複雑・ファジー小説
- Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.40 )
- 日時: 2015/12/13 18:54
- 名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)
「——よし」
プリントが合計5枚、そして隙間なくギッシリと書かれた単語に作業が長引き、終わる頃には既に日が暮れていた。
どうせやることもないので良いのだが、少し疲れた気がするので早足に変えることにした——そのとき、俺は誰かとぶつかった。
「きゃっ」
「おっと、ごめんなさい。大丈夫で……すか?」
俺が一瞬言葉を詰まらせた理由は、ぶつかった相手が星波だったからである。
「あ、さっきの方……ご、ごめんなさい」
「あぁ、気にするな」
「……」
「……」
向かい合ったまま、何故か沈黙が続く。
お互いに目を逸らしつつ、時たま様子を窺い、目線が合うと咄嗟に他所を向く——これの繰り返しだ。
俺は遂に沈黙に耐え切れず、それを破るのだった。
「どうした?」
「あ、な、なんでもないです。2年生の立花さんですよね?」
「おう、立花哲也だ。そういうお前は星波紫乃だな?」
——って、何で自己紹介の空気になってるんだ。
「ふぇ? えっと、何であたしの事を?」
「言ったら失礼だろうけど、図書館ボッチとかで噂になってるからな。あと童顔で身長が低いことでも」
「——何でそんなに有名人に……」
「不細工じゃなきゃ有名人なんて不回避だわな」
逆に不細工だからこそ有名になることもあるが、星波における噂は大抵、見た目が良いからという原因も少なからず含まれるはずだ。
こう言っては何だが、星波の容姿は普通に可愛らしい。図書館ボッチと言われている理由は、恐らくコミュ力が足りない所為かと思われる。
実際に俺が星波を知っているわけではないので何ともいえないが、俺が経験してきた上ではその通りだろう。
「——その、落とされるつもりは無いんですが……」
だが星波は、そんな遠まわしの褒め方はお気に召さなかった様子。
彼女は少し頬を膨らませ——たように一瞬見えたが、実際はそうでもなかった。どうやら感情を表に出すのが苦手らしい。
「いや、別に口説いたつもりは無いんだが」
「そうですか……それではまた、お会いしましょう」
言って、星波は図書館を後にした。
俺も帰ろうか——と思って何気なく足元を見ると、一枚の紙切れが落ちていることに気付く。
拾い上げてみると、可愛らしい小鳥がプリントされたメモ用紙だった。星波の持ち物だろうか。
「……」
廊下のほうを見るも、星波は既に姿を消している。
明日も恐らくここに来るだろうと踏んで、俺はそのメモ用紙を取っておくことに。
その折に何気なく中を見たのだが——
「カルド文庫出版、教会の鐘——?」
なにやら本の題名が書かれていて、その後俺は何となく本屋に立ち寄っていた。