複雑・ファジー小説

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.42 )
日時: 2015/12/13 19:19
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 立ち寄った本屋で、教会の鐘というタイトルの本を探す。
 会社別で探すと案外早く見つかり、俺はそれを手に取って見てみる。
 すると、とんでもないことが発覚した。

 教会の鐘という本。その作者なのだが——なんと"星波紫乃"と書かれていた。

「は?」
 思わず声を漏らし、俺は粗筋を確認する。
 どうやら上下巻で完結する、とある牧師と女の子のラブストーリーらしい。
「……」
 その時俺は何を思ってか、上下巻を2冊とも買っていた。
 普段恋愛物なんて、というよりも読書さえロクにしない俺なのに、だ。
 何故買ってしまったのか、本屋を出て数分経った頃に少し後悔していたが、身近にいる人が書いた本となれば気にならないのは嘘である。
 俺は家に帰ると、早速それを読み耽る。珍しいことに睡魔にさえ打ち勝ち、結局一巻丸々を翌朝までに読んでしまうのだった。


    ◇  ◇  ◇


 翌日の放課後。徹夜明けでかなりの寝不足の中、俺は再び図書館までやってきた。
 用事は勿論、件のメモ帳を星波に返すためである。
 あまり人がいない中、彼女を探すのはとても簡単なので、入るなり直ぐに見つけることに成功。
 俺は星波の元まで歩み寄り、肩を突く。
「はい?」
「これ、昨日落としてったぞ」
「……っ!」
 差し出したメモ帳を確認するや、星波はそれを奪い取ってから急いでポケットに仕舞うのだった。
「み、見てませんよね?」
「——すまん。表向きに畳まれてたから、思わず」
 嘘をついても仕方ないし、ここは素直になるべき。
「うぅ……」
 しまった——といった風に声を漏らす星波だが、見た感じそこまで焦っていない。
 やはり感情を表に出すのは苦手な様子。
「——教会の鐘、だったか」
「はい……その、私、昔から本が好きで。いつか自分でも書けたら良いなとか思いつつ書いてみたら、なんか出版できちゃいまして」
 出来ちゃいまして——って、そんな出来ちゃった結婚みたいな感じであっさり上手く行くとは思えないんだがな。
「——すげぇよな」
「え?」
「昨日さ、思わず本屋で買ってきたんだ。そしたら見事に徹夜だよ」
 哲也だけにな——というくだらないネタは言わない方がいいだろう。
「俺には真似できないぜ」
 まだ一巻しか読んでいないものの、その引き込まれ方といったら目を見張るものがある。
 普段読書と恋愛に頓着しない俺が、いきなり徹夜する状況にまでなったんだ。ありゃ相当面白い部類に入るのだろう。
 この感想に偽りは無い。
「——あの」
「ん?」
「下巻を読み終えたら教えてください。ついこの間完成した、出版前の作品を読ませてあげますから」
「お、マジで? よっしゃ!」
「でも内緒ですよ」
「あ、あぁ。そりゃ当然」
 ラッキーだ。出版前ということは原文ままの、プロトタイプの作品が読めるということになるのだから。
 こりゃ今日も徹夜するしかない。