複雑・ファジー小説

Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.514 )
日時: 2016/05/06 20:20
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

「それに、此処の社長を殺すと言う任務を忘れているのでは?」

「.....私は囮。貴方達を止めるだけ。社長を殺すのは、エマとノヴァの仕事よ」

「しかし、君は人間では無いな」

「....?」

「明らかに人間の動きでは無い。ヒールで壁を蹴り、高速で移動するなんてね」

「だから何?」


「……此処にはべっこうアメは無いから……。ポマードポマードポマード」


口裂け女には、対処法があり、その一つが「ポマード」と三回唱える事だった。


しかし、飽く迄も噂だ。





口裂け女は、大きな鋏を取っ手部分を指で回し、呆れたように院道を見る。



「私には効かないわよ」


「そうか……。対処法とはいえ、噂だしね。対処法があれば、君を殺せたんだろうが」

「.....私は亡霊。もう、死んでいるのよ」

口裂け女は、大きな鋏で院道を囲む砂を切る。


「ねぇ私綺麗?」

「その質問は、もう、柴田が答えてくれてますよ」

「......?」



「……院道」

柴田は、葉巻を院道に渡す。



「全く、もっと生きて見たかったですね」

「大丈夫よ。亡霊になれれば、意外と素敵な世界に出会えるから」


院道は葉巻を吸う。


院道は、真っ赤に染まる。


「……君も、素敵な人と出会えるかも知れないよ」


同時に、大きな鋏が、錆び、壊れる。





柴田はビールを飲み干す。



口裂け女は鋏が壊れた事に驚く。


「骨を切っても壊れない鋏がどうして.....」


「俺の能力だ。俺の能力は、一切の能力、武器を使用不可能にする。だから、君は高速で移動も出来ないし、鋏で人を切る事も無い」


「そんな......」






口裂け女は、ある事に気付く。






「そんな能力があるなら、何故、院道を殺す前に私の鋏を壊さなかったの.....?」




「美少女には拳は振るわぬ主義でね、ここから退いていただこう」



「.....!?私が....美少女?これでも?!」


柴田は立ち上がる。



「俺には分かる。口の裂目から溢れだす憎しみを取り除けば、綺麗で可憐な美しい貴方が」


「でも、そんな主義の為に同僚を見殺しにするなんて.....」


「確かに、お前の美しい手を汚すのは耐えきれなかった。申し訳ない」


「.....」


「俺の同僚がどうなろうが、どうでも良い。……お前が人を殺すと言う醜い行為を俺は止めたかった。だが、立場上、俺は史上最強の殺し屋。殺すべき相手をを助ける事等、殺し屋の恥だ。

其処は、親友の院道も分かっていたみたいだが。本当に彼には一生分感謝しないとな。美しい貴方と敵と言う境界を越えて話せるのだから」


「随分、見かけによらず貴方は紳士的なのね」


「美少女限定だ。人を脅かす鋏と人間離れした能力が無ければ、貴方は美しい口裂け……。そう言えば、名前をお聞きしていなかった」


「......敵に名前は言わないわ」


「ならば、これから死にゆく屍ならば、冥土の土産に教えて頂けてくれますか?」


「屍。貴方は死ぬと言う事を軽く見てませんか?」


「軽く見ないと、人等殺せませんよ」


「重いと知りながら、軽いと思い込む.....でも、今の私では、貴方を殺せない」


「自害すれば良いのみ。それだけの覚悟はあるつもりだ」



「.....切子。私の名前は切子。では、自害してもらいましょう」



柴田は窓から身を乗り出し、屋根に上る。



柴田は飛び降りる。





口裂け女は、混乱しパニックになる。


「どうして.....其処まで?」




柴田は地面から呟く。



「俺が出会った中で、切子は一番美しい……。だが、俺が死ぬ事で、彼女の能力が戻ってしまうのが難点だが」




口裂け女は、その場から逃げ出す。



口裂け女の頬は赤らめており、とても美しかった。






柴田は起き上がる。


「しかし、この距離程度では、死ねないな。強すぎるがゆえ、自害も出来ないとは……。……名前は確か、切子さんか、死ぬなら彼女の目の前で死のう。それ位の価値がある……。

彼女は本当に美しい女性だ」







口裂け女は、持っていたべっこうアメで、冷静を装っていた。



すると、死体処理係の雪女が、ニヤニヤしながら話しかける。

「意外におじさん好きかしら、切子ちゃん〜♪」


「.....違うわ。全然違う」