複雑・ファジー小説
- Re: ワンホット・アワーズ ( No.20 )
- 日時: 2015/12/14 23:42
- 名前: 楠木ひよ ◆IvIoGk3xD6 (ID: DYDcOtQz)
09 『瑛太へ』
付き合って1年になるので、はじめて手紙を書いてみました。いきなりこんなことされてびっくりするかもしれないけど、どうしても書いておきたかったから。
まず、プレゼントに高いものを買えなくてごめんなさい。瑛太はいつも私に高くてお洒落なものを買ってくれるのに、私はそれにこたえることが出来てない気がするの。プレゼントに値段は関係ない、大切なのは愛情だとか言うけど、愛情を値段で表すときも、ときにはあると思うの。だから、私、次からはもっと素敵なプレゼントを用意するね。
プレゼントと言えば、去年の冬の話覚えてる?
一緒に横浜に買い物に行ったじゃない。最初は観覧車を見に行こうって計画だったけど、瑛太の授業が思ったより早く終わったから、アウトレットとかを見て回ってたのよね。日曜だったし、殺人的に混んでたなぁ。私が瑛太に付いていけなくなってたら、「柚寿って意外と危なっかしいところあるから」って、手を握って歩いてくれたの、嬉しかった。
4階の雑貨屋、前から好きなお店だったから、遊びに来てた時は毎回見に行ってたよね。でも、あそこの小物ってなんだか、可愛すぎるのよね。京奈あたりが持ってると可愛いんだろうけど、私にピンクの水筒とか、ハートの形のお弁当箱とか、なんか似合わない気がして、見に行っても買えなかったなあ。
ふと目に留まった、ピンクのうさぎの、小さいぬいぐるみが気になって、これがかわいいって言ったら「柚寿には似合わないだろ」って笑われたの、あの時はちょっとショックだったな(笑)本当に可愛いぬいぐるみだったから、瑛太に内緒で買いに行こうとまで思ってたもん。でも、私が別の売り場見てる間に、そのうさぎを誰かが買っちゃって、なくなっちゃったんだよね。
そのあとは予定通り観覧車見て、夜ご飯を済ませて、静かな道を、手を繋いで歌いながら帰って。私の家の前まで来たとき、突然瑛太は私にピンクの小包をくれたよね。
何が起きたかわかんなくてただ驚く私に、手を振って瑛太はすぐ帰っちゃったけど、家の中でリボンをほどいたら、可愛くラッピングされたピンクのうさぎが居て。ああ、今でも思い出すとふわふわするなあ。あれは本気で嬉しかったのよ。本当にありがとう。鏡の前にずっと置いて大切にしてるからね。
脱線してごめんね。手紙書くのって初めてだし、どうも慣れないみたい。
付き合って1年かあ、ほんと早いね。中学校の時は全然話もしなかったのに、高校になってから急に仲良くなったよね。で、付き合って、って。
よく、紅音たちは私たちのこと「少女漫画みたい」って言うの。でも、少女漫画よりずっと安定してるよね、私達って。ケンカもしないし、些細な言い合いすらもないし、ずっと円満で来たもんね。これから何かあるのかな? がんばって、ふたりで乗り越えていこうね。あ、そうだ。
進路のことだけど、私は医療系を目指そうと思うの。文系なのに、って思うでしょ。私も厳しいと思う。でも、今から一生懸命頑張れば、私も医療に携わる人間になれるかもしれない。将来の収入は多いほうが良いし、今頑張らなくちゃね。瑛太はまだ決めてないんだっけ? 相談なら、いつでも乗るからね。私はずっと瑛太の味方だもん。なんでも言ってよね。
あんまり長くても読むの大変だろうし、今回はここまでにしとこうかな。何度も言うようだけど、1年ってほんと早いなあ。
これからもずっと一緒に居ようね。大好きだよ。