複雑・ファジー小説

Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.228 )
日時: 2016/03/03 18:58
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

二人はしばらく、車の中で沈黙していた。

「……そう言えば、遊園地のジェットコースター楽しかったよね!!それに、メリーゴーランドや観覧車とか!!」

成木は突如、若城にいつものテンションで話しかける。

「な、成木……」

「今日は楽しかったなー!!すごく、すごく楽しかったよ……!!」

「……俺さ、実は……」

「……楽しかった!楽しかった!……楽しかった!楽しかった……!」

成木は笑いながら泣いていた。

「…………私ね、知っていたんだよ。貴方が嘘をついていた事を」

「……え?」

若城は動揺し、車を止める。

丁度、車が止まった所は二人が初めて出会った橋の上だった。

「私は記憶力は良い方だからね!!……君が車を奪ったり、バットで殴っている所等を倒れながらだけど、見ていたんだ……。君は病気でも何でも無い。何か危ない組織から逃げているんだって!!」

「知っていたのか……。……俺は君を……騙していたんだ。……名前も、経歴も、病気も……。ただ、これだけは言わせてくれ。俺は君の事を本当に愛している。……分かってもらおうだなんて思ってはいない。だって、俺は卑怯者だからな」

若城は静かに泣き始める。

「……言ったじゃん。私は知っているよ!!君が……嘘をついたのは、私の為なんでしょ??こんな私の事を……愛してくれているから……!!」

若城は呟く。

「……でも、どうして俺の嘘を知っていたなら、話さなかったんだ?……それこそ、こんな俺なんかと一緒にいたって……」


「……君とずっと居たかったから……じゃ駄目かな??私が君の嘘を言えば、君との関係が終わってしまう、壊れてしまう気がして……!!!

私は、君がどんな過去を持ち、どんな罪を背負っていようが、貴方は私の夢を叶え、私の事を好きになってくれた。……君は私にとって、一番の人だよ!!!」


彼女は涙を拭いて笑った。

「あ!あれ見て!りんごの木だ!」

橋から見える無数の果樹園の外れに一つのりんごの木があった。

二人はりんごの木に向かう。



「……このまま、二人で、死ぬまで逃げよう!!まず、私が死んだらさ……」

「なあ……。このリュックの中身って何だと思う?」

「……え?」

「金と言う名の罪だ。俺はこれを背負っている限り、君を背負う事は出来ない。君を連れていく権利、資格なんて無い。……君といる事は出来ない」

「何言ってんの!!資格なんて……いらないよ!」

「身勝手だけど、これは俺の気持ちなんだ。このまま、罪と共に生きても、君を幸せに何か出来ない。俺は罪を持って、警察に自首をする。そして、罪を償い、裏切った親友達、嘗て、こんな俺を愛した女性の許しを貰って……君の元へ戻る」

「……そんな!……第一、そんな事していたら、私、死んじゃうよ!!……死ぬまで、君といたいよ……!」

「君は、超能力者か?……何故、自分で寿命を決めるんだよ!」

「……だって、お医者さんが!」

「医者は神か?違う。医者は預言者か?違う。……君は医者に余命を宣告されて、ただひたすら、死ぬ運命を待つのか?」

「……それじゃ、私はどうすれば……!!」

「生きたいと願うんだよ。生きるんだよ!生きて、病気に勝って、もう一度、俺の元へ帰って来てくれよ!死ぬなんて簡単に決めるなよ!今以上の笑顔で迎えてくれよ!……林檎!」

りんごの木が、暖かな風に吹かれて葉っぱが動く。



林檎は迎に話す。

「あ〜あ!もうっ。あんたなんかに出会っちゃったから!……死にたくなくなっちゃったじゃない、馬鹿」








その後、林檎は迎と共に病院に戻った。

迎は、直後に近くの交番に行き、詐欺の事を証拠の金を見せ、自首。

その事がきっかけで、迎の所属していた詐欺グループはすぐに、逮捕された。








「ねえ、本当のあんたの名前って何?」

「目羅 樹(めら いつき)」

「メラ……?何処かの言語で聞いた事があるよ!!」

「……関係無いだろ。それよりも、また逢う日までの待ち合わせ場所は病院で良いよな?」

「このりんごの木が待ち合わせ場所だよ。だって、私は病気に打ち勝って、病院なんて行って無いんだから!!」

「そうだな。……それじゃ、車に乗るか……この車の事も警察に言わないとな……」

「待って!……最後に……。いや、最初かな?」





二人は、また逢う日の場所で、キスをした。









第二十五章 名も無き林檎 完

視点変更

次へ続く