋。
これが、碧子の事情だ。
まあ俺は今、ベットに寝かされてんだけどな。
何でも後二日は無理に動くなって扇堂医師に言われちまった。
ああ、碧子?
今、シャワー浴びてる。
どうやら俺は信用してくれるみたいだ。呼び方も「化け物さん」から「時雨」になったし。
「時雨〜。上がったよ」
声がしたからそっちを向くと、カチューシャを外した碧子がいた。紺色を基調とした線が少し入ったのジャージを着ていた。
初めて見たぞ…その服使ったの。
「いいでしょ? どう?」
……別に誰がシャージを着てもいいだろ。つーかジャージって似合うも何も無いだろ。という訳で適当な返事をする。
……まあ可愛いよ。
素が良いからな。
碧子は嬉しそうにふふっと笑って。
「ありがとっ」
俺は碧子の今まで見たことの無い、無邪気な笑顔を見た。
次の日。俺は朝から無理して朝食を作る。
実は……碧子はもう一つ能力を持っていた事が判明したんだ……[ありとあらゆる食材を不味物質に変換する能力]という能力だ……(ただ料理が下手なだけである)。
結論。昨日食って気が付いたら深夜だった。
俺はもうあんな物は食いたくないためこうして料理をしているのだ。
その後、碧子の能力(笑)が発動される事も無く、時計は1と3を指していた頃。俺と碧子は勉強していた。訂正、教えられていた。
ピーンポーン!
「? 誰だろ?」
ワシはこの通り動けんさかい碧子ば出ていったと。……俺は何をしゃべっている。
しかしいつになっても碧子が戻ってこないため、俺は玄関に向かう。
碧子ー? どうした?
玄関の状況を確認する。
床に膝をついて、目を見開いて座り込んでいる碧子。
そんな碧子を見て歪んだ笑みを浮かべている赤紫色の髪の男。
てめぇ! 何してやがる!
俺はその初対面の男に殴りかかった。
碧子がドアを開けると、そこにはいたよ。
碧子にとっての悪魔が。
「元気にしてたぁ? 僕の碧子♪」
赤紫色の髪を七三分けにした髪型。碧子を見下すような身長。耳の六角形のピアス。そして歪んだ目付き。
碧子が忘れる筈が無い人だった。
碧子、ペタンって地面に座り込んじゃった。口を開いて無意識に悲鳴が出そうだったけど……悲鳴はでてこなかった。
「君の声を支配下に置いただけさ♪」
怖いよ。恐いよ。碧子、この人にずっと……道具として使われてたんだ。
「さ♪ 帰って……お仕置きだよ」
その人、富柄純は碧子に手を伸ばしてくる。
止めて。碧子の目から涙が出てきたよ……。誰か助けて……助けて!
助けて! 時雨!
「てめぇ! 何してやがる!」
碧子の助けに応じた様に、時雨は富柄に殴りかかった。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.39 )
- 日時: 2015/11/30 06:12
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
バギィッ!
その音と共に富柄は玄関から弾き出されて向かい側の壁に激突する。
「……痛いなぁ。酷いよキミ。一体いくつ? ボク25」
痛いと言いつつも余裕の表情を浮かべる富柄。
「18だクソ野郎!」
そして再び時雨の拳が富柄に突き刺さる。
富柄は壁から右側に擦れる様に吹っ飛ぶ。しかし富柄は何事もなかった様に立ち上がる。
「全く……もう少し話そうよ。それに碧子は……ボクの物♪」
「黙れ!」
時雨は今度は富柄の頭を鷲掴みにして窓ガラスにぶつけた。強化ガラスなのだか、そんなことお構い無しにぶつける。
バン! そして、
バリィィィン!
割れた窓ガラスから富柄を放り出す。
「……やったか?」
「時雨! まだ!」
次の瞬間、時雨の体に幾つもの物体が光を反射しながら飛んできた。
時雨はそれに反応し、避けようとするがーーーー。
ドスドスドスドス!
「ぐあっ?!」
逃げた先にも、その物体ーーガラスの破片が飛んで来ていた。
時雨の体が一瞬でガラスのサボテンと化す。
「時雨!」
碧子の絶叫が響く。
「良いよ……やっぱり碧子のその声は最高だよ!」
落ちていった筈の富柄は空中に浮いていた。
「……そうだねぇ……ボクは優しいから……あと一日猶予をあげるよ。
碧子、ボクの所に戻って来るんだ……それなら彼には手を出さないよ」
その言葉を残して富柄は落ちていった。きっと死にはしないだろうが。
「時雨!」
トタトタと時雨に駆け寄る碧子。
時雨は一方、ガラスの破片を抜く作業をしていた。とは言うものの血こそ出ているが、深くは刺さっていないかった。
「時雨」
どうした。
「碧子は……明日の朝出ていく事にしたよ」
…………。
「碧子、やっぱり恐いの。あの人の事が……恐……い…の」
碧子は急に肩を震わせて泣き出す。
碧子! アイツに何かされたのか!?
碧子はビクビクと体を震わせて紡ぐ様に声を出す。
「鞭で打たれたり…薬を飲まされたり……初めてのキスを奪われたり」
それを聞いて、怒った俺は間違ってないだろ?
あの野郎!
「碧子は…時雨が…あの人に殺されちゃうのが恐いの。時雨は強いよ。だけどあの人とは相性が悪すぎ」
クソ野郎の能力?
「[特定の物の支配を操る能力]……水や空気の流動とか、後はガラス、自分も支配下に置ける。……さっき、ガラスが飛んできたのはそのせい。あいつが空中に浮いてたのもそのせい……あいつと深く関わった碧子も支配下に置かれちゃう」
クソっ……俺とは相性が悪すぎじゃねーか! 俺じゃあ倒せ無い!
助っ人を呼ぶしか無いのか……平子は今、病院に入院している……あいつに頼むか。
その日の夜。
俺も碧子もずっと黙っている。昼間にあんなことがあったのだから当然と言えば当然だが。
そんな空気が続いていつの間にか就寝時間。俺は寝る準備を始める。
碧子はきっと、別れが辛くならないように話さないのだろう。だったら俺もそうするまでだ。
カチカチッ
電気を消して寝る。今は俺がベットで碧子が布団(買ってきた)で寝ている。
……もう寝ようかな。
そう思っていた時だった。
俺のベットに何かが入ってくる感じがした。
そしてその何かは俺の頭の隣に頭を置いた。……ちょっと待て!
何してんだ! 碧子!
そう、ベットに入って来たのは碧子だった。
「時雨……気付いてる?」
何がだよ?
「碧子ね……時雨の事、好きだよ。少なくとも、今まで出会ってきた人達よりも、碧子を売り渡した家族よりも」
きっとこの好きはlikeの意味だろう。
「だから……碧子、時雨ともっといたい……だけどそれは無理かも知れないから……最後くらい、碧子を甘やかしてよ」
…そんな顔されて断れるか。
いいぞ。でもな……。
最後にはしない。最後にさせないからな。
「…うん。じゃあお休み」
俺は天使を見ながら眠りに入った。
影雪「オマエ、出番とか平等にできねーの?」
平子「無理」
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.40 )
- 日時: 2015/11/30 07:24
- 名前: モンブラン博士 (ID: 6HmQD9.i)
波坂さんへ
行間が空いたので、とても読みやすくなっています!
ささやかですがオリキャラ応募しておきましたので、リク板で確認していただけるとうれしいです。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.41 )
- 日時: 2015/11/30 15:05
- 名前: 彩都 (ID: zJcpcAby)
影雪と平子の会話が面白いwww
もうじき新キャラ投稿します。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.42 )
- 日時: 2015/11/30 16:08
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
モンブラン博士さん。アドバイスありがとうございました!
やはり皆さんも行間を開けた方が読みやすいんでしょうか?
それとオリキャラ・能力募集に応じてくれた方々、ありがとうございました! どれも本編で登場させたいキャラクターです!
最近調子に乗り始めた(笑)波坂でした。
平子「続きです!」
影雪「まさかこんなのが出番とはな……」
次の日。二人はいつもの様に朝食を摂り、いつもの様に勉強し、いつものように昼食を摂っていた。
変わった事何て特に無い。何でもない日常の日々の一日だった。
だが、それはインターホンにより、崩れた。
『碧子ー。迎えに来てあげたよ♪』
時雨と碧子は顔を見合わせる。
「…じゃあね」
「……ああ」
立ち上がってスタスタと碧子が歩いていく。碧子は今日の服装は、時雨の家に来た時の服装だった。
ーー本当にそれでいいのだろうか?
時雨の頭にそんな疑問が沸き上がる。
(碧子が本気で言ってた事を踏みにじる訳にはいかない。俺は人が本気で言ってる事は無視しない)
ーー本気にそれがハッピーエンドだろうか?
(ハッピーエンドでもビターエンドでも、それが人生じゃないか)
ーーあの人ならどうするんだろうな。
そんな疑問が沸いた頭をテーブルにガン! とぶつける。テーブルに少しヒビが入った。
(うるせえ。あの人は死んだだろ。その話を自分で蒸し返してんじゃねえよ)
と、思いつつ別の回答を思っている自分がいた事に時雨は気がつく。
(あの人なら、絶対助けに行く)
ーーじゃあ、お前は誰を目指してんだよ?
(あの人を目指してるさ……だけど! 俺はあのクソ野郎に勝て無いんだよ!)
本当は勝てる。
時雨は本気でやったら勝てるのだ。
だが、碧子は言っていた。『自分も支配下に置かれている』と。
碧子を人質にとられたら、時雨は絶対に刃向かえない。
ーーあの人は、お前に勝ったか?
(勝ってねぇよ)
ーーあの人はお前に勝てると思ってたのか?
(……思って無かったって言っていた)
ーーじゃあ、先輩は、火英先輩は、諦めたのか?
(火英先輩は諦めなかった。どんな時も、絶対に諦めなかった)
ーーもっかい聴く。
ーーお前は誰を目指してんだ?
(先輩……俺が目指してんのは……桟橋火英先輩だ!)
ーーもっかい聴く。火英先輩は諦めたか?
「そうだよ」
ずっと自問自答を繰り返していた時雨は打ち付けた額をテーブルからあげる。
「火英先輩を目指してんなら」
時雨は立ち上がり、玄関に行く。
「これくらいで、諦めていられない!」
玄関を開き、時雨の目に入ったのは。
重なりあった唇。時折グチュッと音が出る。よく見ると片方が舌を入れている様だ。
碧子を両腕で完全に拘束している推定20代の男、富柄。
そして、拘束されたまま、涙を流している女子、碧子。
時雨の拳は、いつの間にか男に突き刺さっていた。
「クソ野郎が!」
「ムグァ!」
富柄は吹っ飛び、そのまま昨日割れたガラスに突っ込んで行く。
フラッと倒れた碧子を支える。
「…………時雨?」
先程、富柄が落ちていった所から、何がこの階より上に空を飛んで向かっていた。
時雨は、そのまま碧子をおんぶして階段を登る。
「おい! 碧子! たった一つ聴かせろ!」
「……何?」
時雨は首を回してこう言う。
「俺は、お前にとってのヒーローか?」
碧子はこう答える。
「そうだよ」
時雨は階段を登りながら一階ずつ確認する。
しかしどの階もいないので、屋上を目指す。
「だったら」
時雨は屋上に繋がるドアを蹴り飛ばす。
「悪役倒して、ヒロインを守らないとな」
屋上には、顔に腫れができた富柄がいた。
「酷いなぁ……不意討ちなんて」
富柄は自分の頬に触れる。
腫れが小さくなっていき、最終的には消える。きっと体を支配下に置いているから回復を早めたんだろうと時雨は思い、富柄に速攻しようとした時だった。
「っ!? 時雨! 碧子を放して!」
突然碧子が言った事に時雨は対応できずに碧子を放さない。
「何を言っているん……ぐぁっ!」
碧子が時雨の首を絞め始めた。
「時雨! あいつの能力で碧子の肉体が操られてる! 気絶させても意味が無い! だから…碧子を殺して!」
懇願する碧子。だが、時雨はそんな事できない。できる訳がない。
「本当にボクのせいなの〜?」
ふざけた様な富柄の言葉が屋上に響いた。
「それってさぁ……碧子ちゃんがキミの首を自発的に絞めてるだけじゃないの〜?」
「み、碧子がそんな事……」
「できる訳が無いって言えるの〜? 『確証』が無いよ〜?」
富柄の言葉に反論しようとして言葉を詰まらせる碧子。それを見て碧子に追い討ちをかける富柄。
「いやぁ〜! 素晴らしいよねぇ! 信じてた人に裏切り殺されるって! きっと物凄いショックだろうな〜。ボクには当然できないな〜!」
歯ぎしりの音が時雨の上から聞こえる。
碧子も認めた訳ではない。だが、反論もできなければ確証だって無いのだ。
だから碧子にできた事は、悔しがる事だけだった。
「…それは……違う…ぜ…クソ野郎」
だが、それに反論したのは時雨だった。
「え〜? そんな奴の事信じるの〜?」
「反論その1! 絞め方がなってねぇ! 碧子ならもっと丁寧にやる筈だ!
反論その2! 碧子にこんな演技力はねぇ!
反論その3! 殺すんなら空気銃で喉撃ち抜いて終わりだろ!」
その反論は、時雨にはわかる事であり、他には碧子以外わかるものはいない。
「…何? キミ碧子の何なの? ロクに能力も無い癖にさぁ?! ボクの碧子の何を理解したつもりになってんの!」
碧子の絞める力が強くなった事から碧子は操られている事を確証しつつも、時雨は答える。
「俺は碧子のヒーローだ……能力なんて関係無い……少なくとも、お前よりは理解してる…さ」
時雨は途中で片膝をついた。
(くそっ……頭が回らねぇ…。アイツはまだか…?)
そんな事を考えていると、時雨は頬に強い衝撃を感じた。
富柄が、目の前にきて時雨の顔面を蹴ったのだ。
「碧子のヒーロー? …キミなんて死ねばいい。キミみたいな奴がいるから……碧子はボクのもとから…離れていくんだぁ!」
今度は、屋上のフェンスで作られた棒が俺に近づいてくる。訂正、音を出して飛んでくる。
あれも支配下に置かれてんのか? と思いつつもあれに当たれば自分が死ぬ可能性がある事を時雨はわかっていた。
そしてその棒状に畳まれたフェンスは。
ズバァン!
底面から真っ二つに裂け、時雨の両側をすり抜けていった。
「全く」
気がつけば、と言うか時雨がドアを無くしたせいでわからなかったが、誰かが屋上の入り口に立ち、時雨に手をかざしていた。
「駆け付けたら死にかけてるってどういう事ですか。時雨先輩」
少々金属の様な色の黄色。本人曰くクロムイエローの髪を後ろは首の下まで伸ばし、前髪は眉毛が見え隠れする程度まで伸ばした髪型。
そして服装は制服の様な形でも動きやすい特殊警察の青制服。
「だ、誰だ!」
「俺ですか? 俺の名前は」
その時、富柄の前髪が少しズパッ! と音を出して切れる。
「残切山斬です。気軽にザンって呼んで下さい……生きてたらの話ですけど」
言葉とは裏腹に、とても気軽な状況では無かった。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.43 )
- 日時: 2015/11/30 16:14
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
彩都さん感想ありがとうございます!
まあ二人には本編でも頑張ってもらう(はずな)のでww。
新キャラはリク板の方にお願いします。
波坂でした!
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.44 )
- 日時: 2015/11/30 22:18
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
「ふふ、ははははは!」
いきなり、富柄が笑い出す。
「特殊警察……ははは! そんなのクズの集まりじゃん! どうせ特殊警察で厄介なのは噂の問題児部だけじゃん!」
富柄は腹を抱えて笑いだし、右手で何かを引き上げる動作をする。
次の瞬間、富柄の後ろから青の何かーー大量の水が出現した。
「ははは! 今から面白い事を始めるよ!」
時雨は息が詰まっていたのだが、不意に詰まりが無くなる。
そして、後ろで首を絞めていた碧子は富柄の方に引っ張られる様に飛んでいく。
先程まで息をしていなかった時雨は息を急いでする。
富柄の後ろの水が、一辺3m程の正方形となる。そして、そこに碧子は派手な音を出して着水する。
「ハハハ! 君たちは碧子が死ぬ前にボクを殺せるかな? ハハハハハ!」
「っ! このクソ野郎がぁ!」
時雨が跳びかかる。
が、それを富柄は空中に逃走する。
時雨はジャンプして富柄を捕まえようとするがーーそれは選択ミスだった。
横にスライドして富柄は避け、空中で何もできない時雨に踵落としを入れる。
一気に屋上の床に叩きつけられた時雨は倒れ込む。
(クソっ……空を俺は飛べねぇんだ!)
「時雨先輩」
不意に後ろから声をかけられる。
そこにはザンが空中に手をかざしていた。
「今からアイツをうち落とすんで、その隙に時雨先輩はどうにかあの緑髪の少女と逃げて下さい」
「……わかった」
時雨はザンの能力を知っていた。
見たところ富柄は周囲の空気抵抗や風を操って飛んでいるらしいが……ザンの能力ならうち落とせるかも知れない。時雨はそう思い提案に乗る。
時雨が今心配しているのは碧子だ。
もう入水してから3分ほどたっている。急に水にぶちこまれたのだから最初に空気が口に入ってない状態で入水したかも知れない。するとなるとかなり危険な状態だ。
「狙いを定めます……。アイツが攻撃してきたら防御頼みます」
「任せろ」
ザンは固めをつぶり、手をかざしたままずっと凝視する。【空間】という曖昧な対象に狙いをつけるのは難しいのだ。
「ハハハ! ほらほら!」
富柄は白い球体の様な物を時雨たちに向かって飛ばす。
それは空気を圧縮した弾。
しかし、それは時雨の拳によって次々と破壊されていく。
「できました。3…2…1」
「0!」「いくぞ!」
その時、富柄が急に落下してくる。
ザンの能力は、[切断を操る能力]で今のは支配下に置かれた空気達をバラバラに【切断】したのだ。
あまりの急激な出来事に、富柄は全ての集中力を自己防衛にまわす。
そして、碧子を包んでいる水がバシャッ! と弾け、碧子が落下しはじめる。碧子の落下先はーー屋上ではなく地面だ。
落下していく碧子を、何者かが抱える。
それはーー時雨だった。
二人はそのまま落下していく。当然落下速度も上昇していく。
時雨は、背中を地面に向けて歯を食い縛った。
そしてーー。
ドォォン!
二人は派手な音を出して、地面に着地(着弾)した。
「グアッ……まだ…駄目だ」
時雨はフラフラしつつも【上原荘】の一階へと碧子を抱えて向かう。
(あそこには……AEDがあったはずだ…!)
開けている時間すら惜しい時雨は障害となる物を蹴り壊して中に入り、AEDを取る。旧式だった事に舌打ちしつつも準備を始める。
まず碧子を寝かせる。反応の確認は、あの着地の時に目覚めなかった事からわかっている。
邪魔な白衣をはだけ、ワンピースを破く。そのしたにはシャツがあったがそれも破き、白い肌が見える。
場所を間違えない様にして、手を両方の肋骨の真ん中に置き、5cmほど沈む程度に圧迫を開始する。
時雨が今行っているのは、心肺蘇生だ。
(まさかこんな所で、特殊警察に所属していたのが役にたつとはな……)
そして30回程圧迫した所で、一瞬躊躇ったものの、気道を確保して人口呼吸を行う。
そしてAEDを取り付ける。これでOK表示が出れば電気ショックが必要ない事になるが……。
ビーッ!
時雨の期待に反して結果はNOだった。急いで時雨は電気ショックのボタンをおす。
ビクンッ! と碧子の体が跳ね上がる。
そして時雨は再び時雨は心肺蘇生を行う。先にAEDを使用しなかったのは、起動に時間がかかっていたためだ。
「死ぬな……」
時雨は願う様に言い、祈る様に圧迫を続ける。
「お前が死ぬのは早すぎる」
再び碧子の口に口を付けて人口呼吸を行う。
そして再び心肺蘇生を行おうとした時だった。
「かっはぁっ! ゲッホ! ゲッホ!」
その様な声と共に碧子が水を少し吐き出した。
様子を黙って見ていると、肋骨が上下しているのがわかった。
そのまま碧子に白衣を被せ、回復体位(体の側面を床につける感じ)にして放置し、階段を登って行く。
(待ってろ! ザン!)
屋上では、二人の能力者が戦っていた。
「ハハ! キミ面白い事するね!」
「全く。切っても切れない人なんて初めて…だぜっ!」
ザンの能力で富柄の腕を切断する。
富柄の腕は呆気なく切断されるがーー血も出ずに再びくっつく。
「……自分の体を完全に【支配】している様だな」
「ご名答♪ 正解者には死を♪」
空気の圧縮弾が放たれる。
ズパッ! ズパッ! ズズパッ!
だがそれはザンに届く前に全て切断されていた。
「ヒュー。やるねやるね。あの無能力とは大違いだ」
「お前、ひとつ勘違いしてるぜ」
ザンの顔は真剣だが、富柄には何が言いたいのかわからなかった。
「はぁ? 何が?」
「時雨先輩は、俺なんかよりもずっと強いぜ」
ザンは複数の部位を同時に【切断】するが、全く意味はなく、再びくっつく。
「へぇ? あんなのが?」
今度は水を球体にして飛ばしてくる富柄。が、ザンはそれを【切断】と言うよりは【分散】させた。
「どっちにしろ、キミはボクを倒せないよ」
ザンはふっと笑い、こう言う。
「そうだな。お前を倒すのは俺じゃ無くてーー」
何者かが富柄に急接近する。
バギィッ!
反応できない富柄は、殴り飛ばされる。
ガシャン!
まだ残っていたフェンスに激突し、フェンスが大きく凹む。
「時雨先輩だぜ」
時雨は、再び富柄に急接近した。
「くそっ!」
富柄は、空気を圧縮した壁を作り出し、時雨の進行を止めたーーはずだった。
ドガンッ!
だが時雨はそのまま突き破り、フェンスに埋もれた富柄にタックルをかました。
ドゴン! タックルとは思えない音が響く。
富柄は落ちて行くが、再び空を飛んで戻ってくる。
「痛いじゃ、ないか」
「関係無い」
時雨はもう許さないとばかりに富柄を睨み付ける。
「……何で」
そんな時雨を見て富柄は叫ぶ。
「何でボクがそんな目で見られる! お前なんかが何でそんなに好かれる!
こんなの間違いだ! 常識から考えてこんなのはあり得ないんだ!」
時雨はその叫びを聞いて言葉を吐き出す。
「常識から考えて?
……だったら話は簡単だろ?」
時雨は拳を握り、
「常識なんか潰せばいい」
その言葉を境に、時雨から物凄い怒気が解放される。
「さぁて……よくも好き勝手やりやがったな……覚悟しやがれぇぇぇ!」
時雨が怒りと共に叫んだ瞬間、時雨の髪が紅く染まる。
その変化に驚きつつも、攻撃をする富柄。
富柄は空気圧縮弾を十個ほど飛ばす。
だが、時雨はそのうち一つを、握り潰し、そのまま富柄に向かって直進してくる。
「俺と出会ったのを、後悔するんだなぁぁぁ!」
逃げる間もなく、富柄との距離が詰まった時雨は、久しぶりに本気でパンチを繰り出す。
そのパンチは右肩に当たり、ドゴギャッ! と凄まじい音を響かせ、富柄はドリルの様に回転しながら超スピードで吹っ飛んで行った。
時雨は振り切った拳を戻す。本人は気がついていない髪の変色は、徐々に黒くなっていった。
「時雨先輩」
ザンが、またも真剣な表情で言ってくる。
「事後処理はこっちでしますけど……」
いきなりニヤッと笑い。
「今度、焼き肉奢って下さいよ」
「……わかったよ」
やれやれといった表情で、時雨は承諾した。
影雪「時雨ェ……もうコイツ主人公じゃねーか」
平子「くぅ……絶対今、時雨さんが人気1番って訳ですよ」
影雪「さりげ口癖を混ぜるお前もだいぶ切羽詰まってきたな」
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.45 )
- 日時: 2015/12/01 06:55
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
第三章、存在の意味と正義の無能力、エピローグ
時雨は急ぎ足で階段を降りる。
なぜなら一階に碧子を放置したままだったのだ。
一階に辿り着く。
「…碧子」
「…時雨……時雨!」
碧子はカチューシャが取れて無くなっている事も気にかけずに時雨に抱きつく。
「大好きだよ! 碧子、時雨が大好きだよ!」
泣きながら言われてもなぁ…と思いつつも頭を撫でて慰める時雨。
そして、時雨の後にやって来たザンは、この状況を見て一言。
「ロリコンですか」
このあと、ザンに鉄拳が加えられたのは言うまでもない事だった。
これは、ほんの少し前の話。
吹っ飛ばされた富柄は、右肩が弾けるという事もあり、地面にいちじくの様に這いつくばっていた。
周りに人が居なかったのが幸いだったが、このままでは死んでしまう。
ふと、富柄のすぐ近くにパトカーが止まった。
「富柄純だな」
富柄の手に手錠をかけ、
「特殊警察だ。能力故意乱用及び器物破損、窃盗、誘拐その他で逮捕する」
富柄は、いい機会だと空気圧縮弾をその男性警官にぶつける。
何かしらのコートを羽織った、目にかからない程度の長さ灰色の髪、そして緋色の目、そんな容姿の男に、空気圧縮弾かが直撃したーーはずだった。
キィィン!
だが、高い音と同時に、空気圧縮弾が支配下から逃れると共に消滅する。
その事に富柄は驚く。
目の前の拳に気がつかないほど。
バギィッ!
殴られた富柄は気絶し、それを男に担がれパトカーに入れられる。
その男は無線を入れ、
「こちら風間司、富柄純を確保したため帰還する。…ザン約束は守れよ」
『了解です。殺しはしませんって』
パトカーは走り出す。
風間司は、平子や時雨に見劣りしないな【異質】な存在だった。
- Re: 超能力者と絶対に殴り合う能力 ( No.46 )
- 日時: 2015/12/01 19:18
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
あとがき+説明
平子「……今日のゲストはこの二人でーす」
影雪「……風折影雪」
時雨「十橋時雨だ」
平子「最初に一つ言いたい。……この小説の主人公って誰や」
影雪「それにオレの登場章と違ってめちゃくちゃ厚かったじゃねーか! オレの印象が薄くなっていくー!」
時雨「…一つ報告がある」
平子「何だよスーパー野菜人が」
影雪「○○○と○○の混合物が」
時雨「実はな」
平子・影雪「「無視か! 無視なのか!」」
時雨「俺も主人公枠に入った様なんだ」
平子「……え? じゃあ……」
時雨「お前とW主人公だな」
平子「私の出番がぁぁぁ!」
影雪「俺の印象がーーー!」
時雨「あ、ちなみに主人公はまだ増えるかもしれないからな」
影雪「だったらオレにもチャンスが!」
平子・時雨「「ねぇな」」
影雪「ひどっ!」
平子「だってこの小説の題名わかってます? まあ絶対には殴り合ってないけど……」
時雨「平子は高確率で殴り合いになるし、俺は結構拳で片付けるからな」
平子「まぁ、エネルギーがどうだの伝導がどうだのやってる内は主人公なんてできないって訳ですよ」(平子個人の見解です)
時雨「ふははは! お前が主人公になる日は能力を捨てた日か!」(完全な時雨の自己解釈です)
影雪「くっそー……くっそぉーーー!」
平子「あ、逃げた」
時雨「まあ非主人公(笑)も消え失せたところだし説明を開始するか」
平子「えーと。まず時雨さんがチャリに跳ねられて金を貰い、幼女を拾って見事、手なずけてフラグを立て、敵をぶっ飛ばして、ついでにちゃっかり添い寝だのキス(人口呼吸)して、後は何か伏線ばらまいて終わり……こんな感じですか?」
時雨「すげぇ。一つ一つを見ても全体を見ても俺がロリコン変態誘拐魔になるなんて恐ろしい解釈をしやがる。つーか最初の一文とか俺が保険金ぶんどった見たいじゃねぇか」
平子「真面目にします、時雨さんの部屋の前で碧子さん? が倒れていた。ポリシー的に見捨てられない時雨さんは拾う事に。しかし最初は噛み付いてくるけど後々はなついてくる…ここまであってますよね」
時雨「犬を拾ったみたいなノリだが…案外間違ってないのが不思議だ」
平子「そしたらクソ野郎が来て、最初はやられたけど次はいちじくスパーキングの刑にしたと」
時雨「そうだな。ザンは俺の後輩…ま後々話すわ。風間に関してもな」
平子「色々と伏線をぶちまけた章でしたね」
時雨「次回は…これがまだどうしような状況だ」
平子「まあだいたい二択しかありませんけどね」
時雨「次の更新も不明だ。明日の朝かもしれないし、一ヶ月くらいエt…休憩するかもしれない」
平子「まあ次の更新をお楽しみに」