複雑・ファジー小説
- Re: 蒼雨【早くもキャラ募集】 ( No.13 )
- 日時: 2015/11/28 12:06
- 名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)
やがて何日か経過し、学校は冬休みを迎えようとしていた。
終業式まであと4日。周りの生徒達は冬休みやクリスマスの予定だの、追試がどうのこうのと話題に尽きない様子。
そんな中で俺はというと、生憎何の予定も無いために唯一人黙っている。
今日も無事に授業が終わり、さっさと何時ものように屋上へ向かおうとすると。
「おーい、立花ー」
聞き覚えがあり、尚且つあまり聞きたくない奴の声が俺を呼びとめた。
「寺田か」
シンガーソングライターを夢みて、日々ギターの練習に励む俺の腐れ縁——寺田慎太郎だ。
「何だ?」
「冬休みなんだけどさ、お前どうせ予定ないだろ?」
「どうせとか失礼な奴だな。確かに何の予定もないが」
「じゃあさ、合コン行かね?」
「は?」
思わぬ誘いだった。
「合コン?」
「そうそう! 知り合いに誘われて当日来る面子聞いたんだけど、例の歩く芸術品こと柊さんが来るらしいんだ。お前は引き立て役ってことで、俺ちょっと告白してみようかなって思ってたりするわけよ!」
「……」
突っ込みどころが万歳過ぎて何処から突っ込めば良いのか分からなくなってしまったが、とりあえず俺は寺田の脳味噌を心配して、こう言うのだった。
「お前、変なモンでも食ったか?」
「し、失礼な! 俺はキノコが嫌いだって言ってんだろ!」
失礼なのはお前なんだがな——という言葉を寸でのところで飲み込む。
「っつーか、狙ってんの柊だろ? お前に向ける愛想が社交辞令じゃないといいな」
「え……何、そんな強敵?」
「まあ、強敵には違いないだろうな」
まずアイツが合コンに来るという話自体がありえないのだが、そうでなくてもアイツは人気者だ。いくらギターが弾けるという同じ理由で有名な寺田とはいえ、普段ポーカーフェイスであるアイツがコイツに向ける愛想など高が知れている。
ここ数十日の間で得たアイツの情報から、俺はそう看破できる。
「でもさ、お前がいるから大丈夫だろ」
「あ? どういうことだよ?」
「引き立て役!」
「お前そろそろ縛くぞ」
「ごめんなさい」
とはいえ、どうせ暇だ。酒ならお断りだが、合コンがどういうものなのかを知るという理由では、こんなしょうもない切欠でも行ってみる価値があるかもしれない。
とりあえず行くと寺田に伝えた上で、俺は改めて屋上へ向かうこととする。
職員室で鍵をもらい、屋上まで来てチェックノートに丸をつけ、景色を眺めて待つこと数分。
「やっほ」
いつもの如く、やはり来た。
「ねぇ」
「ん?」
「冬休みなんだけどさ、君どうせ暇でしょ?」
「……」
どいつもコイツも失礼な言い方しやがって——俺は聞き覚えのある問われ方に苦笑いしつつ、言葉の続きを待った。
「暇だけど、何か?」
「じゃあさ、一緒に合コン行こうよ」
「……」
まあ、知ってた。寺田と全く同じ誘いが来ることなんて。
「いいよ」
「あ、ホント? ありがと!」
「何でお礼なんだ……」
「実はさ、ちょっと不安だったんだよね」
「?」
少し目を伏せた柊は、いつか見た悲壮感を漂わせる雰囲気を纏った——ように思えた。
「熱烈な誘いに思わずオッケーしちゃったのはいいけど、やっぱり合コンってさ、何も知らない私からすると危なそうなんだよね。だから、誰か信頼できる人がいてくれたらなって思って。そしたらやっぱり、ちょっとだけ安心できると思うの」
——なんとなく、賛同できる。
合コンについて無知なのは俺も同じだ。俺には他に寺田がいるが、きっとアイツも合コンに関しては無知だ。今までアイツが色恋沙汰に身を突っ込むことなど無かったのだから。
故に、きっと俺も柊と同じなのだろう。
それにしても——寺田がコイツに惚れたのか。意外というか何というか、いろんな意味で底の知れないコイツに惚れるアイツの頭が理解できない。否、ミステリアスだからこそ惚れたのかもしれないが。
「君は、私を裏切ったりしない?」
「当たり前だ。俺も合コンとかあまりよく知らないから、お互いにフォローし合えるといいと思う」
「ふふっ、そっか」
——すると柊は、いきなり俺の胸に寄りかかってきた。