複雑・ファジー小説

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.23 )
日時: 2015/11/29 10:41
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

「お、おい?」
 突然のことに俺は戸惑いを隠せず、思わず呆気にとられてしまう。
「——久し振りかも。こうして誰かに身体を預けるなんて」
「……」
「ごめん、しばらくこのままで」
「……あぁ、いいよ」
「ありがと」
 この時の柊は、何故だかとても小さく見えた。
 より深い悲壮感を漂わせては俺の胸に額を当て、まるで甘えるように寄りかかってくる彼女。普段クールで隙が無い分、この恰好はあまりにも大きな油断に見える。
 こういうとき、俺は男としてどうすれば良いのだろうか。
 襲うなどという下劣な考えこそないが、何となく抱きしめたくなる衝動に駆られるのだ。
 結果——
「あ……」
 俺は柊の、小さくて柔らかい身体を両腕で抱きしめていた。
 優しく包み込むように、なるべく怖がらせないように、壊れ物を扱うかの如く慎重に。
「……」
 俺の行動に若干身を引いた柊だったが、またすぐに身体を預けてきた。
「……なんでだろ。なんで甘えちゃうのかな。私、特に何のつもりもないのに」
「——?」

 何のつもりも無い——その言葉は虚飾であり、どこか裏を含んでいた。


    ◇  ◇  ◇


 12月24日——合コン当日。今日は独りぼっちが1箇所に集う、いろんな意味で悲しい日だ。
 でもって時刻は、なんと朝の8時。夜に数時間やるものだと思っていた俺は先日夜更かしをしてしまったため、恐ろしく眠い中で朝っぱらから大慌てである。こんなに早く集合するなら先に教えてほしかったところだ。
「さて……」
 惣菜パンだけ食べて急いで準備をする。合コンとのことで、一応服装にも気を使った。
 普段ファッションに頓着しない俺にとって服装とはどうでもよかったため、こういうときにボロが出るだろうと看破して俺は妹に色々見繕ってもらった。曰く、有り合せの割には良いセンスになったよ、とのこと。
 それはさておき、今は時間が無い。俺は柊を迎えに行った後、寺田と合流する約束になっている。それも今決まったことだ。先ほど寺田から送られてきたメールに「今から来て」とか書いてあったわけで。

 今回は自転車を使わず、公共交通機関と自分の足だけで移動するとのことで自転車は置いてきた。
「おはよ」
「あ、おはよ。7分遅刻ね」
「勘弁してくれ、ついさっきまで9時集合とか知らなかったんだからよぉ」
「あはは……まあ、あと1時間あるのが幸いかな。じゃあ早速、例の寺田君の家へ出発しよっか」
「おう」

 ——寺田の家まで、距離にして約1キロもない。
 なので到着したころには9時の数分前、即ち集合時間に遅れたことにはならなかったのだが。
「遅いぞ2人とも!」
「……」
 寺田の家の前には、既に今日参加するメンバーが全員揃っていた。
 主催者であるクラスメイトの生徒会副会長が、俺らが到着するや否や盛大な罵倒をあびせてきやがる。
 因みに寺田は既に他のメンバーと打ち解けているらしく、男女混ざって楽しそうに会話している。
「集合時間には間に合っただろーが」
「やる気が足りん!」
「これってやる気の問題なんですかねぇ」
 色々冗談を交えつつも、合コンという名の火蓋は切って落とされた——