複雑・ファジー小説

Re: 名も無き世界【オリキャラ募集中】 ( No.55 )
日時: 2015/12/18 19:39
名前: 翌檜 (ID: n1ZeCGPc)

突如、観客席から大きな声が闘技場に響く。

「作戦実行せよ。我々の同志であるルルディを人間から解放させよ」


黒獅子は呟く。

「今、大きな声を出した奴は誰だ〜?ん?あれって……アドルフかぁ?」




……時は少し遡る。


「どうも、アドルフです。あの、隣の席良いでしょうか?」

わたしは、話す。

「あ、はい。大丈夫です」



……わたしは、幼い頃から普通だった。勉強も、スポーツも、習い事のピアノも。普通と言う事は良い事かも知れない。だけど、わたしにとって普通は自由の足かせにしかならなかった。親に言われた事を淡々と普通にやる。警察官に就職したのも、親の要望。そしてわたしは、憧れた。

『普通』と違い『異常』という、他のモノによる拘束を受けずに自由意思、即ち自身の持つ自由に従う者達に。

そんな事を考えていると、アドルフが話しかけて来た。

「鈴森さん。この国ってどう思います?」

わたしは、『異常な国』と答えたかった。だけど、そんな事を言えば多分、アドルフさんが怒って何をするか分からない。

わたしは、結局、憧れた異常にはなれず、普通が一番お似合いと言う事。まあ、普通も悪くないしね。
わたしは、アドルフと波風が立たない様に答える。

「あ、はい。色々わたしの国と文化が違う所が多くて、困惑気味です」

アドルフは話す。

「そうですか。それはそうですよね。戦時中なのに、闘技場と言う大切なはずの命の削り合いを、娯楽として楽しんでいる様な命を何とも思っていない根も心も腐った国ですから」

わたしは、思わず口に出す。

「腐った国って……アドルフさん?」

アドルフは続けて話す。

「この国は、貴方達の国と同じ様に、富裕層と貧困層に分かれています。この観客達は、全員富裕層です。では、貧困層は何をしているか分かりますか?答えは簡単。この国の兵士に強制的にされているんですよ。男も、女も、子供も」

わたしは、質問する。

「兵士?兵士って言っても、兵士は全て、人間から軍事用ロボットに変わったんじゃ……」

アドルフは答える。

「軍事ロボット『ラサークル』には、脳が搭載されています。搭載理由は、自分で物事を考え、どう判断するか決め、自分で行動が可能にする為です。この説明は、アルベルト様から聞いてますね?そして、その脳こそ、貧困層の人間の脳なんですよ。だから、私はこの国の兵士にされていると言いました。しかも、強制的に。女子供も容赦なくね」

わたしは、驚く。

何と、軍事用ロボットの脳は、人間の脳で出来ていた。しかも、強制的に!非人道的すぎる!こんなのって、酷いよ……!



わたしは、ある質問をする。

「あの、どうしてそんな事をご存じなんですか?」

アドルフは話す。

「私は、この国のロボットを造っている制作チームの一人だ。そして、ルルディも私が率いる制作チームによって、造られたんだ。まあ、アルベルト様に一度逆らって制作チームから外されて窓際族になっているんだけどね」

わたしは困惑した。頭が混乱している。
とりあえず、質問をする。

「そうですか……あ、あの?どうしてそんな事をわ、わわわわたしに?」

アドルフは話す。

「違う国の人間に興味があってね……。まあ、この国の奴らとは違うが、欲望の塊には変わりは無い。まあ、悪く思うな」

アドルフは、そう言った途端にアドルフの右手がわたしのおでこを触れる。

アドルフが話す。

「私はアンドロイド。この世界を管理するのに相応しい者達の名前だ。貴様ら欲望の為に世界を汚す人間に、この世界を管理する資格等無い」

わたしは、アドルフの右手から放たれる光を受けて倒れる。

そして、アドルフが大きな声を出す。

「作戦実行せよ。我々の同志であるルルディを人間から解放させよ」

アドルフの目線の先には、闘技場のVIPルームにいたアルベルトの姿を捕えていた。