複雑・ファジー小説
- Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.481 )
- 日時: 2016/04/25 17:22
- 名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)
「余計な事をするな。自由時間と言っても、行動範囲が限られている。他の国等にはいけない……。常に、位置情報が国に察知されていて、行動範囲外の場所に出ると体の中のセンサーが爆破して死んでしまう」
「ちょ……超能力でどうにかならないのかしら?」
「無理です。俺には超能力が無いんです。……俺には、命しか無いんです」
「それじゃ、行動範囲内できゃ……隠れないといけませんわね……!」
「……ええ。でも、どうして俺にそんな事を?……俺は一度、君を見捨てているんですよ?」
「言ったでしょう?わたくしは、貴方に奇跡を見せたいんですわ。奇跡はこの世に存在しますの。だから、生きるのを諦めないでほしゅ……!ほ、欲しいのですわ!」
「……思うのだが、よく噛むね。滑舌が悪いのかい?」
「そ、そこは良いのです!大丈夫ですわー!オーホッホッホ!」
「……ははっ!」
「初めて、笑いましたわね!」
「そうだな……久しぶりだよ。笑ったのは」
メリクルベルは、千石に奇跡を見せようと、ある所に行く。
ある所は、崖だった。
「……此処は?」
「此処は、自殺名所の崖ですの!」
「そうか……。俺は此処で死ねと?」
「違うって!その近くの鐘を見るのです!」
しかし、鐘は無かった。
「あれ?初めて行った時にはあったはずですの!」
「鐘があろうが無かろうが関係ないだろ?」
「違うのです!
あの鐘は、自殺防止の為の鐘なのですわ!」
「自殺防止?」
「この崖は、生きる事を諦めた者達が、毎日の様に飛び降りていたのですわ。でも、ある日突然、この鐘が此処に降りて来て、自殺志願者が来る度に、美しい音色の鐘を鳴らし、自殺を踏みとどまるのですわ!
そこから、その鐘の名前を奇跡の鐘と呼ぶのですわ!」
「……奇跡の鐘。ありきたりだし、迷信だよ。鐘の音で、自殺を止められる程、人の命は揺るがないんだよ。命を舐めているのか?」
「違うわ!わたくしは……奇跡と言うモノを!」
「奇跡を信じた所で、死は訪れる。奇跡と言うモノが起こっても、行く先は……屍だ。奇跡なんか、待ったって何も起こりはしない。俺は……」
千石は体を震えさせる。
「……希望を持つと、それに、すがりたくなってしまう。だけど、それは淡い幻想。そして、幻想に惑わされ、奇跡を信じてしまう。……現実を見ないと駄目だ」
「……!希望と現実は、反対の意味では、ないのですわ!」