複雑・ファジー小説
- Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.25 )
- 日時: 2016/12/10 17:57
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
私は、再び屋敷に入った。右目が無いので呪われる事も無い。
ヒトミは、私の右目を持って私の所へ来た。
「右目を返して欲しければ、毎日この場所にいてよ……」
残念だが、右目の事はどうでもいい。替えの眼球はある。私は質問した。
「君の身体は腐らないのかい?身体が腐らないと言うのも呪いの影響か?」
ヒトミは、口を開く。
「そうよ……。それで?それじゃ私から質問。ブライアンばっか質問しすぎ。ブライアンは人間の事どう思っているの?」
私はすぐに答える。
「管理対象だ。少なくとも私がこの世界にやって来た理由は人間共の管理だと考えている」
ヒトミは答える。
「私も管理対象に入っているの?」
私は喋る。
「さあな……。呪われているというケースは初めてだからな。それにしても、最初に来て思ったのだが人間が生きていく上で必要な食べ物、水、金が見当たらないが?」
ヒトミは急に思いついた様な表情をして話す。
「あ〜!私、普段地下室で食べているから。それじゃ!ブライアンは寝室で寝てていいよ」
アンドロイドは、寝ない。さて、全範囲映像分析システム起動。
ヒトミは地下室に本当に行っているみたいだ。しかし、食事をせずボロボロの卒業アルバムを見ているな。
そこには、ヒトミと似た少女が写っていた。名前は、笠原 瞳。しかし、卒業した見た目と今の見た目とあまり変わっていない。卒業アルバムは、何年経ったか分からないくらいボロボロなのに。
それから、数十分、ヒトミはその卒業アルバムを見続けた。自分の姿とアルバムの姿を見比べている。それは表情の練習をしている様に見えた。そして、私の元へ来た。
「今日は、シチューを食べたんだ。ブライアンも食べられたら一緒にシチューを食う事が出来たのにね」
私は話す。
「そうだな。笠原 瞳」
ヒトミは驚いた。私は能力、システムの事をヒトミに話した。
「そう言う事だ。私はもう君に隠し事は無い。だから、君も何者なのか、話してくれ」
ヒトミは話す。
「私は、人形。呪いの人形なの。私は一度死んでいる。そして、死んだはずの人間が、人形として蘇った……。でも、生き返るなら、人間が良かったのにな……。でも、人形になって分かる。人間がどれだけ、あの身体の中に欲望が詰まっているのかが分かる。そして、私もその欲望の1つに襲われ死んだ」
ヒトミは続けて話す。
「こんなに辛いのに、涙1つ流せない。アンドロイドのあなたにも分かるでしょ?」
アンドロイドは、涙の機能が付いている。しかし、目のゴミを掃除する為のものであり、感情で流せる訳では無い。
ヒトミは泣きそうな顔になって話す。
「私はどうしたら良いのか分からない。人間として生きたいけど、欲望の塊にはなりたくない。人形のままが良いと言う時もあるけど、辛い時に涙も流せない。まず、人間になれる方法も分からないんだけどね」
ヒトミはこの気持ちを誰にも言う事も出来ず、苦しんでいたのか。しかし、私はアンドロイド。感情さえもプログラム。私は何もヒトミに話せなかった。
ヒトミは話す。
「呪いの人形なんて、気味悪いよね。貴方の右目返すよ。貴方と最後に話せて良かった。さよなら」
私は追い出された。ヒトミの家から……
私は従うしか無かった。私はヒトミに何も言う資格は無い。
私は藍楷の元へ戻った。
私は……どうすれば良い。
「なあ、藍楷。笠原 瞳について、インターネットで調べられるか?」
藍楷は話す。
「あ、はい!それで、H−3の事なんですが、ブライアンさんに伝えたい事があるみたいなんですけど……」
私は答える。
「H−3は後回しだ。笠原 瞳について調べてくれ」
藍楷は焦った様子で、インターネットで調べてくれた。
藍楷は口を開く。
「か、笠原 瞳さんは、随分前に自宅で自殺しています。以前に酷いイジメに遭っていたみたいで……ニュース、新聞にも大きく取り扱われています。
この自宅って幽霊屋敷ですよね?」
私は、藍楷に呪いの事を話そうとした時だった。
藍楷は私に向かって話す。
「幽霊屋敷が、いえ……瞳さんの自宅が、今燃えています。インターネットのニュースで報道されています!」
私は、急にヒトミが言った言葉を整理され、ある一文が抜粋された。
「最後に貴方と話せて良かった」
私は、すぐにヒトミの所へ向かった。
ヒトミの家は燃えていた。
その後、消防車等が消火活動をして火は消えた。
出火原因は放火。何者かが火をつけたのだ。
そして、そのすぐ近くに人形らしき物が燃え尽きていたらしい。
私は、とても悲しい気持ちになった。しかし、涙は出てこなかった。
所詮、私はアンドロイドと言う事だ。
ヒトミには、この世界はどう映っていたんだろうな。
私が映っている世界よりも辛く、とても儚いモノだったのか?
ヒトミの世界の俺は一体どう映っていたんだ?話相手か?救世主か?それともアンドロイド?
私が何者であろうと、もしかしたらヒトミを救えたかもしれない。あの言葉にちゃんと応えるべきだった。
しかし、過ぎてしまった事だ。後悔しても何も始まらない。
だが、彼女の事を忘れてはいけない。
だから……
「ブライアンさん。替えの眼球は?」
「いや、大丈夫だ、藍楷。私は片目で十分だ」
だから、私はヒトミを想う。そして、ヒトミを救えなかった事に後悔して生きる。
俺は……瞳を見る。
第三章 名も無き眼球 終
次へ続く
主人公、視点変更。