複雑・ファジー小説

付喪神と守護する者 ( No.2 )
日時: 2015/11/12 19:37
名前: 希都 (ID: mNBn7X7Y)

生まれた時から妖とかいうたぐいのものが見えてきた俺は少し、いや大分精神的にやられていた。
親が死んだ理由なんて妖以外のものでもなかったし、毎日遅刻するのも妖が俺にちょっかいをだしてくるからだ。
だから16年生きてきていて良いことなんて片手で数えられるくらいしかない。
あとどれくらい妖を見るたびに怯え、近寄られるのだろう。
正直こんな日常とはおさらばしたいなんて思っていた。

事が起きたのはいつもと同じように明日に備え寝ていた時だった。

『ねぇ、私と取引しない?』

夢の中に出てきた白い長い髪の小さい少女が俺に話しかける。

「取引?」

俺がそうたずねると小さい少女は笑った。

『そう、取引。私にあなたの身体を私にちょうだい?そのかわり、』

「そのかわり?」

『あなたのいらない感情、いらない性質、必要な力、あなたの願いを叶えてあげる。』

「おれの、願い。」

怯える感情、妖が近づいてくる性質、妖を倒す力。
すべて叶えてもらうことができる。
でも、それが叶ってどうなるってんだ。
そう思った俺を見透かしたように少女は口を動かす。

『憎いでしょ?両親を殺した妖が。妖がいるからあなたは不幸なまんまなんだよ?殺したいほどに憎いんでしょう?』

「あんたは誰だ。」

『あなたが嫌う妖とでも言うべきかしら。』

「お前も妖なんじゃないか。」

『勘違いしないで?私はそこらの妖なんかじゃないの。私は妖を殺したい。あなたと一緒なの、湊?』

「信じられねぇな」

『私は巴月。信じてみる価値はあるわ。妖を憎んでるなら。』

妖を憎んでるなら。
憎んでるにきまってるだろう?

『私と取引をしましょう、湊』

もし取引をすることで力が手に入るなら、、、

「……わかった。その話のった。」

のってみる価値はありそうだ。
そういうと少女は笑い俺に近づき胸板を押す。
ポゥッ
少女から光が出る。

『契約のもとに我に身体を授け、そなたの願いを聞き入れたまう。我の名は巴月、そなたの名は湊。』

そうこれがすべての始まりだった。