複雑・ファジー小説

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.38 )
日時: 2015/12/13 18:01
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 ——面倒臭い。何故か。調べ学習の宿題が出されたからだ。
 発端は今日の5限目終了間際のこと。古典の先生が俺達にプリントを渡し、書かれている単語の意味を調べて来いと言ったのである。
 全く、面倒くさいことこの上ない。携帯で調べるにしても、生憎俺のスマホは修理中だ。通信手段として携帯会社から貸与されているガラケーではインターネットが使えないため、調べようにも調べられない。
 よって辞書を使うしかなく、俺は渋々図書館までやってきたのだ。まったく、ホントに面倒臭いったらありゃしない。
「——ん?」
 古典の辞書を探していると、一人の少女が何やら危なっかしい行動を取っているのが見えた。
 高いところにある本を取ろうとしているのか、踏み台に乗って背伸びをして一生懸命にプルプル震えながら手を上に伸ばしているのである。
 俺はそんな少女に見覚えがあった。
 今までも何度かやってきたこの図書館だが、来る度に俺はあの子の姿を目撃している。
 確か"図書館ぼっち"とかいう妙なあだ名の——星波紫乃だ。
 ランドセルを背負わせた途端、紛うことなき小学生に変貌するであろう彼女はかなり身長が低い。
 あれなら俺が取ってやったほうが良いだろう。
「取ってやるよ。どれだ?」
「ふぇ? わぁ!」
「うわっ!」
 すると話しかけた途端、星波はバランスを崩して俺のほうへと倒れこんできた。
 咄嗟に身構えて抱きかかえた俺だったが——衝撃は殆ど無かった。というのも、コイツが軽すぎるのである。
 ちゃんと飯食ってるのだろうか——思わず心配になってしまうくらいに。
「大丈夫か?」
 身体を離し、そのまま立たせる。
「あ、ありがとうございます……」
 星波は何故か少し顔を赤くして、小さくお礼を言ってきた。
「——で、取りたい本どれだ?」
「あ、えっと……あの、色の不思議っていうタイトルの……」
「あれか」
 少し手を伸ばせば届く距離なので、俺は踏み台も使わずそれを取り出して星波に手渡す。
「ほれ」
「ありがとう、ございます……で、では!」
 すると今度は疾風の如く去っていった。
「な、なんだったんだ?」
 ああいうのを、台風一過と言うのかも知れない。
 その後俺は古典の辞書を探し出し、調べ学習に没頭するのだった。