複雑・ファジー小説

Re: 蒼雨【早くもキャラ募集】 ( No.11 )
日時: 2015/11/28 10:04
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 翌日。同じ時間に再び屋上まで来ると、やはり柊がいた。
 昨日出会ったときにも何となく思ったのだが、単独でいる彼女は何処かしら悲壮感を漂わせているように見える。
 遠くを見るような目で夕日を眺め、痛みを抑えるかのように右手を胸に当てている彼女は何を思っているのか。
 しかしこの時の俺は知る由もなく。
「柊」
「あぁ、立花君」
 呼びかければ、先程までの雰囲気は一気に崩れ去り、またポーカーフェイスへと戻るのだった。
「今日も貯水槽の点検?」
「あぁ。通年で毎日な」
「お疲れだね」
「いや、そんな面倒でもねぇよ? 何ならチェックノートに丸をつけるだけでもいいし、何より屋上が気に入ってる」
「あはは、そっか」
 貯水槽に限った話ではないが、点検せずチェックノートに丸をつけても何も怪しまれないのが現実だ。
 そもそも毎日点検させる意味もないだろう。学校側の考えていることは相変わらず謎である。もし毎日点検が必要なほど古いなら、そんなものは早々に取り替えてもらいたいところだ。
「……」
「……」
 故にチェックノートには、例によって点検せず丸をつけた。
 その後は何となく柊の隣に並び、一緒に夕日を眺め始めたのだが——沈黙が流れるばかりである。
 たまに柊のほうを見るも、先程のような悲壮感を漂わせる様子など全く見られない。
 ここは思い切って聞いてみるか——と思ったところで、俺は思考を振り払った。
 出会って2日目の相手に込み入ってそうな事情を聞くなど、考えてみれば失礼極まりない行動だ。
「どうしたの?」
「?」
 しまった、察されたか——と思っていたら。
「さっきから私のほうを見たり、かと思えばモヤモヤしたり。何、告白でもするつもり?」
 ただの冗談だった。
「いや……ちと気になってることがあるだけだ」
「?」
「何でもねぇよ」
 切欠が出来たからといえど、ここで追求しても後味が悪そうだ。
 ならば聞かずに、そっと頭の片隅に留めておくのが吉というものだろう。
 天邪鬼だのチキン野郎だの、妙なことを言われてはそれまでだが。
「……」
「……」
 再び沈黙が流れる。俺は今度こそ何の素振りも見せないまま、素直に景色を眺めることとする。
 グラウンドで汗を流す運動部。遥か上空を飛ぶ飛行機。街を行く人と車。田舎でも都会でもない町を照らす夕日。
 どれも見慣れた光景だが、どこか新鮮味を感じる。屋上だからか、或いは————